【第82回ベネチア国際映画祭】デル・トロ「フランケンシュタイン」はファンタジーの中に感情的なドラマ パク・チャヌク新作も高評価
2025年9月1日 12:00

ベネチア国際映画祭で開催4日目にあたる8月30日、コンペティションの目玉の1本と目されていたギレルモ・デル・トロの新作「フランケンシュタイン」が披露され、期待に違わぬ高い評価を得た。
原作は言わずと知れた古典ゴシック小説でこれまで何度も映画化されているが、デル・トロ版はおそらく、この「世にも醜い怪物」にもっとも愛を注いだバージョンと言えるだろう。怪物に扮したのは、その甘いマスクでレッドカーペットでも大人気だったジェイコブ・エロルディ。彼の眼差しの魅力は、本作に重要な要素だ。また彼を創造するフランケンシュタイン博士役にオスカー・アイザック、その他クリストフ・ワルツ、ミア・ゴスらが脇を固めた。
ストーリーの大枠は変わらないものの、デル・トロは物語を章に分け、怪物の視点から語るパートにも力を注いでいる。149分の大作は、SFXを駆使して実験室や映像のスケールがバージョンアップしているのはもちろん、ファンタジーのなかにも感情的なドラマが盛り込まれ、デル・トロ作品のなかでは「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)に近い。Netflixの制作だが、来年のアカデミー賞を睨んで、配信前にアメリカで限定劇場公開される予定という。
本作と並んでコンペティション中、高い評価を受けているのが、イ・ビョンホン、ソン・イェジンがパク・チャヌクと組んだ「No Other Choice」。パク・チャヌクが長年あたためていた企画で、工場のオートメーション化により、突然職を失う主人公とその家族の苦難を描く。ドラマ、ユーモア、ヴァイオレンスが混ざったこの監督らしいパワフルな仕上がり。今回20年ぶりにパク・チャヌク組に戻ったビョンホンの、俳優としての成熟ぶりも目を引く。社会的なテーマを秘めながらも、仕上がりはポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」のような、ドラマティック・コメディとして着地している。(佐藤久理子)
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