紅夢

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劇場公開日:

解説・あらすじ

文化大革命後の1980年代に北京電影学院を卒業した「第五世代」と呼ばれる中国の映画監督たちを代表する存在となったチャン・イーモウが、「紅いコーリャン」「菊豆」などでもタッグを組んできたコン・リーを主演に迎え、大富豪の主人の寵愛を巡って繰り広げられる女たちの愛憎を描いた作品。

1920年代の中国。父親が亡くなったことで家が没落した頌蓮(スンリェン)は、貧しい生活を愚痴る義母から逃げるため、地元の富豪の第4夫人として嫁ぐことに。第1夫人から第3夫人までそれぞれに住居が与えられ、第4夫人となった頌蓮の住まいにも、主人の寵愛を受ける印である赤い提灯が飾り付けられていた。初夜の夜、第3夫人に邪魔をされた頌蓮だったが、あらためて3人の夫人たちに会うと、彼女たちは主人の寵愛を受けるために生きているかのように見えた。そんな愛憎が渦巻く夫人たちとの関わりのなかで、ある事件が起こる。

製作総指揮に「悲情城市」のホウ・シャオシェン。音楽を「マルサの女」や「悲情城市」なども手がけた立川直樹が担当。第48回ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。第64回アカデミー外国語映画賞ノミネート。2024年12月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開。

1991年製作/125分/中国・香港合作
原題または英題:大紅燈籠高高掛 Raise the Red Lantern
配給:AMGエンタテインメント
劇場公開日:2024年12月27日

その他の公開日:1992年4月11日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第64回 アカデミー賞(1992年)

ノミネート

外国語映画賞  
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映画レビュー

4.5洗練され完成された映像美と物語

2025年5月24日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

斬新

チャン・イーモウのデビュー作『紅いコーリャン』以来の単独監督作で、台湾のホウ・シャオシェンが製作総指揮を務め、香港や日本のスタッフも参加するなど、国境を越えたコラボレーションが進み始めていた当時の状況が懐かしい。

物語としては後宮もの(日本で言う大奥もの)の構造に近いが、その手の映画やドラマがどれだけ質が高くともエンタメ的な通俗描写から逃れられていないものがほとんどなのに対して、本作の人物描写や物語展開は非常にリアルでそれらとは次元の違う優れた文芸作となっている。『紅いコーリャン』から『菊豆』を経て作風が格段に洗練されており、その分『紅いコーリャン』の荒々しいまでのワイルドさは失われてしまったものの、この4作目にしてチャン・イーモウは1つの到達点に達したとも言えるだろう。『菊豆』同様に封建的な因襲に押し潰されていく女性を描いており、爆発力が外側に炸裂する『紅いコーリャン』と違って圧力が内へ内へと向かっていく。それだけに『紅いコーリャン』ほどの衝撃や破壊力はないものの、恐ろしいまでの完成度だ。

コン・リーをこれまでになくはっきりと映画の中心に据えた作品でもあり、ここにチャン・イーモウの作風は定まったとも言える。『紅いコーリャン』の頃に比べると、コン・リーが完全に「女優の顔」になっているのがよくわかる。女性(たち)を主人公に据えるというのも前2作以上に明確に打ち出されており、本作は女たちに比べて男たちの影は非常に薄い。以後もチャン・イーモウは大半の映画で女性を物語の中心に置いている。主人公も含めて登場人物がいずれも全面的な善人ではなく、かといって全面的な悪人でもない同情すべき女たちとして描いているのも最初に観た時から非常に印象的だった。

チャン・イーモウお得意の色彩美も素晴らしい。画面いっぱいに彩る“紅”が非常に映える。主人が泊まる夫人の部屋の前に灯される巨大な紅い提灯や、主人と寝る夫人の血行を良くするために足裏を木琴のバチみたいな物で叩く風習もこれまたチャン・イーモウお得意の創作とのことで、実際にそういう風習があるんだとやはり長く騙されていた(いい意味で)。『紅いコーリャン』に次ぐ傑作だが、この映画もまた国内上映禁止になってしまったとのこと。

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バラージ

5.0いにしえの歴史を感じる無機質な石造りの邸宅と屋敷の主人が泊まる夫人の部屋に掲げられる提灯の赤とのコントラストが実に印象的

2025年1月29日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

新文芸坐さんにて『艶やかなる紅の世界』と題したチャン・イーモウ(張芸謀)監督の初期作品の特集上映(25年1月24日~29日)開催、未配信の『菊豆(チュイトウ)』(1990)、『紅夢』(1991)を鑑賞。

『紅夢』(1991)
『菊豆(チュイトウ)』(1990)に続くチャン・イーモウ(張芸謀)監督4作目。
本作も主演はコン・リー(鞏俐)。前作同様に没落した女学生が富豪の第四夫人として嫁ぎ、閉ざされた大邸宅の生活のなかで、屋敷の主人の寵愛を受けるため他の夫人たちや召使との間で欺瞞や裏切りを繰り返し、心を蝕んでいくストーリー。
徐々に性悪女に変貌、最後は心身ともに破綻していく第四夫人をコン・リーが本作でも好演。

いにしえの歴史を感じる無機質な石造りの邸宅と屋敷の主人が泊まる夫人の部屋に掲げられる提灯の赤とのコントラストが実に印象的。
以後の『あの子を探して』(1999)『初恋のきた道』(1999)『至福のとき』(2000)の「幸せ3部作」や『HERO 英雄』(2002)『LOVERS』(2004)アクション剣劇も最高なのですが、コン・リーとコンビを組んだ人間の性をえぐりだす初期作品も良いですね。

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矢萩久登

5.0美しいコン・リー

Kさん
2025年1月27日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

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K

4.5大富豪の夫人たちの愛憎劇にして厳しい悲劇

2025年1月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

シネマスコーレの特集上映「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」から3本目にして圧倒的な最高傑作。

大富豪の主人の寵愛を巡って繰り広げられる女たちの愛憎劇。「紅いコーリャン」、「菊豆」に続きコン・リーを主演に置いた。

時はまたまた1920年代の中国。父が亡くなり没落し貧しい生活を送る頌蓮(コン・リー)が地元の富豪の第4夫人として嫁ぐことに。

まずは何棟もあるとんでもない大邸宅の造形に、そしてそれを映し出す映像の素晴らしさに激しく感動する。確固とした様式美は圧巻だ。

夫人それぞれに別棟の住居が与えられ、主人が夜をともにする夫人の住居に赤いランタンが飾り付けられる分かりやすいシステム。

そう、主人のセレクトで一喜一憂する婦人たち。

彼女たちの愛憎劇が行き着いた先に厳しい悲劇があった。説得力のある悲劇だった。

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エロくそチキン2