ラストエンペラー

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劇場公開日:

ラストエンペラー

解説・あらすじ

「ラストタンゴ・イン・パリ」「1900年」で知られるイタリアのベルナルド・ベルトルッチ監督が清朝最後の皇帝・溥儀の生涯を映画化し、1988年・第60回アカデミー賞で作品賞をはじめとする9部門に輝いた歴史大作。溥儀の自伝「わが半生」を原作に、激動の近代史に翻弄された彼の人生を壮大なスケールと色彩豊かな映像美で描き出す。

1950年、ハルピン。ソ連での抑留を解かれ母国へ送還された大勢の中国人戦犯の中に、清朝最後の皇帝・溥儀の姿があった。手首を切って自殺を図った彼は、薄れゆく意識の中、波乱に満ちた自身の半生を思い起こしていく。

「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」のジョン・ローンが成長した溥儀を演じ、「アラビアのロレンス」などの名優ピーター・オトゥールが少年時代の溥儀を導く英国人教師役で出演。坂本龍一が甘粕正彦役で出演したほか音楽を手がけ、日本人として初めてアカデミー作曲賞を受賞した。オリジナル全長版は218分。

1987年製作/163分/PG12/イタリア・イギリス・中国合作
原題または英題:The Last Emperor
配給:東北新社
劇場公開日:2024年3月8日

その他の公開日:1988年1月23日(日本初公開)、2023年1月6日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第45回 ゴールデングローブ賞(1988年)

受賞

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀監督賞 ベルナルド・ベルトルッチ
最優秀脚本賞 ベルナルド・ベルトルッチ
最優秀作曲賞 デビッド・バーン

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) ジョン・ローン
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映画レビュー

4.5奇跡的な作品&日本近代史のテキスト(清朝崩壊―満洲国―中共成立―文革)

2025年2月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

1987(日本は1987)年公開のイタリア・中国・イギリス・フランス・アメリカ合作による歴史大作。

劇場公開版は163分。
いわゆるディレクターズカットは219分。

【監督】:ベルナルド・ベルトルッチ
【脚本】:ベルナルド・ベルトルッチ、マーク・ペプロー
【原作】:愛新覚羅溥儀〜『わが半生』
【音楽】:坂本龍一、デイヴィッド・バーン、蘇聡

主な配役

【愛新覚羅溥儀】:ジョン・ローン
【皇后・婉容】:ジョアン・チェン
【レジナルド・ジョンストン】:ピーター・オトゥール
【甘粕正彦】:坂本龍一
【戦犯収容所所長】:英若誠
【西太后】:リサ・ルー
【川島芳子】:マギー・ハン

1.まさに歴史的な作品

1日あたり数万人の観光客が訪れるといわれる「故宮」を、数週間にわたり立入禁止にして撮影された。
つまり、中国政府の全面協力で映画は製作された。

鄧小平による改革開放のひとつの象徴である。
公開の2年後に天安門事件が起きることになる。

そう考えると、本作が製作された時期の奇跡は感慨深い。早くても、遅くても、ダメだったのだろう。

2.溥儀の半生 ≒ 日本近代史

大杉栄暗殺事件(甘粕事件)の主犯で、服役後、満映理事長として満洲国を牛耳った甘粕正彦を、坂本龍一が演じた。
『戦場のメリークリスマス』から4年たっている。
坂本龍一は、生涯、映画に出演したのは3作品しかない。

最後の皇帝・溥儀を演じたジョン・ローンともども、実物とのギャップを強く感じる配役だ。

だが、よほどの歴史マニアでないかぎり、本作を日本近代史のテキストとしても、間違いではない。
日本陸軍が首謀して満洲国をでっちあげ、本作では深く触れないが、アヘン販売で巨額の富を得た。
陸軍内部で利権争いが起きるほどの巨万の富だ。

