満ち足りた家族

劇場公開日:2025年1月17日

満ち足りた家族

解説・あらすじ

「八月のクリスマス」「危険な関係」などで知られる韓国の名匠ホ・ジノ監督が、1つの事件をきっかけに、ある兄弟とその家族が崩壊していく様を描いたサスペンス。

弁護士の兄ジェワンと小児科医の弟ジェギュ。ジュワンは道徳よりも物質的な利益を優先し、年下の2人目の妻ジス、10代の娘らと豪華なマンションに暮らしている。一方、常に道徳的で良心的が信条の弟のジェギュは年長の妻ユンギョンと10代の息子と暮らし、痴呆気味になった母の介護にも献身的だ。兄弟でありながら正反対な信念を持つ2人は、それぞれの妻とともに4人で月に一回高級レストランの個室でディナーをともにしている。あるディナーの夜、事件が発生した。この事件により、4人は家族に関するある秘密に直面することとなる。

兄ジェワンを「オアシス」のソル・ギョング、弟ジェギュを約5年ぶりの映画出演となるチャン・ドンゴンがそれぞれ演じ、ドラマ「夫婦の世界」のキム・ヒエ、「アベンジャーズ エイジオブウルトロン」のクローディア・キムらが顔をそろえる。

2024年製作/109分/PG12/韓国
原題または英題:A Normal Family
配給:日活、KDDI
劇場公開日:2025年1月17日

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映画レビュー

4.0 精緻な構造で魅せる家族劇

2025年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ホ・ジノ、ソル・ギョング、チャン・ドンゴンが組んだ本作は、タイトルやビジュアルから想像できる通りの家族の崩壊劇でありながら、まるで舞台戯曲がベースにあるかのように(実際はオランダ生まれの小説が原作)、細部と細部が噛み合ってカチッと音が響くほどの構造の精密さが光る。あらゆる要素を現代韓国へ綺麗さっぱり置き換えた翻案ぶりも見事。そこからは静かな衝撃が続くのだが、目を覆いたくなる、というよりは、むしろどんどん瞳孔が開き、目が釘付けになっていく展開というべきか。正反対の性格の兄弟が盤上の駒のようになす術もなく運命に突き動かされていく過程は、このメンツだからこその見応え感がたっぷり。さらに妻役の二人をはじめ、多彩な表現力で胸の内をあらわにできるキャストがずらり揃ったことによって、役柄的には不揃いな個々が、その実、驚くほど効果的に機能し合いながら、物語の全体像を不気味で秀逸な最終形へと至らしめている。

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牛津厚信

4.0 ケレン増し増しが韓国流。“信頼できない語り手”の妙味は薄れたが

2025年1月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

オランダ人作家ヘルマン・コッホが2009年に発表した小説「Het diner」(邦訳題「冷たい晩餐」)は、“信頼できない語り手”の手法を用いて、語り手の家族が関わった深刻な事件と語り手自身の問題が徐々に明らかになる知的スリラー。40カ国語以上で翻訳されるなど世界的ベストセラーになった。映画化は2013年のオランダ版、2014年のイタリア版(邦題「われらの子供たち」)、2017年の米国版(同「冷たい晩餐」)、そしてこの韓国映画「満ち足りた家族」で実に4度目となる。

小説では、語り手が弟の元歴史教師、その兄が著名な政治家で、兄には実の息子のほかにアフリカ系の養子がいる(この養子が事件発生後の問題にも関わってくる)。こうした主要人物の設定は米国版でほぼ忠実に引き継がれ、未見ながらオランダ版もネット検索で調べたプロットや配役を見る限り同じようだ。他方、イタリア版では弟が小児科医、兄が弁護士に職業が変更されたほか、兄の家族で事件に関わるのが息子から娘に置き換えられた。さらに、路上で起きた事件で重傷を負った子を弟が手術し、兄が加害者の弁護を担当する設定が追加されている。イタリア版も未見ながら、人物設定などの共通点を見る限り韓国版は実質的にイタリア版のリメイクと言えそうだ。なお日本では過去の3作品のうちイタリア版と米国版が限定的な上映、米国版がDVD化されたのみで、現在はいずれも鑑賞困難。この韓国版劇場公開を機に他の3バージョンも配信で視聴できるようになれば、比較する楽しみが増えるのだが。

さて、最新作の「満ち足りた家族」は、先述のようにイタリア版の影響を受けているものの、冒頭の危険運転から生じた死傷事件、被害者の手術と加害者の弁護をめぐる兄弟の葛藤、そして2組の夫婦の子供たちが犯した重大な罪、さらに原作から改変された衝撃の結末など、韓国映画が得意とする外連味たっぷりのサスペンスに仕上がっている。とりわけ深刻な事件を起こした子供たちの罪の意識の希薄さは、本作の“胸糞悪さ”に大いに貢献している。

