良き父のもう一つの顔が実は… ジョシュ・ハートネットが「トラップ」出演を決めた理由「危険なものを表現したい、演じたい」
2024年10月9日 10:00
「シックス・センス」「オールド」で知られるM・ナイト・シャマラン監督の最新作「トラップ」(10月25日公開)。「パール・ハーバー」「ブラックホーク・ダウン」などで知られ、本作の主演を務めるジョシュ・ハートネットのインタビューが公開され、出演を決めた理由やシャマラン監督とのタッグについて語っている。
溺愛する娘と世界的アーティストのアリーナライブを楽しむ家族思いの父・クーパーのもうひとつの顔……それは、指名手配中のサイコな切り裂き魔だった。そして、この巨大ライブこそ、彼を捕まえるため仕組まれた前代未聞の“罠(トラップ)”。トラップに隠された衝撃の真実とは? 予測不能の騙し合いサスペンスが描かれていく。
ハートネットが演じるのは、良き父とサイコな切り裂き魔という二つの顔を持つクーパー。シャマラン監督は「クーパーのような特別な役を演じるには、すべてを受け入れ、リスクを取って全力で勝負する準備ができている俳優が必要だった」と指摘する。
クーパーを演じることは俳優にとってもリスキーなこと。ハートネットは「最初に脚本を読んだのは監督と会う直前で、彼のアプローチを事前に、ある程度は理解していた。脚本には、壮大で、奇想天外で、珍しい要素がたくさんあり、中にはとてもダークな部分もある」と、役柄だけではなく巨大ライブ会場に仕掛けられた罠と複雑な要素が盛り込まれた脚本に驚いたそう。「でも、シャマランならすべてをまとめ上げ、全体として驚きに満ちた作品に仕上げてくれると思った」と、監督とのミーティングを重ねて本作の真のテーマを見極めていった。
「脚本から浮揚感と軽快なトーンを読み取って、このキャラクターが置かれている状況を理解しようとした。でも実は、この映画の核心は、父と娘の愛の物語であり、お互いがお互いをどれほど大切に思っているかという物語だと思う。娘の好きなアーティストのライブを観に行く。そしてそれは、邪悪で、奇想天外なものへと展開していく」
ハートネットとシャマランの最初の出会いは、2004年公開の「ヴィレッジ」のプレミア上映の時だった。
「みんなでディナーに行き、シャマランと私たちは1時間ほど話をした。彼は最高にいい人だ。人間として素晴らしく、明らかに才能あふれる映画監督だ。でもそれ以来、一度も彼と会っていなかった」と振り返り、本作の企画が動き始めて再会を果たすことになった。
「彼が手がけた作品はすべて観てきた。彼は現代の映画界で、本当に独創的な映画製作者の一人であり、優れたコンセプトと卓越した技術で作品を作り続けている。そして観客を映画館に呼び込むこともできる。それができる人はめったにいない」と、観客を未知の領域へと誘い、異なるテーマや演出を駆使したマジカルな演出で観客を魅了し続けているシャマランを賞賛する。
「彼はまた、独自の視点を持っている。シャマランのような監督はほかにいないし、尊敬すべき監督だ。この映画界で独自のスタイルを確立して、業界に非常に大きく貢献している。それでもなお、彼は常に自分独自の何かを探求し続けている」と、常に貪欲な探究心で挑戦し続けるイノベーターだと敬意を表している。
自身が演じた クーパーについては「職業は消防士で、家庭での責任や社会での役割以外にもいろいろなことを抱えている。彼は父親であり、娘をとても愛している」と良き父親としてどこにでもいる人物だと説明。だが、クーパーがもう一つの顔になると世界が一転する。
「この映画のタイトルが示すように、彼はかなり厄介な状況に陥っている。私の仕事は、彼の頭の中に入り込み、彼の視点からすべてを感じ取ることだ。たとえ彼が救いようのない人間だったとしても、彼に好意的な解釈をしないといけない」と、良き父でありながらサイコな切り裂き魔でもあるキャラクーの二面性を掘り下げていった。
クーパーは、凶悪な犯罪者かもしれない。「でも私は、彼をそういう風には見ていない。最終的には彼を理解し、ある程度は彼を好きになるしかない。そういうプロセスを辿ったんだ。リサーチして、こういう人についての本をたくさん読んで、なぜこういう人になるのか、できるだけ理解しようとした。そしてスクリーン上では、ダイナミックで、おもしろいキャラクターになるように演じた」と、クーパーという存在を突き放すことなく真摯な役作りを進めて現場に臨んだ。
国際的アーティストのライブを楽しむ父と娘の和やかな光景は、クーパーが会場に仕掛けられた罠に気づいた瞬間にガラリと変わる。クーパーを捕まえるために、通路には監視カメラが設置され、FBIのプロファイラーの指揮の下、300人を超える武装警官が配置される。巨大アリーナが自分に対する罠だと気づいたクーパーがトラップから抜け出そうと行動を開始すると、切り裂き魔の主観で物語が進行し、観客をも”逃げ場ゼロ”の極限へと追い込んでいく。
シャマランが多層に仕掛けた罠(トラップ)による挑戦的な試みは、ハートネットにとってもやりがいのあることだった。
「この映画はクーパーの視点を中心に作られていて、この人物のコンセプトはシャマランが執念を持って探求したものだ。だからクーパーをできるだけ魅力的に、奥深いキャラクターにしなければならなかった」と入念に準備して臨んだ。
「演じるのはとても難しいが、おもしろいキャラクターだ。描き方が一方に偏ってしまうと、観客からの好意を失いかねないし、あるいは、危険な緊張感を失いかねない。本当に綱渡りのような繊細なバランス感覚での演技が必要だった」と、細心の注意を払って演技をする必要があったという。
監督、俳優として「私たち2人は、クーパーのようなキャラクターについて似たような感性を持っている。とても危険なものを表現したい、演じたいという欲求と感覚を持っているからだ。『よし、それでやってみよう!』という感じで挑戦したよ」と、シャマランとの共通点を語るハートネット。この感受性を共有して、二人三脚での撮影に挑んだ。
最後に、シャマラン監督の映画作りについて「私がこれまで一緒に仕事をした誰よりも徹底して準備をする。彼は毎日、必要なショットを正確に把握している。撮影の前に映画全部の撮影プランを書き、絵コンテを描いている。私は映画の基本になるシーンの絵コンテの束を渡された。それをめくると、すべてのショットが描いてある。あれだけ完璧に準備をして撮影現場に来て、実際にそのプランのとおりにやり抜くことができる監督はめったにいない」と証言。
続けて、「彼はカメラの後ろに立ち、作品の世界を完全に体験しようとする。そして、観客にどんな映画体験をもたらすのかを見ようとしているんだ。その後、彼はその映像を最も効果的に観客に届くように編集する。彼はその技術の達人だ。そういう映画制作のプロセスを本当に楽しんでいるのだと思う」と、完璧を目指して進化を続けるシャマラン映画に隠された秘密を明かしてくれた。
「トラップ」は10月25日公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。