溥儀は、ただの飾りに過ぎなかったが、
溥儀自身は、皇位返り咲きに大いに満足していたと伝わる。

3.一番印象的なシーン

冒頭、文革の嵐が吹き荒れるシーンが一番印象的だ。
文革(文化大革命)は、いわゆる、官製暴動だ。

よく、中共政府が協力したなと思う。

中共が公式に文革を誤りだと認めるのは、本作公開から4年後のことだ。
(1981年「 建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」)

徒党を組んだ若者たちから、元収容所幹部などがリンチにあうのを溥儀が止めようとする。
こんなシーンの撮影を許すなんて、ちょっと考えられないが、中国政府としても、かなり思い切ったイメチェンにトライしたのだろうか。

4.まとめ

例によって、映画につきものの、
◆省略
◆デフォルメ
◆ある側面からの切り取り
はある。当たり前だろう。

時間の制約のあるなか、よく描き切ったと思う。
いま、製作しようとしても、もっと改竄され、もっと制約を受けるだろう。
奇跡の作品だと思う。

歴史を描くのだから、多少退屈なシーンがあってもやむを得ない。
☆4.5

コメントする 2件)
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Haihai

5.0「溥儀」は歴史の中で「政治体制」に巻き込まれる悲劇の「狂言回し」にしか過ぎない

2025年2月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは見事な作品だ。絢爛豪華とは、まさにこの作品を指す。

 清朝最後の皇帝である愛新覚羅溥儀の伝記映画のカタチを採っているが、実はベルナルド・ベルトルッチの思惑は異なるだろう。

 ベルトルッチが描きたかったのは「政治体制とは何たるか」だとしか思えない。同じく、ベルトルッチの超大作「1900年」においても同様だ。

 「帝国主義」も「共産主義」も更にどのような「政治体制」も本質は変わらない。振り回されるのは市井の民にしか過ぎない、それをベルトルッチは「愛新覚羅溥儀」という狂言回しを用いて描いている。

 しかし、この作品がこれだけ美しく幻惑的で魅力に満ちているのは、ベルトルッチがどれほどまでに溥儀を愛しているか、それに尽きる。

 そのため、坂本龍一の音楽は極限までにエモーショナルで、ヴィットリオ・ストラーロの撮影はこの上もなく美麗で陶酔を促す。

 溥儀を演じるジョン・ローンは「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」に優るとも劣らぬ貴品を漂わせ美しい風貌は男女を問わず魅了する。

 物語は回想形式も織り交ぜながら、ドラマティックに悠然に流れる。

 傑作とは、ときに偶然に生まれる。
 しかし、この作品には坂本龍一を始め、題材においても傑作の誕生を予感させる要素が余りにも存在し過ぎている。

 この作品は、誰がなんと言おうと傑作に他ならない。

「この拙作レビューを畏れ多くも 坂本龍一氏 に捧げる」

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シネマ大好き

3.5つい最近NHKのバタフライエフェクトで溥儀の回を見て、この映画を再...

2025年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

つい最近NHKのバタフライエフェクトで溥儀の回を見て、この映画を再視聴したくなりアマプラで観た。溥儀は保身のために財宝をばら撒いて各国に保護を求めたり、東京裁判では自身の関与を全否定、責任転嫁したりととても食えない男だったが、映画では少し美化しすぎてたかなって感想ですね。一番哀れなのはスターリンに財宝しこたま渡しているのに、全く無視されてあえなく中国に引き渡されたりね。でも映画としてはこれはこれでありかな。でも言語は英語じゃなくて中国語でやって欲しかったね。そこだけで観ていて常に作り物感が頭から離れない。

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冬霧

4.5全長版

2025年1月21日
iPhoneアプリから投稿

アマプラで3時間40分の全長版を鑑賞

圧倒的なスケールと主演のジョンローンをはじめとした役者達、そして衣装の美しさなど映像美で飽きることなく
観ました。

実際には愛新覚羅溥儀はサイコパスだったのでは
とか、皇后や側室にも初めから冷たかったなど映画とは違っていたようで
映画制作ではだいぶ美化されているのだろうと感じたけど
それが映画ならではの楽しみかたなのだろう

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猫柴