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松村北斗「秒速5センチメートル」で垣間見せた、切実で誠実な“姿勢”【インタビュー】

2025年10月7日 11:00

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君の名は。」「すずめの戸締まり」の新海誠監督による2007年公開の劇場アニメーションを、奥山由之監督のメガホンで実写映画化した「秒速5センチメートル」が、10月10日から全国公開となる。主演の遠野貴樹を演じるのは「SixTONES」の松村北斗。彼にとっては本作が映画単独初主演作となるが、「僕自身、何度も見返してきた作品だからこそ、重責を日々感じています」と明かす。だがそれでも本作に挑もうと思った理由とはなんだったのだろうか? 松村に話を聞いた。(取材・文/壬生智裕、写真/間庭裕基)

■「覚悟はあるのかと問いかけられているような気がして…」

原作となったアニメ版「秒速5センチメートル」は、主人公の小中学生時代、高校生時代、会社員時代を3つの短編の連作方式で描いた63分の中編。新海監督が「初期衝動だった」と公言する通り、過去への未練、未来への不安、焦りといった感情を、初期の新海作品ならではの独特のセンチメンタリズムとともに描き出し、それゆえに長きにわたって多くのファンに愛され続けてきた。松村自身、作品に対する思い入れが強かっただけに、実写版への一歩を踏み出すのに勇気が必要となった。

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「企画書を見たら、そこにはあの日の憧れが詰まっていました。それはもう瞬時に『やります』と言いたくなるようなものだったけど、それと同時に僕よりも何倍も作品に対する思いがある人たちがいることは分かっていました。そういう思いが押し寄せてくると、覚悟はあるのかと問いかけられているような気がして、他の作品とはまた種類の違うプレッシャーがありました。それは結局、自分で自分に課したプレッシャーだったのかもしれないんですが、そういった戸惑いがありました。

アニメ版を知らない人にとってはこれがまったく新しい『秒速5センチメートル』となるわけで、そこをちゃんと踏まえてからではないと、あまりにも覚悟が足りないなと思いました。それで一歩、踏みとどまったというか、踏みとどまらざるを得なかったというか。武者震い的に『うわ、怖いぞ』と思ったところはありました」

■34歳の新鋭・奥山由之監督の懐の深さ

だがそうした彼の背中を押してくれたのは、34歳の新鋭・奥山由之監督だった。

「最初に奥山さんとお会いした時に、ちゃんといろいろと説明して、話しあった上で最後に『やる』という言葉を聞きたいからまだ決めなくていい、と言っていただきました。そういう丁寧さから信頼も生まれましたし、考え方もすごく近いものを感じました。僕も本当に未熟で足りないことばかりなので、この人が引っ張っていってくれる現場なら、この作品に飛び込んでみよう、という思いがより強くなった。奥山監督が焦らず、じっくりと寄り添ってくれたことで、どんどんと目の前のことに思いを向けることができました。それが大きかったですね」

画像3(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

実際に撮影に挑むにあたり、主人公の貴樹を演じるために、どのようなアプローチを行ったのだろうか。

「基本は“実写化”という言葉に遜色ないように。何しろ原作にものすごく憧れをもってつくっているチームだったので、原作に沿ってつくっていくという形がありました。とはいえ、それを実際の風景で、実際の人間がやった時には、どうしてもまったく同じものにはならない。だからこそ、憧れだけで同じようにやるというのは、ちょっと違うかもしれないと。それは奥山さんもすごく気をつけていたことでしたし、僕らにも言ってくれていたことでした。

だからアニメ版とクロスさせていったところと、そこから派生していったところのグラデーションは、かなり鮮やかにつけていったかなと思います。それとアニメの場合は声だけの芝居でしたが、実写の場合はそれとはまた違うので。伝わる情報量もかなり変わってくる分、そういう意味での按配の意識はありましたし、そこは奥山さんが本当に細かく演出してくださいましたね」

画像4(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会
■幼少期、高校生、社会人の貴樹をつなげていく上での意識

本作では幼少期の貴樹を上田悠斗、高校生の貴樹を青木柚、そして社会人の貴樹を松村が演じるなど、ひとりの人物を3人で演じ分けている。その上で、過去パートの俳優陣について意識することはあったのだろうか?

