スチームボーイ

劇場公開日:2004年7月17日

解説・あらすじ

1988年の「AKIRA」で世界に日本のアニメーションを知らしめた大友克洋が、製作期間9年、製作費24億円、作画枚数18万枚で描く空想冒険活劇。舞台は19世紀半ば、栄華を誇る大英帝国。発明と機械いじりの好きな13歳の少年レイは、祖父と父が開発した世紀の発明“スチームボール”をめぐる陰謀に巻き込まれていく。実際の19世紀英国の風景や建築物に基づく緻密な美術、錆びた鉄や蒸気のゆらぎなどの“質感”の描写にも要注目。

2004年製作/126分/日本
配給:東宝
劇場公開日:2004年7月17日

スタッフ・声優・キャスト

監督
大友克洋
企画
大友克洋
渡辺繁
製作
川城和実
宗方謙
高須武男
森隆一
近藤邦勝
吉井孝幸
島谷能成
長瀬文男
島本雅司
プロデューサー
小森伸二
富岡秀行
エグゼクティブプロデューサー
渡辺繁
原案
大友克洋
脚本
大友克洋
村井さだゆき
総作画監督
外丸達也
メカ・エフェクト作画監督
橋本敬史
作画監督
入江篤
松田勝己
粟田務
清水保行
江口寿志
美術監督
木村真二
演出
高木真司
CGI監督
安藤裕章
テクニカルディレクター
松見真一
動画検査チーフ
村田充範
色彩設計
中内照美
コンポジットチーフ
佐藤光洋
編集
瀬山武司
音響監督
百瀬慶一
音楽
スティーブ・ジャブロンスキー
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(C)2004 大友克洋・マッシュルーム/STEAMBOY製作委員会

映画レビュー

4.0 スチーム・ボール

2025年12月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

感想

2004年公開時大友克洋先生の本作品の存在は勿論知っていたが、当時の所在地は遠隔地の山中であり地理的理由から映画館に行く事が一度も無い年であった。それから21年。本作の世間での風評や評価、あるいはテレビ放送等にも全く触れる事なく過ごしてきた。今回たまたまVODの作品欄に名前があったので何の前触れもなく鑑賞した。

19世紀の英国産業革命の礎を担った蒸気機関の発明。機関運動の源となる蒸気の圧縮と解放による巨大エネルギーの生成と動力伝達のための機械要素が独創的に創造された世界に於いて、政治経済権力制覇を目論む謎の軍産複合体組織の存在。片や権力制覇を阻もうとうとする自由民主主義者との熾烈を極めた闘争など、明解で古典的な経済主導権争いが主要なテーマとなっており、更に動力伝達のための機械要素に究極の美学を求めている大友イズムの炸裂している映像表現である。

話はどこか懐かしいレトロスペクティブな超空想科学映画の程を成してはいるが、映像技術的にも勿論かなり面倒なプロセス経て創造され描かれている表現はレジプロ気質の自分の感性にどハマりしてとても楽しむことが出来た。面倒くさい程に拘りを持って制作されている大友先生らしい作品である。

ストーリー
世界中を探しても一部の極特殊な場所のみに存在する鉱石から抽出した揮発誘爆性の高い液体に強力な圧力を掛け続けて水の何千倍もの高圧力を発生させる。さらにその圧力に耐えうる容器を多大な犠牲者を出しなからも3つだけ創りあげる。その名もスチームボール。3つが一体となり強力な機械装置動力システムが完成するのだが、第3番目のスチーム・ボールの行方を巡り開発者達が敵味方に別れての大争奪戦が繰り広げられていく。

映画の舞台もアイスランドから当時はロシア領であったアラスカを経て1866年のロンドン万国博覧会会場という現実の場所や歴史的イベントをメインに据えている。登場する機関類や兵器などは現実には存在しないものだが、我々の世代が子供の頃から読み耽っていた戦記物と多くのB級空想科学小説の内容を豊かな創造性とすぐれたデザインワークスによって咀嚼した感のある自由でオリジナリティ溢れる映像と物語が展開される。さらに当時緑がまだ数多く残されていた産業革命勃興期のマンチェスターの住宅地や街の風景が緻密に美しく描かれており、秀逸な美術と機械装置の動きの不思議なコントラストが物語を引き立てる。

観ている方も大興奮でかつてのディズニーの「海底2万哩」1954「地底探検」1959 に始まり「アルゴ探検隊の大冒険」1963 「シンドバッド黄金の航海」1973 、「地底王国」1976に至っては初鑑賞時に大感動した「鉄土竜」の蒸気機関主体のメカニカルデザインが鮮烈に記憶に残っておりこの頃のB級特撮大冒険活劇を彷彿させる出来映えが素晴らしい。

