テレンス・マリック「天国の日々」4Kレストア版、4月4日から公開
2025年1月15日 09:00
第32回カンヌ国際映画祭で監督賞、さらに第51回アカデミー賞では撮影賞を受賞するなど、公開当初から世界中で高く評価され続けている本作は、20世紀初頭のテキサスの壮大な農場を舞台に、人間の弱さともろさを美しい映像で描く。1983年に劇場公開された。
「バッドランズ(地獄の逃避行)」(73)で初メガホンをとり、「シン・レッド・ライン」(98)や「ツリー・オブ・ライフ」(11)などで数々の賞を受賞し続けているマリック監督は、この作品に全てを注ぎ、次回作の「シン・レッド・ライン」までの20年間、1本も映画を撮らなかったことは、長年にわたり映画界の伝説として語られている。
本編の夕暮れ時のシーンは全て、“マジック・アワー”と呼ばれる、1日にわずか20分しかない日没間近の柔らかい光の中で撮られ、本編のほとんどをこの時間に費やすという極めて異例の方法で撮影された。手がけたのはエリック・ロメール監督作品に多数参画し、フランソワ・トリュフォーらヌーベバーグの作品でも撮影監督をつとめたネストール・アルメンドロス。この2人の狙い通り、絵画のような非常に美しい画作りに成功したが、その極度なこだわりのため、スケジュールや予算は大幅に超過。プロデューサーのバート・シュナイダーは自宅を抵当に入れたという。アルメンドロスは、次回作が控えていたため、ハスケル・ウェクスラーに撮影監督を引き継ぎ完成させた執念の一作となった。
本作は、マリック監督監修のもと4Kレストア化された。ここ数年の間で劇場公開が急増した4Kと、これまでの2K素材の違いについて、国立映画アーカイブの主任研究員、岡田秀則氏は「画面の肌理が違う。デジタルスキャンによる解像度は、4Kでようやく化学分子からなる35ミリフィルムのレベルに達する」と言及。加えて、従来のフィルム映写機とDCP(現在主に使用されるデジタル上映素材)の違いについては「劇場の暗い環境で鑑賞することで、グラデーションの違いがよく分かる」と解説している。
画面の中にある繊細さを遺憾なく発揮し、逆光を巧みに扱うことで “ヨーロッパの光”をアメリカ映画に持ち込んだとされるアルメンドロス。本作の魅力が一番発揮されるのは、設備が整った劇場のみだ。新しく生まれ変わった「天国の日々」を、ぜひ劇場で体感して欲しい。
4月4日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。
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