「それで言うと、やはり原作が助けになっていて。圧倒的に目指す場所があったというのが強かったですね。それと奥山さんが本当にすごかったんです。幼少期、高校生、社会人と3つのパートに分かれていく中で、その時々の境遇によって性格や、声色など、いろんなことが変わっていくんです。その波の中でも特に、(社会人パートの)貴樹が会社を辞める時が、過去にないくらい感情が失われているところでした。正直、そこが一番貴樹像から離れているなと感じて。

一瞬、『これは3人がつながらないんじゃないかな。やばいな』と思ってたんですけど、映画を観たら3人の貴樹がちゃんとつながったんですよ。それを観た時は本当にビックリして。奥山さんにも『自分でもそんなことになってるとは本当に分からなくて。感動しました』と伝えました。奥山さんは本当に細かく、すべてを見ていてくれましたし、監督としても細部まで神経が届いてる方なんだなというか、本当に信頼できる方だなと思いました」

画像5(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

そんな彼は自分以外のパートをどのように見ていたのだろうか。

「柚くんはもちろん良かったですよね。高校生パートは、原作では『コスモナウト』というタイトルでしたが、そこに思いを馳せた人たちがたくさんいるからこそ、柚くんのプレッシャーも強かったかもしれない。でもそこで柚くんは、また思いを馳せてしまうような人物像を作り上げていましたね。さすがだなと思いましたし、幼少期を演じた(上田)悠斗も本当に素敵でしたね。明里の目の前で喋っている時間の貴樹が、ちょっと信じられないくらいいいなと思って。生き生きもしていたし、その場にある環境もそうですし、会話もキラキラしていたんですよ。見ていて本当に『もうこれだけでいいな』と思えてしまうくらい良かったですね」

■心を打たれた「よし、いい感じだぞ!」

本作のメガホンをとったのは写真家、映像作家として、米津玄師「感電」「KICK BACK」や星野源「創造」のMV、ポカリスエットのCMなどを監督してきた気鋭のクリエイター、奥山由之。昨年11月に公開された初監督作品「アット・ザ・ベンチ」は、自主制作ながら広瀬すず仲野太賀岸井ゆきの岡山天音荒川良々今田美桜森七菜草なぎ剛吉岡里帆神木隆之介ら豪華キャストが集結し、話題を集めた。多くの俳優、クリエイターたちに愛される奥山監督だが、タッグを組んでみてどう思ったのだろうか。

画像6(C)2025「秒速5センチメートル」製作委員会

「撮影の途中で、めっちゃ奥山さんっぽい、と思った瞬間があったんです。ずっと感じていた“奥山さんの良さ”がはっきりわかった瞬間でした。あるシーンを撮っていた時に急に『よし、いい感じだぞ!』と言っていたことがあるんです。現場にいながらそれを思っていて、しかもそれが外に溢れ出ている感じがすごく印象的で。うまく歯車が合わない時間をめんどくさがったりしないし、急いだりもしない。すごく話を聞いてくれる人だなと感じました」

松村によると、奥山監督は相手の意見に耳を傾けることで、ひとつひとつの事案を交通整理し、「今話したことを一回やってみますか」と試行錯誤しながら解きほぐしていったという。そこで「でも今みたいなことだと思うんです。言葉にはできないけど」などといいながら、ひとつずつ最適解を探っていく。まさにクリエイティブな空気が現場に漂っていた。

「でもそれが言葉にできればゴールかというとそれは違うと思うんです。その上で『もう見えました、編集が。だから今のが必要な芝居でした』と言ってくれて。そういう人が発する『よし、いい感じだぞ』という気持ちは、物をつくる上でものすごく大事だなと思いましたね。人によってはなかなか『よし、いい感じだ』と自信を持てないかもしれない。特にこの作品はそうだと思うんです。そんな中でも今、目の前にある自分の才能自体をすごく信頼してあげてるんだろうなということを感じましたね」

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■「やっぱり新海さんが好きなのはそこなんだな」と思い巡らす

過去に「すずめの戸締まり」に声優として参加するなど、新海作品とは縁深い松村。新海監督からは「もっとも信頼する俳優」と全幅の信頼を寄せられているが、彼からはどんな言葉が寄せられたのだろうか。

「試写を一緒に観ましたね。その時にお話しした内容をまとめると、新海さんがコメントとして発表したことなんですが、実はその後にもプライベートでお会いしたんです。そしてその時も同じことを言ってくださったんですけど、その時よりも細かく『あのシーンはすごいですね』といった話をしていただきました。やはりつくり手のひとりということで、作品が不完全なままバトンを渡してしまったことに負い目を感じていたというんですが、あの不完全だったものが、いい形で実写化となり、救われた、ということを言ってくれて。それと『北斗くんで良かった』とも言ってくれたのがうれしかったですね」

劇中では、松村がプラネタリウムのナレーションを担当するシーンが登場する。その声を「切実で誠実な声」と評するひと幕もあったが、新海監督自身、そのシーンがお気に入りだったという。

「あそこはいい声でしたねと言ってくれました。やっぱり新海さんが好きなのはそこなんだなと思って。面白かったですね」

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