本作のキャラクターについて
全ての登場人物に馴れ合いのない頑固な性格をあてがい、各登場人物はたとえ親子関係であっても自分の主義主張は曲げずに容易ならざる心理と行動をもって展開する姿が描かれる。
これは19世紀頃迄の西欧白人社会の間で至極普通の人間が正しいと考えた民主主義に元づいた基本的人権の尊重、個性の尊重であり、ある意味多様な人格の個性を認めていくという許容の精神の現れである。様々な考え方の中からベストオブベストの思考や政策を模索する行動を作品中に表現している。協調圧力・精神的抑圧が強く、個人の主義主張や考え方、行動を制限してしまう東洋の日本人的な社会思想の感覚では一概に理解できない感覚をあえてデフォルメして描いているのだ。

本作を観て各キャラクターが自分勝手で話が纏まっていないと感じた方は広義な意味で世界、特に英国の中世以降の民主主義思想の成り立ちや近現代、産業革命時代の白人社会構造における、科学発展の歴史の再確認を今一度する事をおすすめする。何も知る事なく単なる限定的で民主主義自体も150年程の歴史しかない狭く画一的な政治思想や人権思想等の世界観を持つ日本人的な発想と感想では括る事の出来ない各分野に於いての深い世界観が本作には描かれている。

⭐️4

コメントする 1件)
共感した! 2件)
Moi

1.0 何もかもが中途半端で、やりたい事や見せたい気持ちの衝動が空回りしている駄作。

2024年6月15日
PCから投稿

「産業革命時代のロンドン」というリアルな世界設定と、「空想冒険活劇」としてのファンタジー要素のバランス配分がどっちつかずで中途半端。

すべてのメカのメイン動力に蒸気機関と言う「縛り」があるせいで、どうしても良い意味での派手なアクションにならず、全体的に"こじんまり"としてしまっている等、とにかく全体的にハジけ切れていないと言うか、ノリ切れていないと言うか、演出にも、メカデザインにも、ワクワクさせられたり、驚かされるモノがほとんど見当たらない。それに加え、画面の"色合いの地味さ"が視覚的なテンションの盛り上がりを阻害する要因にもなっている。

アクションシーンでは、空を飛び回る主人公には弾丸も巨大アームも何ひとつカスリもしないという、古臭く、リアリティの無いご都合主義の連続であり、すべてが何処かで見た事のある凡庸なアクション演出のオンパレード。

科学の脅威の象徴として出てくる「スチームボール」も、単に「蒸気を高圧縮してあるだけの玉っころ」と言うだけでは、そこまで危険物扱いするほどの説得力に欠けるし、「飛行石」のような謎や幻想性も無し。

最大の見せ場であるはずのスチーム城が浮上するシーンに至っては、ただその場に浮かんで地上からの集中砲火の的になっているだけで、ラピュタ城のような「禁断の力」を解放する時のような"凄み"や"迫力"を何も感じない。

主人公のレイにも魅力が無く、その行動原理にもパズーのような明確な目的意識が無く、戦争や科学の何が悪くて何が良いのかを考えることもないまま、ただなし崩し的に騒動に巻き込まれているだけ。

ヒロインであるスカーレットの存在理由も薄く、居てもいなくてもストーリー展開にほとんど何も関係していない、ただの傍観者でしかない存在。高慢ちきな「お嬢様」というキャラも狙いすぎて、ただイライラさせられるだけで、個性付けを失敗している。

鈴木杏を始めとする声優陣にも違和感があるし、プロを使わない必然性が分からない。決してヘタではないが、メインキャラを任せられるほど上手くもない(特にじいさんのセリフ棒読みがヒドい)。

アニメーションの映像レベルは高いものの、不遜な事を言わせてもらえば、日本の漫画・アニメ界の頂点のひとりである大友監督が何年もかけて製作する以上、デッサンが優れているだの、描画が細かいだのは越えて当然のハードルのはず。

映画制作において監督自身が「オレはこれを描きたいのだ」という、表現の衝動がただ空回りしているだけで、エンタメとして不完全で中途半端な作品としか言い様が無い駄作。

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Fate number.9

3.0 スッキリしないのはなぜだろう。

2024年5月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波
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Bluetom2020

3.5 タイトルなし(ネタバレ)

2024年3月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

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いのしし