トリとロキタ

劇場公開日:

トリとロキタ

解説

ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、アフリカからベルギーに流れ着いた偽りの姉弟の強い絆と過酷な現実を描いたヒューマンドラマ。

アフリカから地中海をわたってベルギーのリエージュにやって来た少年トリと少女ロキタ。偽りの姉弟として生きる2人はどんな時でも一緒で、年上のロキタは社会からトリを守り、しっかり者のトリは時々不安定になるロキタを支えている。10代後半のロキタはビザがないため正規の職に就くことができず、ドラッグの運び屋をして金を稼ぐ。ロキタは偽造ビザを手に入れるため、さらに危険な仕事を始めるが……。

本作が演技初経験のパブロ・シルズとジョエリー・ムブンドゥがトリとロキタを演じた。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、75周年記念大賞を受賞。

2022年製作/89分/G/ベルギー・フランス合作
原題:Tori et Lokita
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2023年3月31日

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(C)LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINEMA - VOO et Be tv - PROXIMUS - RTBF(Television belge)

映画レビュー

観客に対する信頼

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ダルデンヌ兄弟の映画は、いつも心が痛くなる。しかし、心が痛くなる現実があるのだからこの兄弟監督はカメラを向けないわけにはいかないと思っているのだろ。私たちもきちんと向き合う必要があるし、向き合ってくれると観客を信頼しているからこういう映画を作れるのだ。本作では、難民の少年少女が親元を離れてヨーロッパへ渡らざるをえない現実が背景にあり、なおかつ、そんな彼らが制度の欠陥た差別などで苦境に陥る姿を突き付けている。
トリとロキタは、姉弟と偽ってビザを申請するが、認められない。しかし、二人の絆は本物だ。ビザがないので非合法な仕事をする以外に生活する術がない。姉のロキタは故郷に仕送りに加えて、渡航ブローカーに金を払わねばならず、危険な麻薬ビジネスに利用される。救いのない現実が容赦なく見せつけられるが、これがこの社会の現実だ。
トリとロキタ役の2人の少年少女の芝居は素晴らしい。ダルデンヌ兄弟はティーンエイジャーを描くのが本当に上手いと思う。「イゴールの約束」でも不法移民の物語を描いていた彼らだけど、その眼差しは一貫して変わらない。本当に芯のある作家だと思う。

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杉本穂高

4.0装飾を削ぎ落とし、二人の動線と感情を見つめ続ける

2023年3月31日
PCから投稿

ダルデンヌ作品はいつも飾り気がなく、素朴な演出によって形作られているかに見える。この監督の凄さはまさにそこに尽きるのだろう。つまり、劇映画というフィクションでありながら、我々の意識は現実と地続きの世界であるかのように映像の中へと引き摺り込まれる。それも強引ではなく、いつの間にか、自ずと境界線を超えている自分に気づくのだ。今作はさらに演技経験のない二人を起用しており、ただひたすら彼らの日常や行動をカメラが見つめる。全編を通じて全く説明的な言葉や描写はないのに、なぜこれほど状況や感情がダイレクトに伝わってくるのか。血のつながりのない二人が互いを支え合い、一緒にいたいと思い続ける気持ちになぜこんなに胸が締め付けられるのか。技巧を微塵も感じさせず、それでいて我々の意識を見ず知らずの二人に寄り添わせるこのタッチ。ダルデンヌ作品を観続けて20年以上が経つが、最近その凄さがようやくわかってきた気がする。

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牛津厚信

4.5コンゴ民主共和国が彼女たちの祖国だと思う。

2024年1月26日
スマートフォンから投稿
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マサシ

4.0【”ビザを得る事を願い、支え合う偽りの姉弟の強い絆を描く極力過剰な演出を避けたダルデンヌ兄弟ならではの作品。トリとロキタがお互いを想い奮闘する姿が沁みる作品でもある。】

2023年11月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

ー 今作は、ダルデンヌ兄弟ならではのBGMがなく、演技未経験者を主演させ、作劇を削ぎ落とした先の読めないサスペンスである。
  尚且つ、世界が直面する人間の尊厳のあり方を問う作品でもある。

■アフリカのどこかの国からベルギー(と思われる。)へやってきたトリとロキタ。
 ロキタは祖国にいる家族のため、ドラッグの運び屋をして金を稼いでいる。
 偽りの姉弟としてこの街で生きる2人は、どんな時も一緒だ。
 正規の仕事に就くため、ロキタはさらに危険な闇組織の大麻栽培の仕事を始める。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・ダルデンヌ兄弟の作品は、常に弱者の視点で描かれる。
 今作も同様で、必死に生きようとするトリとロキタの厳しき日々を(多分、手持ちカメラで。)写し出している。

・資料によると、トリとロキタは演技は素人であったそうであるが、全くそうは見えない。
ー 特に、大麻栽培施設で働くことになったロキタを案じる小さなトリが必死に大麻栽培施設に潜入する姿や、必死に大麻を売る姿が、観ていてハラハラするし、とても切ない。
  彼が、夜の街を施設の自転車で疾走する姿・・。ー

・ロキタは母国の母親に送金するために、危険な仕事や人間として尊厳を失うことまでやっている。
ー ロキタは呟く。”私は、汚い・・。”
  汚いのは貴女ではないよ!そんなことを遣らせる、優越的地位に居る愚かしき人々だよ!。-

<ラストは、哀し過ぎる。ロキタの葬儀でトリが葬送の言葉を述べるシーンは観ていて涙が溢れる。
 エンドロールが無音になった後に、今作を観たモノは何をすべきかを、ダルデンヌ兄弟が強烈に問いかけてくる作品である。>

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NOBU
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