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「或る終焉」「ニューオーダー」見る者の心をえぐる鬼才ミシェル・フランコ 「あの歌を憶えている」で到達した新境地とは?

2025年2月7日 14:00

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登場人物の心の傷を単に掘り下げ、癒すのではなく、反対にトラウマを次から次へと追加し…
登場人物の心の傷を単に掘り下げ、癒すのではなく、反対にトラウマを次から次へと追加し…
(C)DONDE QUEMA EL SOL S.A.P.I. DE C.V. 2023

ジェシカ・チャステインの主演作「あの歌を憶えている」でメガホンをとった、メキシコの鬼才ミシェル・フランコ。この記事では、「或る終焉」「ニューオーダー」などで知られるフランコ監督のフィルモグラフィを振り返りながら、本作でたどり着いた新境地に迫る。

本作は、米ニューヨーク・ブルックリンを舞台に、記憶に翻ろうされる不器用なふたりが出会い、新たな人生と希望を見つけていくヒューマンドラマ。真実を愛で包み込む奥深い視線で、心に傷を抱えた男女が戸惑いながらも寄り添い、過去や人生と向き合う姿を静かに優しく描き出す。

物語の中心となるのは、ソーシャルワーカーとして働き、13歳の娘と暮らすシルヴィア(チャステイン)と、若年性認知症による記憶障がいを抱えるソール(ピーター・サースガード)。ふたりはある日、高校の同窓会で出会う。家族に頼まれ、ソールの面倒を見るようになったシルヴィアは、彼の穏やかで優しい人柄と、抗えない運命を与えられた悲しみに触れるなかで、少しずつ惹かれていく。しかし、彼女もまた過去のある傷を胸に秘めていた。

人間の内面を真正面から、時に観客を不安に陥れるほど暴力的な描写で見つめてきたフランコ監督。母親を失い、光を失くした父親と娘の間にある暴力性を炙り出した「父の秘密」をはじめ、終末医療の看護師の喪失や葛藤を通して、死に対する認識や距離を描いた「或る終焉」、緊張感に満ちた母娘の関係を通して、自己犠牲も厭わない献身と愛に満ちた母性という神話をこなごなに打ち砕いた「母という名の女」、そして広がり続ける経済格差が引き起こす社会秩序の崩壊に、目を背けたくなるほどの“最悪”のリアリティで迫った「ニューオーダー」などで知られる。

フランコ監督は、「或る終焉」で第68回カンヌ国際映画祭の脚本賞、「母という名の女」で第70回カンヌ「ある視点部門」の審査員賞、「ニューオーダー」で第77回ベネチア国際映画祭の銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞するなど、高い評価を獲得してきた。母国メキシコを舞台に、過酷な状況や不条理に直面した人間の抱えるトラウマや孤独など、複雑な闇をテーマとし、動機や目的の分からぬ描写で観客を不安の極地に陥れながらも、厳しくも冷静な視点で撮り続けている。

そんなフランコ監督の新境地ともいえる本作では、忘れたい記憶を抱え続けている女と、忘れたくない記憶を失ってしまう男が出会い、新たな人生を模索していく。一見、「本当にフランコ監督作なのか?」と感じる、これまでになかったテーマ設定だ。しかしフランコ監督は、ふたりの心の傷を単に掘り下げ、癒すのではなく、反対にトラウマを次から次へと追加。性的暴行、ストーカー行為、アルコール依存症、娘を一切信じない母親など、多岐にわたる要素を描いている。

もちろん、フランコ監督の撮影手腕は健在。無駄なセリフやフラッシュバックなどでは説明せず、表情だけで観客に登場人物の思いを伝えていき、ラストシーンは見る者に大きな余韻を残す。人間の残酷さと寛大さ、温かさと辛さ、相反する面を含み、観客に解釈を委ねる物語に仕上がっている。

あの歌を憶えている」は2月21日に、東京の新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で公開。

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