編集って映画を変えるのね。
しっとりとした情感を楽しみたいなら3時間完全オリジナル版がお勧め。
映画好きとして、サイレントから最近までの映画を愛でたいなら、
アルフレードとトトの関係を堪能したいのなら、受賞もして人気の高い2時間強の劇場公開版がお勧めです。
3時間完全オリジナル版は、一つ一つのカットが、一つ一つのエピソードが丁寧に紡いでいかれます。
人々の日常生活の記録としても興味深い。
幼いトトの、若いトトの、大成したトトの表情の豊かさ。
見応えあります。
そして、人生の成功・幸せって何なのか、考えさせられます。
好きで好きでたまらない夢中になれるものを見つけたトト。それだけで至福。
ブルーカラー階級としてだけれども誇りをもって働いていた仕事さえ徴兵で奪われたトトと、ホワイトカラー階級に属するエレナ。まだ結婚には親の意向が反映されていた時代。やるせない青春。
それで、都会に出て、本当に好きなものに対して頑張って大成功しました。めでたし、めでたし、ではない物語。
アルフレードの言葉。
母の言葉。
都会での華やかな成功。贅沢な暮らし。皆からの尊敬。
故郷に錦を飾り、ここでも尊敬を込めた温かい目で迎えられはしたものの、幻を見るような。
ぽっかりと空いた心を埋める夢と現実。
そして、有名なラスト…。
一つ一つのエピソードがフーガのように絡み合い、人生を考えさせてくれます。
あの時こうしたら、こうなっていれば…。まるで兵士の物語。
と、じっくり、シチューでも煮詰めるような展開。
へたすると焦がしそうだけれども、コクは増し…。
でも、映画としては、2時間強の劇場公開版にあった勢いがそがれてしまって…。
ラストの意味づけも変わってくる気がする。
3時間完全オリジナル版も見事な映画ですが、
映画の楽しさ、何度も観返したい度となると2時間強劇場版に軍配が上がる。
本当は☆5つでもいいのですが、劇場版の方が上なので、☆4つです。
(劇場公開版のレビューと合わせて、読んでいただけると嬉しいです)