「ミッシング」吉田恵輔監督流の意地悪ユーモアに着目 “可笑しみのスパイス”はワークショップで選出
2024年5月14日 08:00
石原さとみが主演した映画「ミッシング」の監督を務めたのは、「ヒメアノ~ル」「空白」などで知られる吉田恵輔(※「吉」は“つちよし”が正式表記)。両者は、本作で初タッグを組むことになり、石原が直談判して出演が叶ったという驚きのエピソードも存在している。
石原と吉田作品の出会いは「さんかく」(2010)。同棲中のアラサー男女が15歳の女子中学生(彼女の妹)に振り回される三角関係の成れの果てを描いた1本であり、石原は同作から“吉田恵輔沼“にハマった。「生々しくて、キュンとくるけど、醜くて。ドキュメンタリーみたいだけど、エンタメ性もあって、すごく好きな作品だったんです」という石原の感想のとおり、一度見たら癖になるといわれる吉田作品。本記事では、吉田節の魅力に迫っていく。
吉田監督は、06年に「机のなかみ」で長編映画監督デビュー。以降、森田剛がシリアルキラー役で出演し大きな話題となった「ヒメアノ~ル」(16)、第43回ヨコハマ映画祭で作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞と4冠に輝いた「空白」(21)などの話題作を連発している。
吉田作品の特徴は、ギリギリな状況に追い込まれた登場人物たちの生々しい人物描写。その手腕は“人間描写の鬼”と称され、思わず癖になってしまうような作風でファンを引き付けている。
そして、吉田作品には“笑い”が差し込まれる場面が多い。それらはどこか居心地の悪さや気まずい空気、「ここは笑ってはいけない……」と感じつつも、思わずクスッと笑いが漏れ出てしまうような、「これ、意地悪だな~」と突っ込みたくなる“人間の可笑しさ”が表現している。
例えば、見た目も性格も正反対な兄弟と姉妹を描いた「犬猿」(18)では、開始早々、架空の胸キュン恋愛映画の感動コメント予告編のパロディが登場したり、「空白」(21)では、娘を亡くした主人公が娘の気持ちに近づこうと油絵を始め、娘を描いたが、そうとは知らない後輩が「ブサイクですね」と言って気まずい空気が流れる場面などが描かれている。
そんな“吉田節”は本作でも健在だ。沙織里と夫の豊が街頭でビラ配りをしているシーンでの出来事。ビラを受け取った通行人の一人が「この子何歳なの?」「男の子?」などと、ビラを見ればわかることを次々と尋ねてきて、豊が困惑する。さらに、沙織里が知り合いとスーパーで偶然会う場面はなかなか気まずい再会の場に。そんな雰囲気をよそに、ひたすら店員にクレームをつける買い物客が同じシーンに映っているのだ。
実は、本作のこういったシーンに登場するキャストたちは、ワークショップオーディションで選ばれた面々だった。吉田監督本人も「ワークショップを行うのは珍しかった」と話しているが、約3000通の応募書類から150人ほどに絞ってワークショップを実施。約30人を採用している。現場では一人一人、持ち物から動きまでを細かく演出。こうした緻密な準備があるからこそ、作品の中に“可笑しみ”のスパイスが溶け込んでいるのだ。
ちなみに、劇場で販売予定のパンフレットには、ワークショップオーディション参加者のプロフィールがタレント名鑑のように掲載されている。鑑賞後に個性あふれる出演者たちの顔ぶれを確かめるのも、楽しいかもしれない。
「ミッシング」は、5月17日から全国公開。
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