ジャン=ピエール・メルビル
パリ生まれ。少年時代にアメリカ映画に心酔し、父親から贈られた16ミリで映画制作を始める。1937年から仏軍に従軍し、ナチス・ドイツによるフランス占領時には抵抗運動に身を投じた。46年、組合などに所属せず独立して制作会社を立ち上げ、異例尽くしの方法で撮り上げた「海の沈黙」(49)で長編監督デビュー。ジャン・コクトーの同名小説を映画化した「恐るべき子供たち」(50)はヌーベルバーグの先駆けとなり、ジャン=リュック・ゴダールの初長編監督作「勝手にしやがれ」(60)にはカメオ出演で登場した。ジャン=ポール・ベルモンド主演の「モラン神父」(61)や「いぬ」(62)、「ギャング」(66)、アラン・ドロン主演の「サムライ」(67)や「仁義」(70)など、フィルムノワールの傑作を次々に世に送り出し、戦争大作「影の軍隊」(69)では抵抗運動の経験を元に第2次大戦中の悲劇を描いた。73年、14の作品を遺し、心臓発作のため55歳で死去。善悪の両面を抱えた人間の複雑さや男たちの絆と裏切りを描ききり、仏映画のみならず、世界中の映画監督に影響を与える。ドキュメンタリー「コードネームはメルヴィル」(08)にもその生涯と業績が描かれている。