コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第84回

2025年12月25日更新

編集長コラム 映画って何だ?

2025年公開の映画を振り返り、個人的な「今年の10本」をご紹介

2025年の映画興行は、2019年の2612億円を上回り、過去最高の興行収入を記録するのが確実となっています。関係者も驚きのビッグイヤーとなりました。

興収TOP10を並べてみると、1位から順に「鬼滅の刃」「国宝」「名探偵コナン」「チェンソーマン」「はたらく細胞」「劇場版TOKYO MER」「ミッション:インポッシブル」「モアナと伝説の海」「8番出口」「ジュラシック・ワールド」という具合で(11月末現在)、日本映画が7本、外国映画が3本という構成。外国勢が少ないことに驚かれる方も多いと思いますが、昨年(2024年)はTOP10に外国映画は1本もありませんでした。つまり、ハリウッド勢も少しずつ回復傾向にあるということです。

そんな市場にあって、今年2025年、私自身が見た映画の中から特に印象に残った10本を選んでみました。あくまで個人的なセレクションです。

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●「ワン・バトル・アフター・アナザー

個人的に、圧倒的な今年のベストでした。ポール・トーマス・アンダーソン監督と、レオナルド・ディカプリオが初めてタッグを組んだ作品ですが、ディカプリオが熱演していないところが最高に良かった。彼以外のショーン・ペンとかベニチオ・デル・トロ、あと、テヤナ・テイラーチェイス・インフィニティといった女優陣がみな素晴らしく、プロットも驚くほど秀逸。3本の映画を同時に見ているような濃密な映画体験でした。来年のオスカーの大本命です。

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●「罪人たち

ライアン・クーグラー監督が、いつものマイケル・B・ジョーダンとコラボしたサスペンスホラー。もの凄く禍々しい存在が、人間を襲いに来ている感じが超怖かった。どんな化け物が現れるかとハラハラしましたが、「彼ら」の正体が分かった時は、少しホッとした記憶があります。ホラーなのに音楽がとてつもなくゴージャスで、ちょっと意味が分かりませんでしたね。

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●「エミリア・ペレス

ぶっ飛びのストーリーと、主演のカルラ・ソフィア・ガスコンの熱演に圧倒されました。今年のオスカーでは作品賞の大本命だったにも関わらず、SNSでの大炎上で圏外に消え去ったのは大変残念で、まさに「天国から地獄案件」。この作品が辿った顛末には、いろいろ考えさせられましたね。

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●「エイジ・オブ・ディスクロージャー 真実の幕開け

ここからはドキュメンタリーを並べます。まず、前回のコラムでも紹介したUFO / UAP案件「エイジ・オブ・ディスクロージャー 真実の幕開け」は、人生でもっとも衝撃を受けたドキュメンタリーの1本です。「あなたはUFOを信じますか?」と聞かれたら、「いや〜、たぶんね」などと答えていたのが、この映画を見た後は「絶対に信じる」に変わりましたから。2026年は空前のUFO / UAPブームが来るんじゃないかとワクワクしています。

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●「ヒプノシス レコードジャケットの美学

今年は、音楽ドキュメンタリーの当たり年でした。年代的にずっぽりツボにはまったのが、このヒプノシスの栄枯盛衰を描いたヤツ。ピンク・フロイドとかジェネシスなど、おもにプログレ系バンドのレコードジャケットをデザインしていたクリエイティブ集団ですが、「レコードからCDへ」「ラジオからMTVへ」というメディアの変遷に抗いきれずに淘汰されてしまいます。懐かしくも、悲しい映画でした。

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●「レッド・ツェッペリン ビカミング

そのヒプノシスにアルバムジャケットを何本も発注していた常連さんがレッド・ツェッペリンです。本作は、バンド初期の頃、アルバムでいえば「レッド・ツェッペリンI」と「II」が生まれるあたりを描いた胸アツのドキュメンタリーです。これも自分のコラムで書きましたが、メンバーたちが「ロード・オブ・ザ・リング」の原作「指輪物語」の大ファンだったことが分かって大変興奮しましたよ。

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●「アニタ 反逆の女神

私がティーンエイジャーだったころ、レッド・ツェッペリンも人気がありましたけど、もっと人気があったのがローリング・ストーンズです。そのストーンズのメンバー、ブライアン・ジョーンズキース・リチャーズのミューズ的な存在だった(妻でもあった)アニタ・パレンバーグに関するドキュメンタリーも忘れられない作品となりました。1960年代〜70年代ってほんと「セックス、ドラッグ、ロックンロール」な時代だったんだね。

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●「手に魂を込め、歩いてみれば

音楽もの以外にも、忘れられないドキュメンタリーがありました。イスラエルとの戦争状態でガレキの町と化したガザに暮らすカメラ女子に密着した本作は、戦地の人々の命のはかなさや平常心を保つことの難しさを否応なしに提示してくる1本です。当地で暮らす人々が、一刻も早くもとの生活に戻れることを願うばかりです。

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●「それでも私は Though I’m His Daughter

これは、戦争とはまた別の辛さ、誹謗中傷にさらされる人物のカルマを浮き彫りにするドキュメンタリー。オウム真理教の教祖、麻原彰晃こと松本智津夫の3女が今どうしているか?に迫る内容です。地下鉄サリン事件の頃、日本のメディアはオウム真理教一色でした。「アーチャリー」と呼ばれていた3女のことは覚えています。そのアーチャリーに関するドキュメンタリーを映画館で見るという体験は、あの事件をリアルに知る者として非常に感慨深かった。

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●「国宝

最後の1本、やはり今年はこの映画に触れないわけにはいけません。実写の日本映画としては「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」を抜いて興収が歴代1位になったとのことで、極めてエポックメイキングな作品となりました。先日、家族がこの映画を見に行ったのですが、写真のような大入り袋をもらって帰ってきましたよ。非常に珍しいことですね。歴史的大ヒット、おめでとうございます。

「国宝」の大入り袋
「国宝」の大入り袋

さて、冒頭で「ハリウッド勢も少しずつ回復傾向」と書きましたが、いよいよ来年、2026年は完全なる復活を迎えるかも知れません。

まずはアンディ・ウィアー原作の宇宙案件「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が3月に公開。そして夏にはクリストファー・ノーランの新作「オデュッセイア」が待ち構えています。また、スピルバーグの新作「ディスクロージャー・デイ」もまた夏の公開。しかも、スピルバーグのヤツはUAP案件なんですよ。2026年は本当に「UAPイヤー」になりそうで、めちゃめちゃ楽しみです。

まずは、3月のアカデミー賞で「ワン・バトル・アフター・アナザー」の答え合わせです。個人的には、ノミネートが7〜10、受賞が5〜7と予想しています。授賞式が楽しみです。

筆者紹介

駒井尚文のコラム

駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。

Twitter:@komainaofumi

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