マーク・フォースター監督、一貫して描きたいのは「人間を信じる気持ち」【「ホワイトバード はじまりのワンダー」インタビュー】
2024年12月5日 17:00

2017年製作の映画「ワンダー 君は太陽」の原作者R・J・パラシオが、劇中に登場したいじめっ子に焦点を当て、さらなる物語を描いた小説「ホワイトバード」を、マーク・フォースター監督が映画実写化した「ホワイトバード はじまりのワンダー」(12月6日公開)。フォースター監督と言えば、作家性の強い映画から、エンターテインメントまで多彩なジャンルで“魅せる”作品を撮り続けている。今回この題材を選んだわけとは――11年ぶりに来日したフォースター監督に話を聞いた。(取材・文・撮影:磯部正和)
「ワンダー 君は太陽」で、いじめによって学校を退学になってしまったジュリアン(ブライス・ガイザー)。自分の居場所を失い失意のなかにあるジュリアンを心配し、パリから訪れた祖母サラ(ヘレン・ミレン)は、ジュリアンに自身の少女時代、ナチス占領下のフランスで経験した壮絶な人生を話し始める。
(C)2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.フォースター監督と言えば、「チョコレート」「プーと大人になった僕」「007 慰めの報酬」「ワールド・ウォーZ」など、非常に多岐に渡る作品で監督を務めているが、本作を手掛けようと思った理由について「元々自分はラブストーリーを描きたいと思っていたんです。特に若者のラブストーリーに興味があったんです」と最初のきっかけを述べる。
確かに本作は、ナチス軍によって迫害を受けるユダヤ人の少女・サラが過酷な状況下で、同じクラスのいじめられっ子である少年・ジュリアンに助けられ、命の危険があるなか、懸命に絆を深めていく姿が描かれる、ピュアなラブストーリーでもある。
(C)2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.フォースター監督は「そのラブストーリーのなかでも、人間らしさや優しさ、さらに優しさからくる勇気が心にしみました」と原作の魅力について述べると、「そういったものを表現したいと思ったんです。さらに自分にも祖母がいたのですが、当時あまりちゃんと話に耳を傾けていなかった。でも今になって、祖母から孫へのいろいろな教えというのは、すごく人間形成に大切なものなんだろうなと感じたんです」と映画化した理由を語る。
「ワンダー 君は太陽」に出てくる登場人物が導線になっているものの、作風はまったく違う。どちらかというと、本作ではシビアな戦火が描かれている。
フォースター監督は「戦争というものは、ものすごく残虐であり、ひどいことが行われます。そんな状況下でも、人間には優しさもあり、それが救いになる。戦争というのは一つのきっかけであり、そこから人が情熱を持って生きることで、窮地を救うことができる。そんな思いを感じ取ってもらえるような作品にしたかったんです」と、あくまで人間に対する期待という部分を描きたかったという。

フォースター監督が思い描く純粋なラブストーリーを体現すべく起用されたのが、若きサラを演じたアリエラ・グレイザーと、サラを助ける同級生“ジュリアン”役のオーランド・シュワートだ。
「ジュリアンは最初、障害を持っているため自信がないんです。じっと下を向いていて、人の視線を避けている。そんななか、サラと出会って二人の愛がだんだん強くなっていくと、徐々に変化していく。そのさりげなく変わっていく姿を表現してほしかったのですが、素晴らしかった。気がつくと彼の演技に引き込まれていくんです。オーランドはものすごく才能のある俳優だと感じました」。
(C)2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.若手の瑞々しい演技が見られる一方で、現在のサラを演じたヘレン・ミレンの圧倒的な存在感も作品を彩る。フォースター監督は「若い役者さんたちに大事なのは、リハーサルの時間をたっぷりとること。そこで丁寧に何を求められているのかを伝えることが大切なのですが、ヘレンのような大女優は多くを語る必要がないんです。もちろん演出として『こうしてほしい』とは伝えますが、一言で理解してくれます」と段取りを説明するだけで、役に対する演出はほぼしていないという。
フォースター監督が一番好きだったシーンが、ヘレン演じるサラがミュージアムでスピーチをするシーンだったそう。「話し方や間の取り方など、とにかく聞いている人を魅了する雰囲気を瞬時に作り上げてくれました。本当に監督として多くを語る必要がないんです」。
フォースター監督にとって、作品選びのポリシーとはどういったものなのだろうか――。
「自分の映画というのは、マジックリアリズムという表現をしているのですが、人間を信じる気持ちというのを大事にしているんです」と語ると、「この作品は、『ネバーランド』などに近いジャンルなのかもしれません。ほかにもアクション作品も数多く撮っていますが、どんな作品でも人間個人としてのキャラクターをしっかり描くことは意識しています。そこが僕にとっての大切なポイントです」と、どんなジャンルであっても、根底には登場人物たちの人間を信じ、愛する力を描きたいという思いがあるという。

フォースター監督自身、来日は「ワールド・ウォーZ」以来、11年ぶりとなった。東京国際映画祭でも本作は上映され、ファンの前でスピーチした。「本来なら、『プーと大人になった僕』でも、『オットーという男』でも来日したかったんです」と笑顔で語ったフォースター監督は「日本は食べ物も文化もファッションも大好き。いつも僕の映画を温かい気持ちで観てくださる。本当に感謝しかありません」と語っていた。
最後に、フォースター監督は「とにかく大きなスクリーンで観て欲しいです。そして美しい映像を十分堪能してください」と映画を楽しみにしているファンにメッセージを送った。
(C)2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.
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