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激しい情念渦巻く名作ドラマ「モンテ・クリスト伯」インタビュー 主演ピエール・ニネが考える“復讐と正義”

2025年11月12日 09:00

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ピエール・ニネが主演
ピエール・ニネが主演
(c)2024 CHAPTER 2 – PATHE FILMS – M6 - Photographe Jérôme Prébois.jpg

フランス国内で940万人を動員し、全世界興収1億ドルを突破した「モンテ・クリスト伯」が公開された。数奇な運命を背負った男、ダンテスを優雅かつ繊細に演じきった、主演ピエール・ニネのインタビューを映画.comが入手した。

文豪アレクサンドル・デュマが執筆した「巌窟王」の名でも知られる傑作小説を新たに映画化。“復讐劇の金字塔”とも称されるドラマチックな展開は、ロマンス、サスペンス、アクションの枠を超え、激しい情念が渦巻く究極の人間ドラマだ。第77回カンヌ国際映画祭では11分間のスタンディングオベーションを獲得した。

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将来を約束された若き航海士エドモン・ダンテスは、ある策略により無実の罪で投獄され、次第に生きる気力を失っていく。絶望の中、脱獄を企てる老司祭との出会いにより、やがて希望を取り戻していった。司祭から学問と教養を授かり、さらにテンプル騎士団の隠し財宝の存在を打ち明けられる。囚われの身となった14年後、奇跡的に脱獄を果たしたダンテスは、莫大な秘密の財宝を手に入れ、謎に包まれた大富豪“モンテ・クリスト伯”としてパリ社交界に姿を現す。そして、自らの人生を奪った三人の男たちに巧妙に近づいていく──。

―― 原作はアレクサンドル・デュマの有名な小説ですが、その主人公エドモン・ダンテス(=モンテ・クリスト伯)を演じるということどう、この役をオファーされた時のお気持ちを教えてください。

確かにフランスでは有名過ぎるほど有名な小説です。私自身もティーンネージャーの頃にやっぱり避けては通れない本として、読書ってこんなに楽しいんだという、読書に恋をするような経験をさせてくれたのがこの「モンテ・クリスト伯」(原作は「巌窟王」)でした。

布団の中で懐中電灯をつけながら「もう少し読もう、あともうちょっとだけ」というほど夢中になっていたものです。なのでこの役をオファーされた時に断るなんてありえないことでした。14歳の頃から夢中になっていた作品ですし、おそらく自分のキャリアの中で二度とこんな役は巡って来ないんじゃないかと思いました。

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――無実の罪で投獄された主人公のエドモン・ダンテスが、モンテ・クリスト伯と名乗り復讐に向かうという約20年に渡る人生を役じましたが、主に内面や感情についての役作りについて教えてください。

彼は決して冷酷で計算高い策略家ではなく、言ってしまえば一人の人間なんです。ただ復讐に燃えているだけではなく、彼自身には(無実の罪を着せられたという)トラウマがあるわけです。そのトラウマを乗り越えて復讐を果たすからこそ、人間の悲劇やドラマがあると私自身は思っています。なので復讐に燃える男の殻の内側にある、脆弱さや葛藤というものを表現することに心がけました。

彼の内面を演じ分けるのは、私にとってとても大きなチャレンジでした。物語の初め、エドモン・ダンテスはまだ人生の荒波を経験していない、純真さを持った若き航海士なわけです。ですが約15年、冤罪で牢獄に閉じ込められて過ごすことになるわけです、本当に不当な扱いで狂気との紙一重の瞬間だってあったと思います。なので脱獄してからの彼はもう15年前の若者ではありません。成熟したということではなく人として傷を負い、人生を壊されてしまっているのです。なので同じエドモン・ダンテスでも別の人物として演じなければならないと思いました。

脱獄してモンテ・クリスト伯と名乗ってからは1年のうちに5、6人の人間を演じ分けるという役柄だったので、もちろん難しさはありますが、俳優としては贈り物のような側面もありました。言ってみれば子どものように、演じている人間が楽しめれば演技は信憑性を帯びますし濃い内容のものになると思っています。

実は、今回の役をオファーされた時は私自身がもう父親になっていたんです。35歳で2人の子どももいたので、人間的な厚みというものもできてきた時期でした。特に映画の後半部分、モンテ・クリスト伯を演じるときにもし私が25歳だったら役を体現するだけの深みや成熟さは持ち合わせていなかったと思います。

