不朽の名作「浮雲」 岡田茉莉子が語る成瀬巳喜男監督、高峰秀子、森雅之との思い出【第38回東京国際映画祭】
2025年11月1日 18:10
名匠・成瀬巳喜男が林芙美子の同名小説を、高峰秀子主演で映画化した名作メロドラマ。戦後の荒廃した日本を舞台に、腐れ縁の男女の愛の顛末を描く。戦時下の昭和18年。タイピストとしてインドシナへ渡った幸田ゆき子は、技師の富岡兼吾と出会う。富岡には日本に残してきた妻がいたが、2人は恋に落ちる。終戦後、いまだに妻と暮らす富岡に失望したゆき子は別れを決意するが、結局離れることはできず、2人は不倫の関係をずるずると続けていく……という物語。

伊香保温泉で富岡と関係を持つ現地の人妻、おせいを演じた岡田。「私の主演作『芸者小夏』(54)と掛け持ちでしたし、デビューして間もない私にできるかなと思っていましたが、大好きな役」と振り返る。1955年の公開から今年で70年、岡田は当時の貴重な台本を持参し観客に披露した。
撮影当時は20代前半だった岡田。成瀬監督との仕事は「巨匠ですのに、優しくしていただいて緊張せずできた」といい、現場では「普段演技指導をなさらないのですが、私がふたり(高峰と森)を見送った後、家に入る際の戸の締め方が良かったと褒められました。初めて褒めていただいたので、印象に残っています」と述懐する。

主演の高峰については「私が緊張しないように冗談を言ってくださって。後輩という扱いではなく、まるでお友達のようにつきあっていただいた。優しい方でした。現場は明るく楽しかったです」と思い出を語り、女性関係にだらしのない男を演じた森雅之は「森さんは普段明るい方なんです。ああいう役なのでああいう人だと思われるでしょうが、役と違って冗談ばかり言って、本当に楽しい方なんです。親切に教えてくださいました」と、ニヒルな色男役の印象が強い森の、役柄とは異なる人柄を明かす。
今年のカンヌ国際映画祭でこの4Kリマスター版が絶賛され、この日が記念すべき日本での初上映となった。久々に本作を見返したという岡田は、「今見ても退屈しませんし、素晴らしいなと思いました。デビューしたばかりの私があの中に入ってよくやったなと思いました」としみじみ。司会の軽部真一アナウンサーが、深い仲になる岡田が演じたおせいと、森が扮する富岡の視線での演技を絶賛すると、「森さんと自由にやらせていただきました」と成瀬監督の演出ではなく、ふたりの考えだったと述べた。

卒寿を超えたが、現役時代と変わらぬ凛としたたたずまいと、昭和の日本映画界をけん引した大女優ならではのオーラを放つ岡田。「いくつだと思いますか? 70です」とジョークも交えながら、「全く元気です。どこも悪くないし、一生懸命生きております」と笑顔を見せる。健康の秘訣を問われると、「体操、運動はよくしております。スポーツクラブに行って、全身を動かすようにしています。エアロビクスもやっています」とアクティブな一面を明かし、観客を驚かせる。「そして、テレビを見て美味しいものを食べて……」と、穏やかな日常を過ごしていると報告した。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。チケットは公式HPオンラインチケットサイトで発売中。
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