親友だった二人。何が二人を分けたのか。
同じ女性を愛したから?それでも親友のままでいられることもある。親友とまではいかなくとも、ここまで人生に送り方が変わってしまうなんて。
二人の間に何があったのか。
同じ部署で同じ目標を持てていた時には、やり方は違っていても相互補完。認めあえていた。でも、部署が違い、付き合う仲間が違い、役目・負う責任が違ってきて、さらに張り合わされるうちに、雪崩の如く、放出された水のごとく、一つ一つのことが絡み合い連鎖して、止められない。
そんな風に見えた。
しかも、この監督はエディという同年代(ちょっと先輩)を配し、そこでもやじろべいのような三角関係を描き出す。部下たちを巻き込んで。
二人の間に、”今”起こっていることは描き出されるが、過去に何があったのかは、映画の中で詳しくは語られない。鑑賞しているこちらが推測していくだけ。
やることなすことが裏目に出て、追いつめられていくレオ。
そうやってレオを追い落としているように見えるドニだって、初めからレオをはめようとしたわけではない。ドニの時々の表情・慌てっぷりを見ていると、自分のやってしまったミスを狡猾にフォローしようとして、結果的にレオを追いつめてしまうようにも見える。
レオの復讐劇にも見えるが、ドニの人生の哀れさがテーマにも見える。
二人の名優の妙。特に演技合戦をしているわけではない。だが、この二人の比重がほんの少しでも狂えば、映画は、また違った雰囲気をまとってくる。
なんてすごいんだ。
正直加齢臭すら漂ってきそうな二人の佇まい。喉元まで生活に・警察にどっぷりつかっている匂いが漂ってきそうな映像。そこがまた絵空事ではない人間臭さを感じさせ、渋い。(ファッション性なんてなんのそのだ)
内部抗争がらみの警察物。
信頼と裏切り、迎合、事なかれ主義、身の保身…。組織や関係性でうごめくいろいろなものが、幾つかの凶悪犯罪と絡み合って描き出される。
監督の警察時代の教官に捧げられている。実際にあった話をbaseとするらしいけど…どこまでが実話なのか。かえって教官を貶めることにはならないのか?と余計な心配をしてしまうほどに、これでもかと問題場面が描き出される。(検死したら嘘はばれるはずだが、等)
最初はバイオレンスの様が激しく、音楽も時に緊迫感を煽り、時に静かに凄惨な場面を見せつけと、その激しい様に途中で見るのを断念しそうになる。
けれど、途中からは人間を描くことにシフト。その心情と行動で魅せてくれる。
説明は足りない。エピソードとエピソードのつなぎもうまくはない。
でも、人間を描くことには丁寧で、甘すぎず、感傷的すぎず、日本の感覚からいったらドライだけど、胸が締め付けられる。
最後の落とし前の付け方は、ティティは別として、こういう犯罪ものを愛する方々には不評かもしれないが、私には最高だった。
因果応報。風が吹けば桶屋が儲かる。人生は自分の想うようには進まない。
一寸先は闇。人に放った矢は自分に帰ってくる。
そんな中での二人の男の生きざま。堪能させていただいた。
濃厚すぎる映画。ワイン倉庫の隅に長年放置され熟成されたブランデーを少しずつ味わうが如く。
邦題が秀逸。 後から、ゾクゾク来る。