Netflix映画のミサイル防衛システム描写めぐり国防総省と論争
2025年10月30日 14:30

ハリウッド映画による米軍の描写をめぐり、国防総省と映画製作者の間で異例の論争が勃発している。焦点となっているのは、キャスリン・ビグロー監督のNetflix最新作「ハウス・オブ・ダイナマイト」だ。国防総省が「ミサイル防衛システムの描写が不正確」と批判したのに対し、脚本家が真っ向から反論している。
論争の発端は、国防総省が10月16日に発表した異例の内部メモだった。「米国のミサイル迎撃システムは10年以上のテストで100%の精度を記録している」と主張し、映画の描写が実際の能力を過小評価していると批判した。
問題となった「ハウス・オブ・ダイナマイト」は、出所不明のミサイルが突然アメリカに向けて発射される様子を描くポリティカルスリラーだ。シカゴを標的とした核ミサイルが着弾するまでの18分間を、複数の視点から描いている。映画では中間段階のミサイル迎撃システムが失敗し、飛来するミサイルを撃ち落とせないシーンが登場する。ホワイトハウスをはじめとした米国政府は混乱に陥り、タイムリミットが迫る中で対処法をめぐって議論が巻き起こる。
この批判に対し、脚本家のノア・オッペンハイムが米MSNBCの番組「ザ・ウィークエンド」に出演し、反論した。「我々は敬意を持って反論します」と明言したオッペンハイムは、「残念ながら我々のミサイル防衛システムは非常に不完全であり、映画で示したことは正確です」と述べた。
オッペンハイムは、制作段階でビグロー監督と国防総省との間で協議はしなかったことを認めた上で、複数のミサイル防衛専門家に取材したことを強調した。「私はミサイル防衛の専門家ではありません。しかし、多くのミサイル防衛専門家に話を聞きました。彼らは全員、記録に残る形で証言してくれました」
興味深いのは、オッペンハイムが国防総省の関心を歓迎していることだ。「国防総省がこの映画を見て、注目してくれているのは嬉しい。これこそが我々が望んでいた会話です」と語り、ミサイル防衛システムの改善や国民の安全性向上についての議論を促したいと表明した。「もし国防総省がシステムの改善や、我々全員の安全を守るための次のステップについて会話をしたいのであれば、それこそまさに我々が望んでいた会話なのです」
監督のビグローは、「ハート・ロッカー」で女性監督として初めてアカデミー監督賞を受賞し、「ゼロ・ダーク・サーティ」ではアカデミー賞5部門にノミネートされた実力派。「ハウス・オブ・ダイナマイト」は前作「デトロイト」から8年ぶりの新作となる。イドリス・エルバ、レベッカ・ファーガソンを筆頭に、ガブリエル・バッソ、ジャレッド・ハリス、トレイシー・レッツ、アンソニー・ラモス、モーゼス・イングラム、ジョナ・ハウアー=キング、グレタ・リー、ジェイソン・クラークら豪華キャストが集結した。10月24日からNetflixで配信中。
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