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【「HERE 時を越えて」評論】映像のイノベーター、ゼメキスの揺るぎない自信と至福を感じる最新作

2025年4月6日 09:00

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「HERE 時を越えて」
「HERE 時を越えて」
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物語の舞台になるアメリカ、ジョージア州にある邸宅のリビングルーム。そこにセットされた定点カメラが、同じ場所で起きた出来事や風景を断片的に映し出していく。背景は原始時代から現代まで目まぐるしく移り変わるけれど、視点は不動というフォーマットは、まるで、同じ場所で撮った動く歴史写真集を見るかのよう。映像のイノベーターと呼ばれて久しいロバート・ゼメキスの最新作である。

ストーリーの大部分は1945年にこの家を購入したヤング一家が、リビングルームでどう過ごしたかに割かれる。ヤング家の二代目であるリチャードを演じるのがトム・ハンクスで、その妻、ヴァネッサはロビン・ライトだ。「フォレスト・ガンプ 一期一会」(1994)のトリオが30年ぶりに再集結したことが話題だが、ハンクスもライトも、この最新作では定点カメラの枠内で、VFXスタジオ、Metaphysicが開発した生成AIツールによって若返ったり、歳を取ったりして現れる。他の俳優たちも同じ方法でディエイジングされている。昨今、生成AIの導入が問題視されるハリウッドの潮流に逆らうような、これまたゼメキスの大胆なチャレンジだと言える。

短編小説家でもあるリチャード・マグワイアが2014年に発表した同名のグラフィックノベルにヒントを得たゼメキスが、定点カメラ方式に拘った理由は、家こそが家族の歴史と記憶の原点だと捉えたからだろう。確かに、誰しもリビングには大切な思い出があるだろうし、カメラが一歩も外に出ない分、見えないところで流れた時間の意味や重みが想像できるのは、省略がもたらす効果だと言えなくもない。

この映画的ロジックを否定したかのような手法を退屈と取るか、面白いと取るかは、人それぞれだろう。でも、これまでも「ロジャー・ラビット」(1988)で実写映像の手書きアニメへの挿入、「フォレスト・ガンプ」で実写映像とCGの合成、「ポーラー・エクスプレス」(2004年)や「ベオウルフ」(2007)でのモーションキャプチャーの導入と、常に時代を先取りしてきたゼメキスの最新作として相応しいことは認めないわけにはいかない。

あまり語られないことだが、「永遠に美しく」(1992)でゴールディ・ホーンが振り下ろしたシャベルで頭を殴られたメリル・ストリープが首を一旦引き上げて元に戻すシーンほかで、コンピュータ生成による皮膚テクスチャが導入されたのは、映画史上初の試み。個人的には、「キャストアウェイ」(2000)で主演のトム・ハンクスが減量を完了する合間に作った「ホワット・ライズ・ビニース」(2000)で使った、顔が微妙に似ているミシェル・ファイファーとスーパーモデル、アンバー・ヴァレッタの顔が一瞬入れ替わるシーンは怖すぎて震えた。

つまり、映像のイノベーターとは映画監督としての揺るぎない信念の現れ。誰にどう言われようと強固な姿勢を崩さないロバート・ゼメキスに、アーティストとしての至福を感じる最新の問題作なのだった。

(清藤秀人)

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