ザ・プレイヤー
劇場公開日:1993年1月15日
解説
映画会社の重役グリフィンは脅迫状まがいの葉書を送りつけてきた脚本家デビッドを勢いあまって殺してしまう。その後、グリフィンは殺人の事実を伏せたまま、デビッドの恋人ジューンと親しくなっていく。一方、警察の捜査も進んでいたが……。ハリウッドから離れて映画製作を行なっていたロバート・アルトマン監督が見事復活を果たしたブラック・コメディ。ハリウッド業界を皮肉った作品ながら、ハリウッドの人気映画人たちが大挙してカメオ出演している。
1992年製作/124分/G/アメリカ
原題:The Player
配給:大映
スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
受賞歴
受賞
最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル) | |
最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) | ティム・ロビンス |
詳細情報を表示

- ×

※無料トライアル登録で、映画チケットを1枚発行できる1,500ポイントをプレゼント。
2023年3月15日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
アルトマン印。カメオ出演の面々はもちろん、このメタ感が80年代後半〜90年代という感じで、今見てもおしゃれな映画なのに懐かしさもある。
やたらに人がドンドン出てきて、いつも何だかさっぱりわからないアルトマン選手、初めてまともでした。群像的ではありますが、中心になるストーリーが真ん中を貫いているからでしょう。
ハリウッドの裏側というより、次から次へと古典名作や新旧スターの名前とカメオ出演が続きますが、マニアックではなく有名ドコロが中心なので一般受けもします。
それでも、観た後調べたら「どこに出てたの?」みたいな人も大勢いましたね。
場面展開とテンポが非常によいです。終わり方もあれ?とは感じるもののスマートでした。
2022年10月14日
iPhoneアプリから投稿
カチンコが切られたかと思えば即座に室内からグワーっと遠ざかるカメラ。画面端から現れた車を横移動で追いかける。あ、これどっかで見たことあるな。そうか!オーソン・ウェルズの『黒い罠』だな!と心の中で小さくガッツポーズした次の瞬間、その場を横切った映画関係者の男が「『黒い罠』の長回しはいいよ」などと得意げに語り始める。
あるいは長回しの最中に意図的に画面の一部分をズームアップし、周囲の情報を遮断する手法。これはヒッチコックの『ロープ』だ。『ロープ』の頃は長回ししようとしてもフィルムの長さに上限があったから、ズームアップしている間に次のフィルムに入れ替えるというやり方で擬似的なワンシーンワンショット映画を作り上げた。しかしまたもやここで先ほどの男が現れ「『ロープ』は脚本は微妙だけど撮り方はいいね」などとのたまう。
シネフィル的欲望をことごとく粉砕するこの意地の悪さ。ロバート・アルトマンの映画が始まったんだな…という緊張感をもたらしてくれる。
本作ではハリウッド商業主義とイズムなき製作態度が彼らしい舌鋒で揶揄されている。
映画製作会社重役のミルは最低限の映画史観こそ備えているものの、そのせいでかえって己の浅薄さを露呈させてしまっている。彼がハリウッドセレブが一堂に会する式典で「次なるJ・ヒューストンやO・ウェルズやF・キャプラを輩出し〜」などという誰でも言えるようなスピーチを行うシーンは傑作だ。それに対して会場全体から拍手が沸き起こるのも軽率きわまりない。
そんな彼だが、ある日誤って一人の脚本家を殺してしまう。彼は来たるべき罰を恐れるものの、審判の日はなかなか訪れない。彼に嫌疑をかけ続けていたのはロス警察が無能だと嘲る隣町の警察たちだけだった。
一方ミルは20世紀フォックスから天下りしてきた新重役のリーヴィが気に食わず、彼に「無辜の女が策謀によって死刑に処される」というネオ・レアリズモ的映画の企画(しかも俳優は全員無名)をぶん投げる。こんな映画がハリウッドで成功するわけねえ!途中で頓挫して痛い目見やがれ!というほとんど小学生じみた悪意を新人に容赦なくぶつけるミルの愚かさに閉口する。
警官たちはミルをどうにか逮捕しようと躍起になるが、最後の切り札であった事件の目撃者はミル以外の人物を犯人だと断定した。これによりミルは晴れて自由の身となった。
月日は流れ、リーヴィは押し付けられたネオ・レアリズモ的脚本をハリウッド的ご都合主義でメチャクチャにしたゴミに作り変え「オスカー間違いなし!」と騒ぎまくる。はじめこそリアリズムが大事だと主張していた当の脚本家さえもがこの金のかかったゴミに手放しの賞賛を惜しんでやまなかった。
ミルはいつしか映画製作会社のトップに上り詰め、自分が殺した脚本家の元恋人と幸せな家庭を築いていた。美しい花と植物に囲まれた大きな白い家に高級車で帰宅したミルは、膨らんできた彼女の腹を優しくさすりながら家の中に入っていくのだった。〜THE END〜
ハリウッドなるものの圧倒的勝利を描き出すことで逆説的にハリウッドの空虚さを浮き彫りにした挑発的な作品だった。しかもこの映画全体を通してみたとき、「ミルが自分が犯した殺人の罪を償う」というハリウッド的カタルシスは何ら達成されておらず、きちんと作品そのものが反ハリウッド映画として成立している。
思えば序盤の『自転車泥棒』リバイバル上映のシーンは全てにおいて示唆的だった。貧乏な親子の辿る悲しい結末を沈痛な面持ちで最後まで見つめる脚本家と、終盤も終盤になってからヒョロッと現れ「いい映画だった」などと言ってしまえるミル。ここには映画というものに対するリスペクトの有無がはっきり現れている。そして脚本家は死に、ミルは会社のトップに上り詰めた。さて、ハリウッドの明日はどっちだ?
2022年9月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
陽に最悪な男が2時間かけて陰に最悪な男に変わっていく様が見事に描かれる。
そしてアイロニーとブラックユーモアが通底にびっしりと敷き詰められていてそれもまた壮観。
映画とは、芸術とは、言葉とは、信頼とは、そんなものはない!と苦笑いするしかない痛快作。
殺された男が言った、あの女は最悪な女だ、が余韻で楽しませる。
果たしてこれはハッピーエンドなのか。
最高。