――エドモン・ダンテスを演じるにあたって意識したことや楽しかったことなどを教えてください。

それはもうチャレンジングな経験でした。時代に合わせてさまざまな顔や身体的なこと、声そのものを変えなければいけなかったですし。私自身実は舞台出身で、そういった役作りは大好きなのでちょっとした贈り物だと思いながら取り組んでいました。原作はとてもロマンチックな部分と叙事詩的な部分があるんです。決闘シーンもあれば時代の衣装ものという面もあって。そういう意味ではやはりメイキャップにはすごく助けられました。さまざまなトライアルもして、準備も含めれば200時間くらいはメイクに費やしたでしょうか。それで撮影現場にいると僕だけでなく本当にみんなが素晴らしくて、美術セットや作り込まれたライティングの中で、子どものようにウキウキとしていました。

一番楽しかったシーンを一つ挙げると、馬に乗って狩猟をするシーンがあるんですが、本物の犬たちと一緒に走ったり、モンテ・クリスト伯の敵役の他の共演者たちとも馬に乗りながら並走したりエキストラもいっぱいいる、そのリアル感というのがやっぱりすごかったですね。

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――エドモン・ダンテス=モンテ・クリスト伯は復讐に燃えていきますが、果たしてそれは正義なのか?という点で、今回の「モンテ・クリスト伯」は現代的な話でもありました。ご自身ではどのように思いますか?

とても哲学的な話だと思います。私たち人間はみんなが共有できる“正義”を持ちたいと願うわけですが、往々にして復讐というものは主観的で、個人的なものの最たるものだと思います。非常にバイアスのかかった正義と言えるでしょうか。そして復讐することについての最良の道というものは存在しません。もちろん映画という作品の中では観客を証人として、共感を持ってもらえるような描き方をしますよね。ただ実際に復讐はどうか?という問いに関しては決していい選択、解決方法ではないと私自身は考えています。

復讐の反対は赦しだと思いますが、もし手を染めてしまったらその相手だけではなくもっと大きな被害を及ぼしてしまうかもしれない。自分も相手と同じレベルになってしまうでしょう。時代的にも地理的にも普遍的なものではあるけれど、この話を始めるとずっと話し続けていられる、尽きないテーマだと思います。

――フランスでは940万人を動員した大ヒットでしたが、日本の観客に向けてもメッセージをお願いします。

映画や芸術作品は、自分たち作り手としては最大限の誠意や真摯な気持ちを持って作るわけですが、出来上がってしまえば観客に委ねられるものと考えています。フランスではヒットしましたが、やはり国によってはまちまちだと聞いています。ウクライナ、フランス、アメリカ、それぞれ反応はやはり違いました。それこそが芸術作品の素晴らしいところじゃないかと思うのです。日本の文化もフランスとはかなり違うと思いますがぜひリアクションを寄せてもらえるといいなと思います。

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――「モンテ・クリスト伯」は何度も映画化され、日本でもドラマやアニメ化、原作の新訳も今年出版されるなど人気です。本作はもちろん、フランスでも復讐劇というジャンルは人気なのでしょうか。

復讐という題材は非常に普遍的だと思います。フランスだと歴史的にも王様や女王などの話が実際にいくつもあったわけです。ただ、お国柄というわけではないと思います。アメリカではクリント・イーストウッドやタランティーノ作品、西部劇などでも描かれていますよね。日本でも「七人の侍」もありますし、おそらく観客のカタルシスや感情が浄化されるというのがあるんじゃないでしょうか。現実には復讐というのはかなり危険な行為ですが、かたや映画となると人間は共感の動物ですから、登場人物の正義によって裁かれるというようなことに共感して、夢中になったりするんだと思います。

――「七人の侍」のほか、日本の監督や作品などお好きなものがあればぜひ教えてください。

私自身、日本を訪れたのはもう10数年前(※2014年夏)、「イヴ・サン・ローラン」の時ですが、日本の映画は非常に関心があります。「七人の侍」だけでなく黒澤明の「羅生門」にも影響を受けていますし、私の世代だと深作欣二監督の「バトル・ロワイヤル」にもかなり影響を受けました。それから世界中でもかなり衝撃的だったサイバーパンクの「AKIRA」(深作欣二監督)や、今敏の「PERFECT BLUE」もです。今敏の世界観にはすごく個人的に興味があります。もちろん、宮崎駿監督作品も外せないですね。フランス人だったら子どもができたら必ず見せるぐらいの監督で、他にはないような世界観があるのでとても好きです。また日本にまたいく機会があればぜひと心から願っています。

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