宮本信子、のんの成長に目を細める「シャイな子が色々な苦労をして…」
2025年4月18日 22:45

特別企画「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K 映画祭」内のプログラム「スーパーの女」が4月18日、東京・TOHOシネマズ 日比谷で上映され、主演の宮本信子が第16回伊丹十三賞を受賞した俳優・アーティスト・映画監督ののんとともに登壇した。
独自のテーマを鋭い切り口で描いてきた伊丹映画だが、現在も動画配信サービスなどでは観ることができず、劇場での上映機会も限られていることから、今回の映画祭は貴重な場となっている。今回上映された「スーパーの女」は、激安店の出現により経営危機に追られたスーパーの専務・五郎が、幼なじみのスーパー好きの主婦・花子の協力を得て経営を立て直すさまを描いたコメディ。


のんは伊丹映画はすべて好きだが、その中でも「スーパーの女」は「タンポポ」「マルサの女」「ミンボーの女」と並び大好きな作品だという。「めちゃくちゃ面白いなと思っていましたけど、あらためて観ても興奮しました。花子と五郎の掛けあいが本当に楽しくて。ウジウジしている五郎の空気を、花子がパーンと切り裂いていくのが気持ちよかった」とほほ笑んだ。
宮本も「津川さんとは『お葬式』の前から何度もご一緒させていただいていたんですが、その中でもふたりで芝居をしていていいなと思っていたのが『あげまん』でした。監督には本当にふたりのいい時の状態を撮っていただいて。2人で良かったなと自画自賛していましたが、『スーパーの女』では趣を変えて小学校の同級生ですから。これが本当に楽しくて。津川さんとは漫才のボケとツッコミのようにテンポよく、ワンカットの長いシーンで撮るんです。伊丹監督は俳優出身なので、俳優同士の間が面白いと言っていて。『スーパーの女』では、ほとんどワンシーンワンカットというのが続いておりました。その時の監督はモニターを見ながら、あごをなでながら、ニヤニヤしていたのを覚えております」と振り返った。

伊丹映画の中でやってみたい役について、「宮本さんを前におこがましいですが『スーパーの女』の花子はやってみたい」と語ったのん。宮本も「伊丹作品は10作品ありますけど、のんちゃんが今の年齢で、この感じでできる、やりたいと思うのが『スーパーの女』だというのはすごく分かります」と深くうなずいた。
ふたりが朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で共演してから10年以上の時がたっている。「『あまちゃん』の時は『ありがとうございます』『がんばります』とふたことみことくらいしか言えなかったシャイな子が色々な苦労をして成長して。この年齢になって自分の意見が言えるような、すばらしい女性になったと思ってますけど、これからも磨いてほしいと思います」と成長ぶりに目を細めた宮本。そして改めて「あの時は楽しかったわね」とほほ笑んだ宮本は「本当に初々しくてかわいくて、一途で。今もその良さは失われていないけど、キラキラしていて素敵でした」と述懐。のんも「ありがとうございます」と笑顔で返した。

また伊丹映画の現場は非常に穏やかだったのでは、という司会者からの指摘に、「怒鳴ったりはしなかったですが、緊張感はありました。もちろんそれはないといけないわけですが、カメラマンの前田米造さんが時々ジョークを言ったりするわけです。そして監督もユーモアの人ですから。粛々と進んでいくという感じでした」と振り返った宮本。基本的にはベテランにも若手にもやさしく接していたという伊丹監督だが、「でも監督はわたしには厳しかった。もっとやったらもっと出るだろうということで何度も何度も。それとセリフを完璧に覚えていないと、矢のように注文が飛んでくる。そういうところで鍛えられたと思います」と付け加えた。
そして改めて伊丹映画の魅力について、「めちゃくちゃカッコいいなと思います。笑えるシーンもあったり、社会的なシーンもったりする中で、言葉の掛けあいだったり、映像のつくり方だったりもしびれるし。その中で宮本さんが主演として演じていらっしゃる姿が、すごく大胆だったり、快活だったり、グングン力強い女性をされている。そこに粋、カッコ良さを感じますし、しびれます」と語ったのんは、客席に向かって「どうですか?」と尋ねると、場内は拍手喝さいだった。

大勢の観客で埋まった会場を見渡した宮本は「40年も昔の映画なのに、こうしてたくさんのお客さまに観ていただいて、そのことに感謝しています。しかも満席だということで。伊丹さんは赤字が嫌いでね。わたしも嫌いですけど、でも自分の身を削ってつくったものを、こんなに年数がたっても観ていただいてありがたいなと。皆さんの前に立ってそう思っています」としみじみ語ると、会場からは大きな拍手が鳴り響いた。
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