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「スーパーマン」でついにDCがマーベルのライバルになった理由【ハリウッドコラムvol.365】

2025年7月27日 10:00

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画像1(C) & TM DC (C) 2025 WBEI

ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリストの小西未
来氏が、ハリウッドの最新情報をお届けします。


ジェームズ・ガン監督の「スーパーマン」が、公開からわずか2週間で世界累計興収4億ドルを突破した。本作は、彼とピーター・サフランがトップを務めるDC スタジオにとって初の大作であり、期待以上のスタートを切ったことになる。

スーパーマン」といえば、世界中の誰もが知るIP(知的財産)だ。クリストファー・リーブ版はスーパーヒーロー映画の古典として君臨し続けている(ちなみに、マーベルのケビン・ファイギ社長も「スーパーマン」を理想とコメントしている)。その後、ブランドン・ラウスヘンリー・カビル版でリブートが試みられたが、ロバート・ダウニー・Jr.の「アイアンマン」のような圧倒的な人気を獲得するには至らなかった。

等身大の高校生ゆえに共感しやすい「スパイダーマン」や偏見や差別といった社会問題を内包する「X-MEN」といったより現実的なヒーローと比較して、現代の観客にはアピールしづらいという指摘もあった。

画像2(C) & TM DC (C) 2025 WBEI

しかし、ジェームズ・ガン監督はキャラクターの根源的な魅力を損なうことなく、「スーパーマン」をアップデートさせることに成功した。「強すぎてスリルに欠ける」という従来の問題を解決し――なにしろ、冒頭でスーパーマンが半殺しの目に遭うのだ――、お人好しすぎる究極の変わり者として、愛おしく共感しやすいキャラクターに昇華させた。分断と虚偽と利己主義が渦巻く現代において、スーパーマンの徹底した「善良さ」は逆説的なまでに新鮮に感じられる。皮肉や計算を知らず、ただ純粋に他者を救おうとする姿勢は、もはや時代遅れではなく、むしろ今この時代だからこそ求められる勇気ある選択として映る。ロールモデルを見つけづらいこの世の中で、スーパーマンはあらためてその価値を提示しているのだ。

そればかりか、ガン監督は本作のなかで今後のDC映画を担っていく複数のキャラクターたちを自然な形で紹介している。グリーンランタンのガイ・ガードナーやホークガール、ミスター・テリフィックなど個性的なキャラクターが登場する。多少詰め込みすぎなきらいがあるものの、シリーズ化を狙って失敗する大作があとを絶たないなかで、新シリーズを立ち上げるばかりか、新たなユニバースまで構築するというとてつもなく難易度の高い偉業をやってのけたのだ。

画像3(C) & TM DC (C) 2025 WBEI

以前のDCはこうではなかった。

マーベル・スタジオは2008年の「アイアンマン」を皮切りにスーパーヒーロー映画ブームを牽引し、2012年の「アベンジャーズ」でその頂点に達した。これを目の当たりにしたワーナーが焦らないはずがない。傘下にDCコミックスを抱え、原作には事欠かない。スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンといった看板キャラクターは、マーベルのどのヒーローにも引けを取らない知名度を誇っていた。

「ならば、こちらもスーパーヒーロー映画を作ろう。それも、単発ではなく、ユニバースを構築して対抗しよう」——そんな野心のもと、白羽の矢が立ったのが「300」で独特の映像美を見せつけたザック・スナイダー監督だった。2013年の「マン・オブ・スティール」を皮切りに、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)構想がスタートする。「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」「スーサイド・スクワッド」「ワンダーウーマン」などが次々と製作されていった。

当初はうまくいっているように見えたが、マーベル作品との批評・興行の差は歴然だった。マーベルにはケビン・ファイギという全体を統括するプロデューサーがいて、一貫したビジョンのもとで作品群を管理していた。一方のDCは統制を欠いていた。ザック・スナイダーは卓越した映像センスを持つ監督だったが、ストーリーよりも視覚的インパクトを重視する作風だった。明確な統括者不在のまま、複数の監督やプロデューサーがそれぞれの思惑で作品を手がけ、結果として方向性の定まらないユニバースが形成されてしまった。

これはルーカスフィルムを買収したディズニーが新「スター・ウォーズ」三部作やスピンオフで犯した間違いと酷似していた。公開日ありきで、脚本が未完成のまま撮影に入り、各監督が前作の設定を無視する事態まで発生した。当然、作品の質も低下し、ファンの支持は次第に離れていった。

この迷走に区切りをつけたのが、2022年のディスカバリーによるワーナー買収という大きな体制変更だった。そして、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで手腕を証明したガン監督と、長年彼のプロデューサーを務めるピーター・サフランに全権が託されることになったのだ。

画像4(C) & TM DC (C) 2025 WBEI

ガン監督の手法は前任者たちとは根本的に異なっている。監督として「スーパーマン」を手がけるだけでなく、すべてのプロジェクトのゴーサインを出す立場にありながら、決して公開日に縛られることはない。当初の予定は立てるが、脚本の仕上がり具合によって予定を柔軟に変更する。たとえば、「スーパーガール」はアナ・ノゲイラによる脚本の素晴らしさゆえに、第2弾としての2026年公開が決まった。監督・脚本家が決まっていたプロジェクトでも、品質基準に達しなければ製作中止を厭わない姿勢は、まさに「脚本ファースト」の体現である。ガン監督はマーベルでケビン・ファイギのもとで映画作りを学んだプロデューサーであるばかりか、ハートのある映画作りを忘れない映画監督でもある。そんな彼が率いることで、ついにDCはマーベルの真のライバルになることができたのだ。

もっともガン監督のファンとしては、彼の才能が壮大なユニバース構築に割かれてしまっているのがもったいなく感じる。彼の真骨頂は、憎めない変わり者を笑いと悲哀で描く「ピースメーカー」のような作品にあるのだから。

執筆者紹介

小西未来 (こにし・みらい)

X(Twitter)

1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi


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