コラム:編集長コラム 映画って何だ? - 第31回
2020年5月1日更新
映画.comがオススメする、オールタイムベスト1200本を選びました
3年以上前に企画が立ち上がってから、だいぶ時間が経ってしまいましたが、ついに昨日(2020年4月30日)、映画.comがオススメする名作映画群、「映画.comオールタイムベスト1200」をリリースすることができました。私たちなりの、名作映画リストです。
緊急事態宣言下の日々、ご自宅でストリーミング配信やDVDなどで映画鑑賞している方も多いのではないかと思います。私たちは商売柄「映画見たいけど、何を見ていいのか分からない」とか「オススメの映画を何本か教えて」というリクエストをよくいただきます。そういうリクエストに対するひとつの答がこの1200本のリストです。ご自宅での映画鑑賞にご活用いただければ幸いです。
このリストをご覧になった方の中には、「私の好きなあの映画が入ってない」とか「『XX』が選ばれているのに、『YY』がないのはおかしい」のように、異論をお持ちになる方も少なからずいるでしょう。しかし私たちは、その道の権威を目指してこのリストを作ったわけではなく、あくまで、「私たちなりのオススメ」を提示したにすぎないことをご理解ください。映画ファンが10人いたら、10通りの名作リストができるはずですから。
選出は、まず、映画評論家のSTさん(大感謝です!)に最初のノミネート作品リストを作っていただきました。この時点で作品は約1500本。これをベースに、あと2名の映画ジャーナリスト、映画ライターの方々のリストを合体、さらに、リストにないけど是非加えたいものを映画.comスタッフ数名から募り、最終ノミネート1800本のリストが出来上がりました。
この1800本を1000本まで絞り込む作業は、映画.comの30代女子、40代男子、50代(=私)の3名のスタッフで行いました。クラシック大会にならないように、若めの映画も意識して選んだつもりです。この絞り込み作業には、新型コロナ禍におけるテレワークが、ちょうどいい具合でした。
絞り込みのポイントは、まず「現在、自宅で比較的簡単に見られること」に主眼を置きました。ストリーミングで見られるか、DVDが廃盤になっていないことが前提条件です。どんなに世界が認めた名作でも、今見られないんじゃ選んでもしょうがない。次に、「今見ても面白いか」もポイントです。たとえ「時代を代表する映画」でも、21世紀の今見てみると「アレっ?」て思う物、時々ありますよね。そして、「名監督の作品は、ほどほどになるよう間引く」というのもやりました。例えば、ウッディ・アレンの映画は、色んな人が色んな作品をノミネートするんですが、全部採用するとあまりに多すぎる。だいぶ削りました。それでも、アレン監督作は10作品と、このリストで最も多く選ばれている監督です。
そんなポリシーで絞り込みを行いましたが、さすがに1000本まで絞るのは無理で、最終的に1200本というキリのいい本数に落ち着きました。以後、この映画.comオールタイムベストは、1200本のリストを毎年更新する形で続けていく予定です。
この選考・絞り込みの過程には、色んな発見がありました。例えば、現在日本に存在していない配給会社の作品は、鑑賞が難しいものが多くあるということ。フランス映画社や、ヘラルド映画の配給作品が典型ですね。テオ・アンゲロプロスやエミール・クストリッツァの映画は、今、日本で見ようとするとけっこう大変です。
また、理由は不明ですが、ストリーミングで一切見られない作品が意外に多いこと。どのプラットフォームにも乗ってない作品としては、一連の「スタジオジブリ作品」が有名ですが、今回選んだ作品でも「アマデウス」や「マルホランド・ドライブ」がどこでも見られないという事実は衝撃でした(DVDは売ってます)。2020年4月現在の調査です。
一方で、もの凄く昔の、100年前の映画がストリーミングで視聴できるという嬉しい驚きもありました。スコセッシの「ヒューゴの不思議な発明」でおなじみ、ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」(1902)や、世界初の西部劇「大列車強盗」(1903)などは、ストリーミングで鑑賞することが可能です。ただし、どちらも10分ちょっとの短編なので、今回のオールタイムベスト1200本には入れていません。
私が映画をたくさん見るようになった1980〜90年代は、自宅での鑑賞がVHSやレーザーディスクの時代でした。その後、DVDや衛星放送の時代を経て、今は完全にストリーミングの時代。20世紀よりも、遙かに簡単に名作映画にアクセスできる、そんな素晴らしい時代になりました。
ステイホーム週間になってしまった、2020年のゴールデンウィーク。ご自宅での映画鑑賞に「映画.comオールタイムベスト1200」をご活用いただければ幸いです。現在、ジャケット写真が欠落した作品が多かったり、ソート機能の使い勝手が悪かったりしますが、ゴールデンウィークが明けたら、徐々に改善していきます。
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi