木村拓哉主演作「グランメゾン・パリ」は大ヒットするのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2024年12月27日 09:00

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。
また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。
更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)
年末の2024年12月30日(月)から木村拓哉主演作「グランメゾン・パリ」が公開されます。
公開日が年内最終の週末12月27日(金)からではなく、12月30日(月)からというのは割と珍しい設定のように思いますが、これは今後「TBS映画」では常套手段となるのかもしれません。何故なら、3年前(=2021年)に公開された松本潤主演の「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」も“12月30日(木)公開”となっていたからです。
この2作品の共通点は、共にTBS系列の「日曜劇場」(21:00〜21:54)の連ドラ作品ということ。そして、この枠は「高視聴率を叩き出せる枠」として定着していて、制作費を通常よりもかけられ、それが作品のクオリティーを高めることにもつながっています。その結果、この枠から大ヒット映画も誕生する流れが出ている。まさに「グランメゾン・パリ」もその1本になりそうなのです。
(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会この流れのきっかけとなっている作品が、2016年4月から6月まで放送された「99.9 刑事専門弁護士」。好評につき2018年1月から3月まで「SEASON II」も放送されています。
そして、この作品の劇場版「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」の公開日を12月30日としたのです。年末に公開日を持ってこられるのはテレビ局が少なからず関係していると言えるでしょう。年末のお休み期間にテレビジャックを行うことで、連ドラの再放送に加えて、映画へと続く「スペシャルドラマ」を公開前日の12月29日に放送して空気を醸成していきました。
また、スペシャルドラマの前週は「日曜劇場」の通常枠の最終回が放送されていたりと「日曜劇場」が盛り上がりを見せることが多く、「日曜劇場」を通して効果的にプロモーションを行うこともできるのです。
これらが上手くハマり、「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」は興行収入30.16億円を記録しました。
「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」の配給会社は松竹。一方、「グランメゾン・パリ」は東宝、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントに変わりましたが、TBS主導の映画として同様の成功パターンが踏襲されているのです。
(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会
(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会では、「グランメゾン・パリ」の興行収入はどのくらい期待できるのでしょうか?
まず、本作を見る前は、私は作品の出来にとても興味がありました。というのも、本作のメガホンをとったのは塚原あゆ子監督で、これまでの「コーヒーが冷めないうちに」「わたしの幸せな結婚」「ラストマイル」とは毛色が異なる作品だからです。
果たしてどのように料理するのかと見てみましたが、期待通りの作品でした。やはり「テレビ局映画の強さ」を大きく感じました。
かつての映画監督は映画会社が育てる時代がありましたが、それが“テレビ局が育てる時代”へと引き継がれていきます。テレビの連ドラは、それこそ作品の題材はクール毎に異なるので、担当ディレクターは“オールジャンル”で鍛え上げられるような仕組みがあるのです。まさに本作のような「料理映画」でも、熟練の腕前を見事に披露していました。
以上を踏まえて「グランメゾン・パリ」の興行収入について考えてみます。
まずは視聴率では、「99.9 刑事専門弁護士」の「SEASON I」の平均視聴率は17.2%となっています。(ビデオリサーチ調べ。関東地区・世帯、以下同)
「SEASON II」の平均視聴率は17.6%となっています。
また、「映画公開前夜祭」は13.9%となっています。
(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会一方の本作のテレビドラマ版の「グランメゾン東京」は、2019年10月から12月まで放送されて平均視聴率は12.9%。
現時点での視聴率のデータでは、「グランメゾン・パリ」は「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」の7割強ということで興行収入22億円程度ということになります。
ただ、「グランメゾン・パリ」は舞台がパリだったり、日本の映画としてはかなり高額な制作費となっています。
そして、そのこだわりが効いて作品のクオリティーはかなり高くなっているので「映画向きな作品」とも言えるのです。
そのため、「グランメゾン・パリ」は「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」と同等の興行収入30億円は十分に視野に入ります。
なお、本作はスペシャルドラマとセットで制作されているので映画だけの制作費は算出しにくいのですが、6、7億円程度の制作費だと思われます。
そうすると、興行収入22億円あたりで劇場公開だけでリクープ可能なので、まずは22億円が第1関門、30億円が第2関門ということになりそうです。
(C)2024映画「グランメゾン・パリ」製作委員会本作で注目すべきは「大人の上質な作品」というイメージなので、どれだけ大人の映画ファンを呼び込めるかで興行収入が大きく変化しそうな点です。
果たして本作のように出来の良い作品がどのくらいまで支持を得て「料理映画」のポテンシャルを引き上げられるのか――大いに注目したいと思います!
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
KILL 超覚醒
【面白すぎてヤバい映画】世界中の観客が熱狂・発狂し、配給会社が争奪戦を繰り広げた“超刺激作”
提供:松竹
ズートピア2
【質問:すみません、今年の冬、どの映画を観たらいいですか?】答え:私は「ズートピア2」を絶対に観ますね!!
提供:ディズニー
人生にぶっ刺さる一本
人生に迷ったとき、この映画が“効く”だろう。すべての瞬間が魂に突き刺さる体験が待っている
提供:ディズニー
ブルーボーイ事件
【日本で実際に起きた“衝撃事件”を映画化】鑑賞後、あなたは“幸せ”の本当の意味を知る――
提供:KDDI
プレデター バッドランド
【ヤバすぎる世界へようこそ】“最弱”ד下半身を失ったアンドロイド”=非常識なまでの“面白さと感動”
提供:ディズニー
てっぺんの向こうにあなたがいる
【世界が絶賛の日本映画、ついに公開】“胸に響く感動”に賞賛続々…きっとあなたの“大切な1本”になる
提供:キノフィルムズ