ドリームプラン

劇場公開日:

ドリームプラン

解説

ウィル・スミスが主演・製作を務め、世界最強のテニスプレイヤーと称されるビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を世界チャンピオンに育てあげたテニス未経験の父親の実話を基に描いたドラマ。リチャード・ウィリアムズは優勝したテニスプレイヤーが4万ドルの小切手を受け取る姿をテレビで見て、自分の子どもをテニスプレイヤーに育てることを決意する。テニスの経験がない彼は独学でテニスの教育法を研究して78ページにも及ぶ計画書を作成し、常識破りの計画を実行に移す。ギャングがはびこるカリフォルニア州コンプトンの公営テニスコートで、周囲からの批判や数々の問題に立ち向かいながら奮闘する父のもと、姉妹はその才能を開花させていく。2022年・第94回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞、助演女優賞ほか計6部門にノミネートされ、主演男優賞を受賞。ウィル・スミスが3度目のアカデミー賞ノミネートで初のオスカー像を手にした。

2021年製作/144分/G/アメリカ
原題または英題:King Richard
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2022年2月23日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第94回 アカデミー賞(2022年)

受賞

主演男優賞 ウィル・スミス

ノミネート

作品賞  
助演女優賞 アーンジャニュー・エリス
脚本賞 ザック・ベイリン
編集賞 パメラ・マーティン
主題歌賞

第79回 ゴールデングローブ賞(2022年)

受賞

最優秀主演男優賞(ドラマ) ウィル・スミス

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀助演女優賞 アーンジャニュー・エリス
最優秀主題歌賞
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映画レビュー

3.5実話を上手に濾過した王道の成功物語

2022年2月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

 まさに王道のアメリカンドリームの物語。ウィリアムズ姉妹が原石だった頃、根強い黒人差別やビジネスのために寄ってくる大人たちの欲から、彼女たちの夢と人生を守ろうとする父親の奮闘と暖かい家族愛が結実する展開に、思わず胸が熱くなった。
 もちろん、実話に基づく物語と銘打っているとは言え、実際の父リチャードは映画そのままの印象の人物とは限らない。それに、作中の描写だけで見ていても、見方を変えればリチャードが時にプロのアドバイスまで蹴ってひたすらに自分の「プラン」を押し通す話でもあり、一歩間違えれば親の夢を子に押し付ける毒親にもなりかねない。原題「King Richard」のとおり、王様リチャードが家庭に君臨する話という見方も出来る。

 物語ではローティーンのヴィーナスを燃え尽きさせないために、リチャードが数年試合をさせないエピソードがあるが、そもそも子供の資質によっては、父親に鍛えられている段階や、この数年の実戦ブランクで駄目になってもおかしくない。
 彼のそんな行動が結果的に正しいものになったのは、幸いにもヴィーナスとセリーナが父の熱意を受け止めきれるレベルでテニスが好きで、結果を出す能力を持っていたからだ。
 だから、サクセスストーリーとしては感動したものの、観終わった後少し複雑な気持ちにもなった。これは父の熱意と子の能力のラッキーなマリアージュの物語ではあるが、このような信念のある父親は素晴らしいと言って全面的に讚美すべき話かというと、それはちょっと違う気がしたからだ。

 物語では最初から家族はコンプトンに住んでいるように描かれていた。しかし実際はヴィーナスがまだ幼い頃まではロングビーチに住んでいた。全米屈指の治安の悪い地域コンプトンにわざわざ転居した理由をリチャードは自伝でこう書いている。「コンプトンに家族を連れて行ったのは、偉大なチャンピオンはゲットーから生まれると信じていたから」。妻は猛反対したそうだ。作中でも治安の悪さを表す描写があり、リチャードは娘を守ろうとしていたが、あれは現実では彼自身が選んだ環境だ。そういった、物語の印象が少し変わるような事実もある。
 ただ、成功の保証がない物事にあそこまで親子ともども人生を賭けられる潔さは、いい悪いは別にしてすごいと思う。そんな挑戦の中で、勉強をおろそかにしない点はよかった。

 ドキュメンタリーではないので神経質に断罪する必要はないが、映像作品としてまとめる限り、描く事実の取捨選択は必ずある。濾過され、監督のメッセージが混ぜられた物語に素直に感動した上で、モデルになった人物の実際のエピソードを調べてみるのもまた違う意味で面白い。

 水を差すようなことを書いたが、本作ではリチャードを全面的に美化したわけではなく、彼のちょっと危うい行動や、子離れ出来ない一面、姉妹に関わる大人に対する扱いづらい態度など、ある程度多様な面を描いている。
 リチャードとやり取りする周囲の人間が面倒に思う気持ちも分かるし、一方彼が昔から受けてきた差別を念頭に、自分自身の論理で娘を守ろうとする気持ちもよく伝わってきた。社会人としては面倒くさいけれど、娘への愛情に裏打ちされた頑固さとして描かれているから憎めないし、妻に諭されて娘の考えを尊重するようになる場面が、それまでの頑固さとの対比でより生きたものになった。
 また、試合のラリーの場面はカメラワークなどが工夫されていて、本当に緊迫した試合を見ているような迫力があった。
 それにしても、アメリカは成功の結果が本当にドリームだなあ……。

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ニコ

3.5Family Sports Drama that Stands Out

2022年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

King Richard is a quality film that unforunately lost attention due to the behavior of its lead star. Smith is definitely at his finest; he plays a strict, loner father figure who pushes everybody to the limit whether it's his daughters, their coach, or the league itself. A sample of black urban life from transitioning from one era to the next. Fascinating background on the Williams' tennis stars.

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Dan Knighton

3.5感動の実話フォーマットの行間から覗くいびつさ。

2022年3月31日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 8件)
村山章

3.5コンプトンの"星一徹"はいわゆるスパルタ親父ではない

2022年2月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

興奮

ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹をテニス界のトッププレーヤーに押し上げた実の父親、リチャードの教育法は、いわゆるスパルタとは違う。未来のスター選手を育てるテニススクールではなく、一家が住まうアメリカで最も危険な街と言われるL.A.のコンプトンの公営テニスコートで練習を積み、姉妹の才能をいち早く見抜いたコーチとの契約を高額を理由に断り、やがて、テニススクールに入門後も学業を優先させ、若くしてプロ契約を結ぶことを拒否する。早過ぎるプロデビューが才能を台無しにしてしまう例を見てきたからだ。

そんなリチャードに興味を持ったウィル・スミスが主役を演じ、製作に妻のジェイダ・ピンケット・スミスやヴィーナス&セリーナ姉妹が名を連ねる人物伝は、リチャードの負の部分を意図的に覆い隠している可能性はある。でも、スポーツの才能がある幼い子供たちをビジネスの道具にしたり、国威高揚の手段に使うような価値観が罷り通るような今の世の中で、コンプトンが生んだ"星一徹"の姿は見る側の心を清々しくしてくれることは確かだ。

そういう意味で、今見るべきなのはコレ。実物そっくりの役作りで初のオスカーを狙うウィル・スミスの本気を確認する意味でも。

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清藤秀人