ただし、韓国版では弟の視点に加え、その妻、弁護士の兄の視点からの語りを行ったり来たりして、2つの家族の状況を俯瞰することでわかりやすくなった一方で、原作の語り手である弟の次第に明らかになる精神面での問題や、ある遺伝的な傾向についての苦悩、過去に起こしたいくつかのトラブルが回想されるにつれ裏の顔が徐々に見えてくるといった読者の知的好奇心を刺激する仕掛けが、相対的に弱まったのが惜しい。米国版では、“信頼できない語り手”の妙味はかなり再現できているのだが、改変された結末が唐突な終わりを迎えて投げっぱなし(その後を観客の想像にゆだねるエンディング)なのが難点。結末に関しては、韓国版のほうが派手でインパクトがあり、ある意味きちんと終止符が打たれている。

さらに韓国版での変更のポイントを挙げるなら、弟の妻が認知症の始まった義母の介護で疲弊するくだりなどは原作にない要素で、日本を含むアジアの観客の多くに共感を得られそうな改変点と言えるだろう。

最後にトリビアを1つ。原作者コッホは2005年12月にスペインのバルセロナで起きた実際の事件に着想を得ている。冬の夜ATMのブースにいたホームレスの女性ロサリオ・エンドリナルさんが、未成年1人を含む若者3人に揮発性溶剤の入った容器を投げつけられてから放火され、重度のやけどを負い2日後に死亡。3人は逮捕され、裁判で懲役刑の判決を受けた。犯行の様子は監視カメラに収められ、ニュース番組で流れて世間に衝撃を与えた。この監視カメラの映像と、被告らが裁判を受けている様子を収めた映像が、YouTubeで現在も公開されている。「De neefjes van Herman Koch」(ヘルマン・コッホの甥たち)というフレーズでウェブ検索して、これら2本の動画を埋め込んだ記事(ジャーナリストEdwin Winkelsの個人サイト)を閲覧すると手っ取り早い。監視カメラ映像の中で、ホームレス女性を攻撃する若者たちは薄ら笑いを浮かべている。そのことがフィクションの小説や映画よりよほどおそろしい。

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高森郁哉

5.0 何重にも楽しめる

2025年10月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

スピーディーな展開が気持ち良い!
韓国映画は社会派なテーマでもしっかりエンタメなところが大好き。
てっきりこの事故に関わる法廷劇かと思いましたが、
弁護士の兄と医者の弟…、二つの家族を通して人間性が問われる物語でした。

心理の変化が巧みに描かれていて、あたかも立場が逆転していくかのような過程に引き込まれました。
正義とは?責任とは?子供を守るということは?
それぞれの立場からの価値観に揺さぶられます。
更に弁護士や医者は社会的立場のある職業なので
その決断は子供の為?自分の為?と疑いたくなります。

「子は親を見て育つ」とは良く言ったもので。
個人的には嫌いな言葉なのですが。どうしても一番身近な家族の価値観に影響を受けて育っちゃいますよね。
兄は高額な報酬でもっともらしい理由をつけて真実をねじ曲げ、娘ともお金でしか繋がっていない。
弟は社会的な正しさを振りかざすだけで、自らは介入しない。
“正しい嫁”を押し付けられる母親を見て息子は育つ。

心理表現が素晴らしく、登場人物1人1人に共感できる部分が盛り込まれています。
とくに医者と息子の関係性の描き方が秀逸で、正義にかこつけて面倒なことから逃げる父親を見透かしている息子を、さりげなく表現する演出に痺れました!
俯瞰から撮られていた息子とのシーンが、水平な目線に落ちてくる演出も大好き。
赤いライトに照らされるシーンの心理は一番興味深いです。

真逆の立場になったように見えるけれど、
結局、一周回って、やっぱり人間は変わらないとも思えました。
兄の選択は、もっともらしい理由をつけた厄介払いだし
弟は衝動的な息子とそっくり。

兄弟の確執の物語でもあり。
弟は兄に対して拭えない劣等感と嫉妬を正義で誤魔化していた。
弟の職業が医者ってところもポイントで、医療現場では善人だろうが悪人だろうが患者の命は平等。
でも医者も人間なので、良くも悪くも患者に寄り添い過ぎると心が消耗してしまう…どこか俯瞰で眺めてジャッジするところは、おおいに影響していると思いました。

何重にも楽しめる映画。

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NUMAYA

2.5 変化する役者の顔に注目です

2025年5月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

ドロドロした人間関係や怒りに任せて泣いたり喚いたりする彼等を描いた過去の韓国映画に比べてしまうと弱いと感じてしまうものの、中々どうして一筋縄ではいかない利己的な人間がきちんと描かれており、見応えは充分にありました。

また、善意と悪意の在り方が状況によって変わる作品となっている点も楽しめる要因となっておりました。
最初の会食と後の会食が如何にして変わるかが本作の魅力となっているので要チェックです。
前後で役者達の表情がガラリと変わるシーンなのでお見逃しなく。

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かもしだ

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