松坂桃李、寺尾聰と親子役での共演は「夢のような時間」【「父と僕の終わらない歌」完成披露試写会】

本作は、若き日に諦めたレコードデビューの夢をかなえようとするアルツハイマー型認知症の男性と、彼を支える家族の姿を描いたヒューマンドラマ。2016年にイギリスで1本の動画をきっかけに80歳にしてCDデビューを果たした男性の奇跡の実話をもとに、舞台を日本に置き換えて映画化された。

この日のステージ装飾は作品の舞台である神奈川県・横須賀市の爽やかな海岸をイメージしたもの。

ステージに立った寺尾は「いよいよスタートです。みんなよく“心をこめてつくった映画です”と言うんですけど、われわれは本当に心をこめてつくりました。特にこの映画はチームワークが良くて、こんなにすてきな仲間たちと一緒に映画をつくれたのはこの上ない喜びです」とあいさつすると、石倉も「イエーイ！」と大喜び。続く松坂も「寺尾さんがおっしゃる通り、チームワークよく、愛情をこめてつくりました、皆さんの感想を広めて、もっと多くの方に広めていただけたら」と呼びかけた。

寺尾にとっては、2009年の「さまよう刃」以来16年ぶり主演作となる本作。松坂桃李は「この作品が扱っているテーマがひとごとではないなと思いましたし、老いとか病気というのは誰にでもやってくるものだと思いましたが、それをこの親子が軽やかに受け止めて。前向きに、そしていろんな可能性を秘めながら希望につなげていく親子の姿に心を打たれて。参加する意義を感じましたし、何より寺尾さんとご一緒させていただけるのであれば、やらせていただきたいです、と言いました。製作サイドからも『今、寺尾さんにもお話を出しているところなので』ということで、（祈るようなポーズで）『どうか寺尾さん、よろしくお願いします！』という思いを込めながらずっと待ってました」と述懐。

一方の寺尾は「オファーを受けた時に、シナリオを読む前に最初に尋ねるのが『主演はどなたですか』ということ。どなたが中心で、どなたの映画になるのか。わたしはいつもそうしているんですが『松坂桃李さんです』と聞いて、だったら前向きに考えようかなと思いました」と切り出すと、「やはり誰とでも仕事をしたいわけでなくて。歳を重ねると疲れもだんだん多くなってくるので、できるだけ楽しい、芝居をしてて、とてもいい気持ちになれる俳優さんと一緒に仕事をしたいと思うんです」とキッパリとコメント。

さらに両隣にいる松坂桃李、そして松坂慶子らの肩に手をやり、「松坂桃李と親子ができる。そして松坂慶子さんですよ！」と笑顔を見せて会場を沸かせると、「たとえば歌手で言うと、歌がうまいと言われている人を必ずしも好きだとは限らない。芝居で向かい合った時に、自分がナチュラルにこの役を演じられるか。自然にこの役に入れる相手。それはどんな名優であっても、自分と合うとは限らない。それは好き嫌いということかもしれません。自分が出会った彼ら、何度も一緒に仕事をした、というわけではありませんが、刺さるものがあったということ。わたしが感じるものを持っている人、そういう人と一緒に仕事をしたいと。プロデューサーにわがままを言わせてもらって。最高の俳優たちとこの作品をつくれたことをうれしく思います」とせつせつと語る。

それを聞いた松坂桃李も「もったいないお言葉です」としみじみ。「僕は何年か前に、寺尾さんとの作品に出させていただくタイミングがあったんですが、肺炎を患ってしまって。医者の方からも止められたんですが、なんとか無理を言って。1日だったらいいですよと、言っていただいて。参加したということがありました。それが『軍師官兵衛』という大河ドラマだったんですけど、いつかちゃんとご一緒したいという思いがありまして。それで今回、親子役でご一緒できたのが本当に夢のような時間でした」と語ると、寺尾も「わたしの方こそ」と笑顔で返答。

そんなふたりを笑顔で見守っていた松坂慶子は「わたしは寺尾さんの映画を観るたびにいいな、いいなと。松坂桃李さんの映画を観るたびにいいな、いいなと思っていたものですから、ご一緒できると伺って『ぜひわたしも出演させてください！』と言いました」とはじけるような笑顔でコメント。そんなふたりの姿に寺尾も「いい家族だね」と満足げな表情だった。

映画「父と僕の終わらない歌」は5月23日から全国公開。