コラム:佐藤久理子 パリは萌えているか - 第7回

2012年6月28日更新

佐藤久理子 パリは萌えているか

アニメがフランスの夏を熱くする! アニメ関連イベントが続々開催

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今年も6月の上旬に、アヌシー国際アニメーション映画祭が開催された。フランスのスイス国境寄りに位置する湖の美しい街、アヌシーで開催されるこのイベントは、マーケット部門も充実し、アニメ専門の映画祭としては世界最大規模を誇る、関係者にとって避けて通れないビジネスの場だ。今年は出品希望作品が去年より469本も多い、2455本集ったというから、その注目度はうなぎのぼりと言える。いまやアニメ専門誌や映画誌だけでなく、一般誌もアヌシーの記事を取り上げるほどだ。

今年は10本の長編と49本の短編がコンぺティションに選ばれ、日本からは新海誠の「星を追う子ども」と、さとうけいいちの「アシュラ」が入った。アウト・オブ・コンぺには、沖浦啓之の「ももへの手紙」、宇田鋼之介の「虹色ほたる 永遠の夏休み」、窪岡俊之の「ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵」が入選。このうち「虹色ほたる 永遠の夏休み」は、3年前に同映画祭の特色のひとつである、企画中の作品を紹介する枠組みに選ばれたプロジェクトだ。これだけを見ても、日本のアニメがいかにヨーロッパで広く支持されているのかが実感できるだろう。

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日本のアニメにちなんだフランスの地方イベントがもうひとつ。アングレーム国際漫画フェスティバルで知られるアングレームの街で6月30日から10月7日まで開催される、「マンガポリス」なる展覧会だ。会場はLA CITE INTERNATIONALE DE LA BANDE DESSINEE ET DE L’IMAGE(バンドデシネと映像の国際都市 http://www.citebd.org/)。バンドデシネ専門の美術館があるとは、さすがはアングレームだが、この展覧会では漫画を通して現代の日本の都市の構造、その特徴を探ろうというユニークな試みがなされている。外国人にとっては細い路地が交差した、番地すらも理路整然としていない日本の都市構造はまるで迷路のように映るらしく、そこに独特のファンタズムを覚えるようだ。同展ではまた、オリエンタリズムを刺激するフランス人に人気の漫画家、谷口ジローと、全巻で計1億5000万部の売り上げを誇るお化けシリーズ「ドラゴンボール」、夢と現実のパラレルな世界を描いたフランスの人気漫画家ルノ・ルメールによる「DREAMLAND」の、3つのテーマも特集されている。

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イベントは地方だけではない。パリでは細田守の新作、「おおかみこどもの雨と雪」が8月末から公開されるのを機に、先頃プレミア上映と、それに掛けた細田守のオリジナル画を集めた展覧会が開催された。パリの中心、レアールにあるマルチプレックスの大スクリーンを使っておこなわれた上映会は満席になり、監督が参加した質疑応答では、すべてさばききれないほど質問が上がるなど、この監督の人気と作品への関心の高さを表していた。

展覧会を開催したのは、世界中のバンドデシネ(漫画)作品を専門に扱うサン=ルイ島にあるギャラリー、Arludik(http://www.arludik.com/)。オープンして十年足らずではあるが、すでにメビウス、大友克洋今敏など、そうそうたる面子を紹介し、パリのバンドデシネ作家たちの集いの場所としても知られている。オーナーによれば、とかく娯楽作としてのみ扱われがちなバンドデシネのアーティスティックな価値を讃えると共に、作品の裏に隠れがちな作家たちにスポットライトを当てたい、という思いがあるとか。

それにしても、フランス各地を回る日本のアニメ&漫画の躍進ぶりは目覚ましい。7月にはアニメ関連のメイン・イベント、「ジャパン・エキスポ」も控えるが、今年はエキスポ内で、「エヴァンゲリオン」初の海外スタンプラリーが設置される。フランスを皮切りに日本、アメリカ、中国の4カ所に期間限定でスタンプが設置されるもので、すでにファンのあいだで話題沸騰に。どうやら日本のアニメがフランスの夏を熱くするようだ。(佐藤久理子)

筆者紹介

佐藤久理子のコラム

佐藤久理子(さとう・くりこ)。パリ在住。編集者を経て、現在フリージャーナリスト。映画だけでなく、ファッション、アート等の分野でも筆を振るう。「CUT」「キネマ旬報」「ふらんす」などでその活躍を披露している。著書に「映画で歩くパリ」(スペースシャワーネットワーク)。

Twitter:@KurikoSato

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