中華文化圏で商売をされたことのある方なら、多かれ少なかれ経験があると思いますが、人間関係の構築というか、お互いに朋友(パンヨウ)になるためのお酒の席でのこと。白酒(ひな祭りで飲む「しろざけ」のことではありません。バイチュウと読み、主に中国で造られる穀物を原料にした蒸留酒でウイスキー、ブランデーと並ぶ世界三大蒸留酒のひとつ。アルコール度数は低いものでも30度以上あり、高いものだと50度超え)が出され、ショットグラスに注いで皆で「乾杯(カンペイ)」と叫んで一気飲み。飲み終えたグラスを頭上で逆さまにしてもう一滴も残ってませんよとアピールして、次の乾杯へ。まるで李白の七言絶句の詩にある「一杯一杯復一杯」のように杯を重ねてゆくわけです。まあ「乾杯」というのは杯を乾すということですからね。乾杯と宣言したからにはこうしなきゃね(ちなみに一気ではなくちびちびと飲みたいときには「随意(スイイー)」と声をかけ合います)。
私が中国によく出張してた頃から、かれこれ十数年になりますし、その頃から若い世代はスマートになっているなと感じていたので、こういった「乾杯」の「伝統」もだんだんと廃れてゆくんだろうなと思っておりました。ところが、この映画では、なんとまあ、パリのシャンゼリゼに白酒登場。フランス出張中の中国警察の面々はパリ警察と朋友になるために「乾杯」を繰り返すではありませんか。おまけに、これが我々の「伝統」だとのたまっておられます。このあたりの臆面のなさが良くも悪くも中国っぽいですね。
で、作品の出来です。いろいろとツッコミどころはありますが、そこそこ面白かったです。パリを舞台にしたカー•チェイスのシーンはなかなか迫力がありました。もう20年以上前の映画になりますけど、マット•デイモン主演のジェイソン•ボーン•シリーズの第1弾『ボーン•アイデンティティー』のパリを舞台にしたカー•チェイスのシーンを思い出しました。あちらは逃げるマット•デイモンが運転するのがオースチン•ミニだったのでパリの狭い路地をうまく利用するのですが、こちらはもっと派手にあれこれ破壊してくれます。また、トニー•レオン扮する悪の親玉の危機脱出の仕方が見ものでした(まあ既視感はありますけどね)。
俳優陣ではトニー•レオンはさすがの存在感でした。追っかける警察側では小佳(シャオジア)に扮したエリカ•シアホウが印象的な活躍をしていたと思います。彼女は脚本にも参加しています。それでああいうストーリーになったのかとも感じました。あと、かつてのボンド•ガールのオルガ•キュリレンコが出てました。私は彼女が出演している映画を観る機会がこれまで比較的多く、けっこう注目していたので久しぶりに見れて嬉しかったです。
さて、上述した臆面のなさは作品の最後の数分間で存分に発揮されます。中国当局のプロパガンダに辟易してしまいます。まあ我々日本人にはあそこまではできませんが、ふと、邦画でもこういった海外に逃れている犯罪者を「狩ってゆく」ネタはありかも、とは思いました。最近では「トクリュウ」(匿名流動型犯罪グループ)とか呼ばれているグループの親玉が東南アジアあたりに拠点を持って、各種の犯罪を仕掛けてきて日本の警察を悩ませています。日本映画に警察の露骨なプロパガンダは馴染まないとは思いますが、海外の狐を狩る日本の警察のポリス•ストーリーは観てみたいです。