コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第24回
2008年11月25日更新
第24回:今年の日本映画界は、綾瀬はるかが「興収女王」の座に?
全日空と東宝、フジテレビのコラボレーション、「ハッピーフライト」が公開された。「レッドクリフ」をかわして首位に立つことはできなかったが、オープニング2日間で動員16万3500人、興収2億1600万円と出足はまずまず。これは、矢口史靖監督の前作「スウィングガールズ」(興収21.5億円)の113%という水準だ。客層は30代・40代が中心だそうで、男の1人客が多いとのこと。デートムービーというよりはオタク受けの映画なのかも知れない。いずれにせよ、「スウィングガールズ」と同等かそれ以上、興収20億円前後は狙えそうなスタートを切った。
「ハッピーフライト」では、綾瀬はるかがキャビン・アテンダントを演じているが、最近、綾瀬はるかの出演する映画がかなり多いという印象を受ける。しかも話題作揃いだ。以下、今年の彼女の出演作と成績をリストアップしてみた(カッコ内は公開日・配給会社。金額は興収、※印は編集部推定)。
「僕の彼女はサイボーグ」(5月31日・ギャガ)・・・11億円
「ザ・マジックアワー」(6月7日・東宝)・・・40億円
「ICHI」(10月25日・ワーナー映画)・・・3.5億円※
「ハッピーフライト」(11月15日・東宝)・・・20億円※
「ハッピーフライト」含め、主役級が3本。配給別では、東宝が2本、インディペンデントが1本、ハリウッドメジャーが1本。「僕の彼女はサイボーグ」のように韓国人監督との仕事もあり、役柄もバラエティに富んでいる。
そして、出演作4本の興収を合計すると75億円近くになる。これは、今年の実写映画では日本人女優でナンバーワン・クラスだ。もちろん、綾瀬が1人で75億円稼いだというわけでは全然ないが、かと言って、たまたま出演した映画の総興収が75億円に上ったということでもない。綾瀬は今「ヒットが見込まれる作品によく招かれている」と言うことで、それは決して運や偶然だけではない。
ちなみに、柴咲コウはより少ない本数で同じぐらいの興収を記録している。柴咲の今年の成績は以下の通りだ。
「少林少女」(4月26日・東宝)・・・16億円
「容疑者Xの献身」(10月4日・東宝)・・・45億円※
実は柴咲は別格で、ここ2~3年は、東宝作品だけで年間の興収50億円以上が「約束されている」感がある。
今年の綾瀬は、その柴咲をほんの少し上回った。また、より厳密に興収を比較するなら、「花より男子ファイナル」が興収77億円なので、井上真央がナンバーワンと言えなくはないが、これはちょっと無理があるだろう。
そんなわけで、今年の賞金女王ならぬ興収女王の称号は綾瀬はるかに差し上げたい。サイボーグ役、盲目の剣士役、キャビン・アテンダント役を1年の間にこなすなどは、まさに今が旬である証左。しかも次回作は、ワーナー映画と東映が共同で配給する「おっぱいバレー」(09年4月公開)。なかなか面白いキャリアを築いていると思う。(eiga.com編集長・駒井尚文)
筆者紹介
駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi