マイライフ・アズ・ア・ドッグ

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

人々との出会いや別れに戸惑いながらも成長していく少年の姿を描いた、心温まるヒューマンドラマ。1950年代末のスウェーデン。海辺の小さな町に住む12歳の少年イングラムは、病気の母親の元を離れ、叔父が暮らす田舎の村へ行くことになった。個性的な村人たちに囲まれて過ごす楽しい日々。しかし、そんな彼の上にも現実は重くのしかかる……。スウェーデンの名匠ラッセ・ハルストレム監督の名を、一躍世界に知らしめた傑作。

1985年製作/102分/スウェーデン
原題または英題:Mitt liv som hund
配給:フランス映画社
劇場公開日:1985年12月24日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第45回 ゴールデングローブ賞(1988年)

受賞

最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

4.0子供と動物を巧みに扱うハルストレムの監督術に感服!

2017年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

悲しい

楽しい

ラッセ・ハルストレム作品には、子供と動物という最高のコンビネーションが活き活きと描かれたものが多い。なぜ彼はこれほど純真無垢な表情や仕草を引き出すことができるのか。多くの証言で浮き彫りになる手法の一つに「結果を求めすぎることのない大らかな姿勢」がある。まずは気長にカメラを構えて、被写体が予定とは異なる動きをしても決してせかさず、むしろそのアドリブを楽しみながら、本編で使える場面を抽出していく。演技のうまさや反復性ではなく、ありのままの良さに重きを置くからこそ、あんなにナチュラルな空気が醸成されるのだ。

病気の母親を気遣いながらも、つい無茶をして周囲を困惑させる少年の表情は今見てもたまらなくいい。「どんなに僕が不幸でも、宇宙に消えたライカ犬よりはマシ」というナレーションが繰り返されるたび、少年と壮大な宇宙とがにわかにオーバーラップ。そうやって刻まれるコントラストも忘れがたい魅力と言えよう。

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牛津厚信

4.0「ギルバート・グレイプ」「ショコラ」に繋がる希望の余韻が…

2023年4月30日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ラッセ・ハルストレム監督作品は、
その後、「ギルバート・グレイプ」
「サイダーハウス・ルール」「ショコラ」
を鑑賞させて頂いたが、
この作品は、私にとって、ハルストレム監督
としての最初の映画で、
その後に上記作品群にも接することになる
なんて想像も出来ていなかった。

今回、近所の図書館にDVDがあったので、
現在はTOHOシネマズシャンテと
名前を変えた有楽町のシャンテシネ劇場での
1988年のロードショー以来の
懐かしい2度目の鑑賞となった。

この映画、「ダイ・ハード」や「レインマン」が
上位を占める年に
「ニュー・シネマ・パラダイス」等の
名作を抑えて第5位に選出された作品だ。

それにしても不思議な余韻を残す作品だ。
何も起こらない普通の日常を描く。
もちろん母と愛犬の死こそはあるが、
長い人生では必ず経験する日常の一部に
過ぎない。
その日常の中で、幼きも老いも、
登場人物全員が、
性への興味津々な気持ちを隠すことなく、
人生を謳歌するかのように
過ごしている描写が微笑ましい。

そんな中、主人公の男の子を中心として、
子供達の成長譚が印象的な
人間賛歌の作品となっており、
この後のハルストレム監督作品、
「ギルバート…」や「ショコラ」に繋がる
希望の余韻を楽しんだ。
さて、この後に再鑑賞する予定の
「サイダーハウス・ルール」では
どうだったろうか、楽しみになってきた。

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KENZO一級建築士事務所

5.0生きる環境を自分で選べぬ子どもたち

2022年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

幸せ

萌える

自分の意思を無視されて、一人思わぬ場所に放り出された犬(ライカ犬やシッカン)のような僕の人生。
それでも、ここで生きていくしかない。そんな子どもの物語。

 児相のような機関職員が、この家庭をフォローしていたのは、母の病気だけが理由ではあるまい。
 自分の意思に反して、チックのような奇異な行動が出現してしまうイングマル。
 母がヒステリックに喚き散らし、鬼の形相でイングマルを追いかけまわし、打擲が始まると、幼馴染は、その声が外に漏れぬように窓を閉める。またイングマルが、”どこか”にいかぬように。
 はっきりと不在の理由が示されぬ父。イングマルは「遠くで仕事をしている」とはいうものの…。
 兄はかばってくれるどころか、イングマルにとって一番のいじめっ子。

 ただ、母と笑って過ごしたいだけなのに。その為なら何だってやる気でいるのに、ことごとく裏目に出てしまう…。
 ただ、シッカンと暮らしたいだけなのに。それすらも叶わぬ夢。それもあろうことにか…。
 家族とは、一番のセーフティ基地で、温かくて良いもの。そう望んでいるだけなのに…。
 せめて、焚火の暖かさが…。けれど…。
 結婚を考えるような幼馴染はいるけれど、大人には理解されない。幼馴染も、大人の意向次第…。
 それでも、与えられたこの場で、やるしかない。選択の余地のなかったライカ犬やシッカンのように。
 まぁ、死んではいないから…。
 繰り返されるモノローグ。「〇〇よりはマシ」。

 そんなふうに、それなりに受け入れ、適応しようと努力はしていた場所から、またまたイングマルの意志とは関係なしに、叔父の元へ…。

 個性あふれた大人たちが住む村での日々。
 新しくできた友人たち。
 ちょっとした冒険談のようなものもありつつ、でもさりげないエピソードの積み重ね。

 それなりになじんで楽しかったものの、母は、母は…。
 ここにも、イングマルには選択の余地はない。
 シッカンさえも…。
 別れなければ、シッカンを失うことはなかった?母とも別れなければ、母を失うことはなかった?
 周りの思いやりと、イングマルの想いのすれ違い…。
 胸がかきむしられる。

 それでも…。

一見、起承転結がないような日々の描写。
 そんな人々の変わらない日常が過ぎていく中で、鮮やかな脱皮を見せるイングマルとサガ。

繰り返し挟まれる、ライカ犬のエピソードと、主人公と同じ名の選手のボクシングの試合
        (ライカ犬もボクシングの試合も映画のフィクションではなくて史実)。
 「恥さらし」とまで言われたボクシング選手が、すべてを挽回しようとしている逆転劇の瞬間。
 心地よい風に吹かれながら、二人は午睡…。

少年・少女の表情が繊細で豊か。
 一番目立つのはイングマルとサガだが、緑色の髪の少年、体の大きい少年、イングマルに恋をする少女。最初の街でのイングマルの幼馴染…。みんな自然な表情を見せる。兄の意地悪な、それでいて寂しそうな表情もいい。
 そして、その少年・少女をとりかこむ大人たち。
 村の大人は戸惑いながら、失敗をしながら、自分のこだわりを大切にしつつ、子どもの傍らに寄り添い、一緒に笑う。

初見では、物足りない部分もある。
 『ギルバートブレイク』と比べると、緩急の差が甘く、カタルシスが感じにくい。ボクシングに思い入れのない身には特に…。
 でも、宇宙に思いを馳せる孤独な感覚が、そよ風が額を撫でてくれるような感覚に変わる。
 ファンタジーのような大人たちの元で育つ、リアルな少年少女。

 見返す度に、愛おしくなる。

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とみいじょん

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