モロッコ、マラケシュ映画祭に豪華ゲストが集結 女性監督の活躍に審査員長ジェシカ・チャステイン「うれしい驚き」
2023年12月24日 10:30
11月末から12月頭にかけて開催された、モロッコのマラケシュ国際映画祭を、久しぶりに訪れた。2001年から開催されている本映画祭は、コロナによる開催中止などを経て、今年がちょうど20周年にあたる。それだけに、ゲスト陣もことさら豪華な印象だった。
審査員長にジェシカ・チャステイン、彼女を囲む審査員メンバーに、アレクサンダー・スカルスガルド、ジョエル・エドガートン、カミーユ・コッタン、ザーラ・アミール・エブラヒミ、ジョアンナ・ホグ監督、タリック・サレ監督、ディー・リー監督、作家のレイラ・スリマニ。今年のオマージュにはマッツ・ミケルセンが選ばれ、特集上映とトークが開催され、さらにウィレム・デフォー、マット・ディロン、ビゴ・モーテンセン、サイモン・ベーカー、ティルダ・スウィントン、大病から復活を遂げたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督、河瀬直美監督らが訪れトークをおこなった。他にもイザベル・ユペール(「Sidonie in Japan」)、マリオン・コティヤール(「Litte Girl Blue」)、2023年のカンヌで女優賞に輝いたトルコのメルベ・ディズダル(「About Dry Grasses」)、アレクサンダー・ペイン監督(「The Holdover」)、マッテオ・ガローネ監督(「Me Captain」)らの姿も。
現在のイスラエル/パレスチナ情勢の影響が懸念されたものの、現地にそこまでのピリピリ感はなく、むしろ映画に関心のある地元の観客による熱気に溢れていた。モロッコといえば、ハリウッド映画などの撮影のロケ地としても重宝されているが、本映画祭はもともと、モロッコの映画産業や映画人を支援するために、国王の主導により始まったもの。今日、モロッコはことさら映画産業に力を入れていて、全国で新たに150の多目的映画施設を建設するプロジェクトが進んでいるという。
映画祭もチケットはなんと無料。ネットで予約し、マラケシュに足を運べば、世界的なスターに会えるとあって、映画好きにはたまらない機会となっている。またアフリカの映画人の企画を支援する、アトラス・ワークショップなるものも開催されている。
今回審査員長を務めたチャステインに現地でインタビューをすることができたので、彼女のコメントをここでご紹介しよう。
「モロッコには何度も来ているし、2011年には審査員メンバーとしてこの映画祭に参加した。でも今回は審査員長ということで、とくに責任を感じる。わたしの務めは審査員メンバーのみんなが心を開き、互いの意見を理解し合うように努めること。そしてコンペティションに参加した監督たち誰もが、自分たちがリスペクトされ、フェアに判断されたと感じてもらえるようにすること。だから映画を観るときは、なんの情報も入れず、誰が出ているかとか、どこの国の作品かといったことにこだわらない、まっさらな状態で観たい。ここで何を期待しているか? それを口にするのは難しいけれど、逆に期待していなかったことは、女性監督が増えているということ。これは嬉しい驚きだった。そしてパーソナルな物語を扱った作品が多いと思う」
たしかに彼女の言葉通り、女性監督が力をつけていることは発見だった。コンペティション部門で最高賞のエトワール・ドールに輝いたのは、地元モロッコのアスマエ・エルムディール監督による「The Mother of All Lies」。彼女自身の祖母を主人公に家族の秘密を紐解くドキュメンタリーだが、パペットを交えたそのアプローチは新鮮、かつ強烈に胸に迫るものだった。
審査員賞はパレスチナの、こちらも女性監督リナ・スアレムが、母で女優のヒアム・アッバスを追ったドキュメンタリー「Bye Bye Tiberiade」と、2023年のカンヌのある視点部門審査員賞を受賞したモロッコのカマル・ラズラクによる「Hounds」が分け合った。監督賞には長編一作目でカンヌのコンペティションに入り注目されたセネガルの女性監督ラマタ=トゥレイ・シーの「Banel & Adama」にわたった。男優賞はトルコ映画「Dormitory」で、父により無理やりイスラムの寄宿学校に入れられた中流家庭の少年の鬱屈を鮮烈に演じたドガ・カラカスへ、女優賞はボスニア映画「Excrusion」で、ちょっとした嘘がもとで友人たちから仲間外れにされる少女に扮し、瑞々しい印象を残したアジャ・ザラ・ラグムジジャにわたった。
地元に愛される映画祭はこれから益々充実し、若手の才能を輩出していくに違いない。(佐藤久理子)
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