息子の部屋
劇場公開日:2002年1月19日
解説
01年カンヌ映画祭パルムドール受賞作。イタリアの小さな港町で暮らす、精神科医の夫と画商の妻、高校生の娘と息子の4人家族は、平穏な日々を送っていた。が、突然の息子の事故死により、その生活はこれまでと同じではなくなっていく。モレッティ監督自身が父親役、妻役は、80年代のモレッティ作品に出演していたラウラ・モランテ。音楽は「ライフ・イズ・ビューティフル」のニコラ・ピオバーニが担当。
2001年製作/99分/イタリア
原題:La stanza del figlio
配給:ワーナー・ブラザース映画
スタッフ・キャスト
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この映画の感想をわかりやすい言葉であらわそうとしたが、思いつかない。
例えるとうまく伝えられそうだ。
人は生きていく中で何度もパズルを壊されてしまうが、大きく壊されてしまった時の話だ。
大量にあるピースからひとつひとつピースを探し、確かめ、間違っていれば戻す。
それを繰り返して、元のパズルに戻そうとしている。
時間がかかるほど、元のパズルの絵は曖昧になって、正しいピースがないと絶望する。
この作品は、やっと元のパズルの絵が見えてきたところでエンドロールとなった。
たぶん、完成はしない。
壊されてしまった時に、何個かピースをなくしてしまったからだ。
2022年3月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ー 序盤の、精神科医ジョバンニ(ナンニ・モレッティ:監督&脚本も担当)が、様々な患者と交わす会話のシーンが良く分からなかったが、途中で”これは、この後彼が精神科医に掛かる程の哀しみを経験する事を、暗喩しているのでは・・”と思いながら、観賞。-
◆感想 <Caution! 内容に触れています。>
・物語は、哀しいがシンプルである。
・精神科医ジョバンニと妻、パオラ、娘イレーネ、息子アンドレアは穏やかな生活を送っている。
ー アンドレアが学校のアンモナイトの化石を盗んで、一週間の停学になったりするが、皆、彼の無実を信じている。
だが、アンドレアは数日後、”先生の困った顔が見たかった”と盗んだ事を認める。-
・精神科医ジョバンニの診察は続く。自殺願望のある男。生きる意味を失っている男・・。
そして、日曜日に自殺願望のある男から”直ぐに家に来て欲しい”と電話が入り、ジョバンニは車で出かける。
そして、彼のいない時に、悲劇は起きる。アンドレアがダイビング中に洞くつで酸欠死したのだ。
- 自分を激しく攻めるジョバンニ。妻、パオラ、娘イレーネも悲しみの底に叩き落とされる。-
・家族関係がギクシャクし始めた頃、アンドレア宛の、アリアンナという女の子からの手紙を見つけ、家族でその女の子に一度は断られながらも会いに行くジョバンニと妻、パオラ、娘イレーネ・・。
<後半や、ラストシーンで流れる、”ブライアン・イーノ”の名曲”By This River"の優しき音色が、優しきアリアンナや彼女の新たなボーイフレンドの姿と重なり、ジョバンニ一家は徐々に癒され、再生していく姿を彩っている。
それまで、他人の悩みを聞き癒して来た男が、息子を失った事により激しく落胆し、自らを責める中で、亡き息子の一時だけのガールフレンドたちに癒されていく姿。
”良い子たちだな・・””そうね・・”
派手さは無いが、静かに心に沁みてくる作品であると思う。>
2021年1月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
何だかかなり後ろ向きの父親ジョバンニ。精神科医であることも災いしてか、生活を元へ戻せそうにないジョバンニなのだ。むしろ患者の方が息子の死という悲しみから逃れる術を知っているようにもとれる。
立ち直るキッカケは難しい。それを敢えて映像化することに意味が見出せない。家族は全て暗いんだけど、音楽が案外爽やか系であり、患者がかなり面白い人たちだった。序盤からのエピソード、アンモナイトの化石を盗んだ事を母だけに告白するシーンがあったのだが、結局この伏線を生かしきれてないし、息子の友達の描写もおざなりになっている。母と娘の泣くシーンだけは迫真の演技だったのだが、モレッティ自身の演技がだめだ。
ラストに出てくる、アンドレアの最後の彼女(キャンプで云々・・・)がヒッチハイクでジョバンニ一家に訪れるが、帰り際にそのアリアンナの目線で家族が砂浜で戯れている。これがどういう意味になるのか、賛否両論であろう。似たようなシチュエーションならば『普通の人々』のほうがが断然にいいと思います。
暗いというわけではないけれど、重い内容の映画だ。二度観た。次回は…、観る時を選ぶ内容の映画なので、今こそ観たいという気持ちになる時までしまっておこうかと思う。
わたしたちは、人生で理不尽な不幸な目に遭ってしまったとき、そのやり場のない気持ちをどこに持っていけばいいだろうか? 前向きに考えられない自分の気持ちを、どう整理したらいいだろうか? 理屈も分析も救ってくれない。
この映画は、それを解決してくれるわけではないけれど、そっと寄り添ってくれる。肌の温もりを感じさせてくれる。イタリア映画ならではという感じもする。
このような映画があるだけで、誰かの気持ちが少しだけ救われることがあるのかもしれない。
出会えてよかったお気に入りの映画のひとつ。
音楽も美しく暖かみがある。