オフィサー・アンド・スパイ

劇場公開日:

オフィサー・アンド・スパイ

解説

「戦場のピアニスト」「ゴーストライター」のロマン・ポランスキーが19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した歴史サスペンス。作家ロバート・ハリスの同名小説を原作に、権力に立ち向かった男の不屈の闘いと逆転劇を壮大なスケールで描き、2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した。1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく。ピカールを「アーティスト」のジャン・デュジャルダン、ドレフュスを「グッバイ・ゴダール!」のルイ・ガレルが演じた。

2019年製作/131分/G/フランス・イタリア合作
原題または英題:J'accuse
配給:ロングライド
劇場公開日:2022年6月3日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第76回 ベネチア国際映画祭(2019年)

受賞

銀獅子賞(審査員グランプリ) ロマン・ポランスキー

出品

コンペティション部門 出品作品 ロマン・ポランスキー
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(C)2019-LEGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINEMA-FRANCE3CINEMA-ELISEO CINEMA-RAICINEMA

映画レビュー

4.0冒頭から目に飛び込む「水」の存在

2022年6月28日
PCから投稿

「水の中のナイフ」にかこつけるわけではないが、個人的にポランスキー作品に触れる際は「水」の要素に警戒している。その意味で、まずハッとさせられるのは、本作の冒頭にてドレフュスが大勢の市民の目に晒されながら剣を叩き折られる屈辱的な場面において、広場の地面がなぜかじっとりと水に濡れていたことだ。今から考えると冤罪事件としての危険信号は既にこの時点から高鳴っていたのかもしれない。と同時に、本作が突きつけるのは、何もこの事件が過去の遺物ではないということ。為政者が国家ぐるみで真実をねじ曲げる行為はいまなお世界で深刻化しているように思える。その暗雲を切り裂き、正義と真相を追い求め続けるためにはどうすべきかーーー。19世期のドレフュス事件を知らない人にとってはわかりにくい部分もあるだろうが、この神経質なまでの緻密な作り込み方がたまらない。知らないうちに侵食されゆく恐怖や不条理感もポランスキー映画らしい。

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牛津厚信

3.5ユダヤ人差別の根深さ

2024年3月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ヨーロッパにおけるユダヤ人差別の根深さを感じる映画。はるか昔にイエス・キリストを迫害した民だからといって、なぜここまで嫌われるのかよく分からない。キリスト教圏の人間でないと分からない感覚か。ちなみに第二次世界大戦時のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺に対して、ドイツ人の多くは無反応だったと本で読んだことがある。このことからも、ヨーロッパにおけるユダヤ人の認識が窺える。

恥ずかしながら、ドレフュス事件がきっかけとなりシオニズム(ユダヤ人の国家建国)の運動につながったというのを、この映画を観る前にネットで調べて初めて知った。

後半では、ピカールやエミール・ゾラと言った面々が、ドレフュスの冤罪解決に向けて行動を起こす。見返りがある訳でもなく、そして自分の身に危険が及ぶ可能性があるのにもかかわらず、冤罪を隠蔽しようとする軍を告発するその勇気や覚悟は、生半可なものではない。

あと、同監督の『戦場のピアニスト』でも思ったことだが、ヨーロッパの街並みや自然が美しく撮れていて、そこも見どころ。史実がベースなので仕方がないかもしれないが、ラストはすっきりしない。

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根岸 圭一

3.5軍内部の差別と腐敗を弾劾したピカール中佐とユダヤ人の冤罪被害者ドレフュスが遺したもの

2024年2月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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Gustav

3.0ユダヤ系ポランスキー監督のアイデンティティが勝ち過ぎたか…

2024年2月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ガザ地区での戦争のニュースを
毎日のように目にする中、
ユダヤ人が“約束の地パレスチナ”を目指す
切っ掛けの一つになったという
“ドレフュス事件”を扱った作品として、
また監督が「ローズマリーの赤ちゃん」や
「戦場のピアニスト」等、
たくさんの名作を提供してくれた
ロマン・ポランスキーということもあり、
「ゾラの生涯」に引き続いて初鑑賞した。

見事な作品と感動しながらも、
いかにも作り物ストーリー的な作風の
「ゾラ…」を観た直後ということもあり、
ピカール中佐を主人公とするこの作品は、
史実とは全く同じでは無いとは思うものの、
それでも「ゾラ…」よりはかなり実話に近く、
あたかもドキュメンタリー作品でも
観ているかのような感じさえもあった。
ラストシーンでこそ、
軍の中枢に入ったピカールが
体面重視の判断をする皮肉り描写で
締めくくってくれたが、終始、
淡々と実話を追ったかのような作風は、
ポランスキー監督らしからぬ
ドラマチック性に欠けた印象を受けた。

この作品、ヴェネツィア映画祭では
銀獅子賞・批評家連盟賞を受賞。
しかし、1世紀近い製作年度の比較に
意味があるかは分からないが、
日本ではキネマ旬報ベストテンで第76位。
同じ“ドレフュス事件”を扱って
アカデミー作品賞受賞と、
キネマ旬報で第16位の評価を受けた「ゾラ…」
と比較すると、日本では
それほど評価は高くなかったように見える。
ポランスキー自身が
ユダヤ系ということもあり、
結果的にアイデンティティが勝ち過ぎて、
エンターテインメント性には欠けた作品に
なってしまったのではないだろうか。

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