レオナルド・ディカプリオが明かす、ポール・トーマス・アンダーソン監督との仕事の醍醐味【インタビュー】
2025年10月1日 14:00

レオナルド・ディカプリオと言えば、マーティン・スコセッシ監督との度重なるコラボレーションで知られるが、ほかにもクリストファー・ノーラン、クエンティン・タランティーノ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと、現代の映画界を代表する気鋭の監督との仕事を優先している。
そんな彼にとって、鬼才ポール・トーマス・アンダーソン監督との仕事は念願だった。実は「ブギーナイツ」のとき、スケジュールの都合で断ったことを「キャリア最大の後悔」と語っているほどで、それ以来、タッグを望んでいたという。そして30年越し、今回ようやく実現となった。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」(10月3日公開)で演じるのは、元革命家でいまは冴えない日々を送る父親ボブ。愛娘を守るため次々と現れる刺客と死闘を繰り広げる、これまでにないクセの強い役柄だ。「ビッグ・リボウスキ」や「狼たちの午後」からインスピレーションを得たという欠陥だらけの役柄に、ハリウッド屈指のトップスターはどうアプローチしたのか?
念願の監督との初コラボレーション、これまでとは違う「だらしないヒーロー」への挑戦、そして娘役のチェイス・インフィニティとの世代を超えた共演まで、主演のレオナルド・ディカプリオが本サイトの取材に応じた。(取材・文/小西未来)

奇妙な言い方だけど、キャラクターの人間性だと思う。信じられないほど欠陥だらけの主人公で、予想外の選択をする。ポールの脚本を読んだ瞬間、最初はこれまで何度も見たことがあるような伝統的なパターンだと思った。でもキャラクターは映画が進むにつれて進化していく。たとえば、ベニチオ(・デル・トロ)が演じるキャラクターが登場するときで、そこからまったく違う展開になる。僕のキャラクターと彼のキャラクターが完全に予想外の方向に向かっていった。
僕が心から愛しているのは、ヒーローになると期待されている人物を演じることだ。きっと過去の革命家時代のスキルを復活させて使い、究極のヒーローになることが期待されている。でも、肝心な合言葉を思い出すことができない、という(笑)。
これはポールが作り上げた、とてつもない欠陥のあるヒーローという見事な設定だ。実際、一緒に映画を作るのは最高だった。一緒に旅路に出て、道すがら発見していく過程は最高だったね。

もちろん。デュードに影響を受けていることを認めなかったら、嘘になるだろう。そしてパチーノが演じた「狼たちの午後」のキャラクターについても、ポールと話した。愛する人を取り戻し、つながり、救わなければならないという、あの狂信性には影響を受けている。
そう、このキャラクターは僕に新しい扉を開いてくれた。最初のほうで描かれる父娘の関係が好きだ。二人は幸せな田舎の村人というわけじゃない。僕が演じるのは娘と完全に断絶した父親だ。世代が違うし、完全に切り離されている。父親として災難ともいえる存在で、そんな彼が娘を救わなくてはならないという、ワイルドな状況に置かれる。これこそがこの脚本の美しさなんだ。

この映画の心臓部はウィラの旅路だということがわかっていた。そこには途方もない重要性がある。つまり、この映画は彼女の演技で成功するかダメになるかが決まるんだ。言うまでもなく、彼女は驚異的な仕事をしてくれたけど、ポールは伝統的なオーディションをしなかった。一緒に夕飯を食べたり、彼女に空手のレッスンをさせる。そして、僕と同じテーブルについて即興をする。こういった相性テストを経て、二人のキャラクター間の世代格差というアイデアが形になっていった。
僕が演じるのは現代世界からあらゆる面で完全に切り離された男で、物語の3分の1のところで、娘と口論しているところから始まる。彼は彼女を理解していないが、彼らにとってはお互いがすべてだ。そしてこの場面での「オーディション」、つまり、ワークショップを通して、僕らはこの二人が何者なのかをしっかりと掴んだと思う。
映画の冒頭で、僕らを小さな小屋で暮らす幸せな父娘のように描かなかったことを、とても気に入っている。二人は意見が真っ向から対立している。父は朝帰りで酔っ払っており、娘が母親のような役割を担っている。父には娘が理解出来ない。また、娘は父に内緒で携帯電話を持っている。そういった詳細はすべて、僕たちが一緒に行ったワークショップから生まれたものなんだ。

みんなが仲間意識を感じることができたのが最高だった。キャスト全員がそう言えると思う。すぐにチームの一員のように感じることができて、一緒に仕事をする気楽さがあった。ポールが現場で生み出す環境は柔軟性や順応性がある。僕らが演じるキャラクターに合わせて方向転換してくれることもある。予想外の方向に向かう主導権を与えてくれたんだ。
脚本家兼監督の場合、どのような作品であるべきか、自分の頭の中に抱いたイメージに固執しがちだ。特に今回のようにポールが20年間も考えてきた映画ではなおさらだ。でも、ワークショップを重ね、ベニチオが登場したことで、予想外の方向に向かった。監督がもともとイメージしていたのとは違う道を歩むことになった。なぜならポールは「この俳優たちを招き、キャラクターを体現するのを待って、流れに身を任せよう」と考えたからだ。
さらに彼が事前に徹底的におこなったロケハンとか、さまざまなプロフェッショナルたちの経験が生かされている。本物の店主や兵士、矯正施設の職員、看護師。そういった人たちとの共同作業は、まるでドキュメンタリーを作っているような感覚だった。なぜならこうしたロケ現場や人々が、この映画がなんについての映画で、僕たちが演じるのはどういう人物なのかを教えてくれたからなんだ。
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