ミッドナイト・エクスプレス
劇場公開日:1978年10月21日
解説
トルコ旅行中に麻薬不法所持の罪で禁固4年の実刑をくらい、現地の刑務所に投獄されたアメリカ人青年ビリー。暴力が横行する地獄のような毎日をひたすら耐えていたが、出所目前にトルコとアメリカの関係が悪化、彼は取引材料として利用され、刑期が30年に延長されてしまう。ついにビリー脱獄を決意するが……。アラン・パーカー監督による社会派ドラマの傑作。実話を元にオリバー・ストーンが脚色、アカデミー賞を受賞している。
1978年製作/121分/アメリカ・イギリス合作
原題:Midnight Express
スタッフ・キャスト
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2023年2月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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ハシシ2キロを体に巻きつけ、汗だくになりながらの出国シーン(出来なかったけど)から、刑務所を出るまで、息がつけない展開で面白かった。
最初は軽い気持ちというか若気の至りのような気持ちでやっちまった感。
すぐにでも出られると思っていたビリー。
しかし刑務所では地獄が待っていた。
あと53日というところで、トルコ当局のクリーンなイメージアップ(笑)のため、見せしめのように終身刑にされるという、タイミング、運の悪さ。
刑務所あるあるなのかもだけど、あらゆる悪行が横行している。
この作品を観た2023年2月は、トルコの大地震、フィリピンでの日本人詐欺グループ逮捕という事件、災害が起きていて、どうしても2つがチラチラと頭を過ぎる。
トルコの汚職もうっすら見え隠れ。この頃から変わってなさそう…。
古い作品だけど、スマホのない時代の脱獄シーンもスリルは変わらない。
しかし最後、たった鍵1本で出られてしまうのが呆気ないというか、それまでの地獄との対比が面白い。
2021年6月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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脱獄映画のジャンルではあるが、これまでのものとは毛色の変わった力作である。その範疇に止まらない政治的背景のリアリティと、主人公が何の変哲もない極普通の青年であることの身近な現実感が重く圧し掛かる。監督のアラン・パーカーの第二作にして、個性の確立した演出力に目を見張るべき映画として讃えられよう。
1970年代のトルコの政治情勢を少し頭に入れて鑑賞しないと、主人公が置かれている状況は理解できない。麻薬の密輸国としての汚名を除くべく、密輸者の罪を見せしめに重くしていた法の解釈と施行。トルコとアメリカ合衆国の国際交流の不和。そして、ゲリラによる爆弾テロが影響する国の孤立化。そんな時勢に無関心な主人公ビリー・ヘイズは、2キロのハシシを躰に巻き付け母国アメリカに運び出そうとする。彼が飛行場で官憲に逮捕されるところが面白い。ビリーが隠しているものが爆弾とみてピストルを向け身構えた彼らが、麻薬と知って安堵の笑い声を上げる。しかし、物語は想像を超えた理不尽で不条理な世界へと進展していく。
ビリーは自分が犯した罪を大したものとは考えていない。そのギャップに理性を保てず、さも大罪のように扱われるところがショッキングである。そのリアルな表現は、パーカーの演出で端的に描かれている。カメラアングルの単一的な凝視力が、ここでは生々しい効果を生んでいるといって良い。カメラワークも含め絵的に味わい深いものではないが、メッセージが明確な表現力で押し通している。また、脱出のスリルを狙った娯楽映画の面白さともかけ離れている。裁判が政局に左右されて、ビリーに刑期30年の判決が下されるところが、恐怖映画のように感じられるのもこの映画の特徴を示す。
刑務所にいる囚人のキャラクターも其々リアリティがあり丁寧な演出だ。強靭な体格をした看守長の暴力行為は少し過剰表現と見たが、主人公の視点に立った恐怖映画とみれば納得のいく演出であるだろう。また、ビリーの父親と恋人の登場で、アメリカ人の生活感を上手く出している。特に恋人スーザンとの精神病棟での再会場面は強烈な印象を残す。今まで観たことない表現が成されていた。囚人仲間エリックとの同性愛行為も、今日のアメリカ映画の側面を如実に表している。牢獄生活の男たちのもがきが、性的に率直に描かれた真実味がある。
脱獄映画の面白さの通俗性に陥らず、また青春映画のような甘さを一切省いて、主人公が遭遇した恐怖の牢獄生活をリアリティ極めたタッチで描き通した、その意味において立派な作品であると思う。
1979年 1月27日 銀座文化2
2021年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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主人公が不当裁判に震えながら「慈悲の心がないあんたたちは豚だ!」みたいなことを訴えていたのが心に響いた。
許す心が無ければあの映画に出てくる暴力をふるう悪人になってしまうのでないかと考えさせられた。
トルコ人を悪人のように描いている(いいトルコ人も描いてほしかった)のは問題があるなと感じたけれど、辛い状況でも諦めない、そんなメッセージが伝わってくる作品だった
2021年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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折りしもハイジャック事件が多発していた。映像からもエキゾチックな雰囲気と同居する闇の世界が広がっている。麻薬を板チョコ大にアルミに包み、腹に巻く。税関の言葉もわからず、心臓の鼓動がドクドクと伝わってくる中、恋人スーザンの「ジャニス・ジョプリンが昨日死んだ」という日常の会話。折りしもハイジャックのニュースもあって厳重体制なので彼は爆弾犯と間違われた。
収容所ではいきなりの拷問。気絶していたところをジミーとエリックが介抱してくれる。弁護士について教えてもらっても「脱獄(ミッドナイト・エクスプレス)するのが一番」だと聞かされる。脱走計画を立てたジミーは捕まり殴られ睾丸を無くした・・・ぞっとする話ばかりだ。
模範囚として過ごし残り53日となったとき、裁判のやり直しの話を聞かされる。そして裁判は簡単に30年の刑を科す。決意が固まった瞬間でもあった。早速仲間と水路へ抜ける地下を掘り脱走を企てる。
5年経ってスーザンが面会にきたとき、窓越しで彼女の胸を見ながら自慰行為に耽る姿に涙が出そうになった。アメリカとトルコの外交の見せしめ、犠牲となったビリー。理不尽なことだらけだし、同室のトルコ人の囚人には裏切られるし、暴れたため精神病棟に入れられるし・・・
最終的には所長が誤って死んでしまい、所長の制服を拝借してギリシアまで逃げることができたビリー。アメリカとトルコがこの映画がカンヌで公開されたことによって、囚人交換協定を結んだ実話だなんて、ちょっとした勇気がなかったらなし得なかったこと。なにもハシシを不法所持しなければいいとは限らない。無実の罪だって投獄される恐れなんて世界中どこにだってあるんだと言わんばかりのドキュメンタリータッチが重くのしかかってくる。それにしても、映画の力もすごいものだ。