【来日インタビュー】「スター・ウォーズ」では絶対に描けない―― “自由”を手に入れたザック・スナイダー監督が語る自らの“原点”
2023年12月22日 10:00
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「300 スリーハンドレッド」で世界を驚愕させ、2013年からは「マン・オブ・スティール」、「ジャスティス・リーグ」など一連のDCシリーズで監督、プロデューサーとしてその手腕を発揮してきたザック・スナイダーのオリジナル脚本による宇宙を舞台にしたSF超大作「REBEL MOON パート1 炎の子」がNetflixにて12月22日より配信される(「パート2 傷跡を刻む者」 は2024年4月19日配信予定)。
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1977年に11歳で観たという「スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望」に多大な影響を受け、さらに黒澤明の名作「七人の侍」をモチーフに採り入れ、この壮大な物語を完成に導いた。「パート1」の配信開始を前に来日を果たしたスナイダー監督が制作の過程や劇中に散りばめた「スター・ウォーズ」へのオマージュ、さらに「スター・ウォーズ」やDCシリーズではできないであろう、オリジナル作品だからこそ可能となった表現などについて熱く語ってくれた。(取材・文・写真/黒豆直樹)
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「『スター・ウォーズ』を観た時、『僕にもこういうのが作れるんじゃないかな』と思ったんです(笑)」――。インタビューの前日に行なわれた記者会見で、本作のアイディアの発端となった自らの“原点”について、ユーモアたっぷりに語っていたスナイダー監督。それから、46年もの時を経て、ついに自ら作り上げた宇宙を舞台に繰り広げられる壮大なこの物語を「哲学的な観点で言うと、『スター・ウォーズ』を“解体”した作品だと言えると思います」と説明する。
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ちなみに本作は、スナイダー監督の編集による「ディレクターズカット版」がR指定で公開されることになっているが「そっちは、トーンやテーマをより大人向けにしていて、『スター・ウォーズ』では絶対にできないことをやっています。市場における商業的なニーズなど『クソくらえ(=ZERO F●CKS!)』な、何でもありのクレイジーな作品に仕上がっている(笑)」とのこと。
「スター・ウォーズ」へのオマージュをハッキリと示しているシーンも見られる。主人公・コラ(ソフィア・ブテラ)が、巨大な帝国“マザーワールド”に立ち向かうべく、仲間を探すために村を出て、最初に立ち寄った街で運び屋のカイ(チャーリー・ハナム)を雇う場面は、「スター・ウォーズ エピソード4」でルークとオビ=ワンが、ハン・ソロ、チューバッカと出会う酒場「カンティーナ」のシーンそのままだ。先ほどの“大人向け”という言葉を踏まえつつ、スナイダー監督はこう続ける。
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「だから、(本作では)あのシーンは酒場ではなく、売春宿になっているんです(笑)。もしかしたら、カンティーナでのシーンで、あの酒場にはルークと寝たいと思った客がいたかもしれないし、映画を観ていた人たちの中にも『これ、ルークの身に危険が迫ってるんじゃ……?』と思った人もいたかもしれません(笑)。でも、それは『スター・ウォーズ』では絶対に描けないですよね」
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本作ではコラに加えて、ペ・ドゥナ演じるネメシスなど多くの魅力的な女性キャラクターたちが躍動するが、そもそも企画当初から主人公を女性にすることは決めていたのだろうか?
「これまでの作品をご覧いただいてもわかると思いますが、自然と女性主人公になりました。もしかしたら、僕の映画づくりの根本の部分、DNAに組み込まれているのかもしれません(笑)。意識的にやっているわけでもないし、周りからの異論も特になく、自然とこういう形になりました」
本作では、原案、脚本として、ゼロから世界観を構築し、脚本を執筆し、さらに監督、プロデューサー、そして撮影監督をも兼任している(描いた絵コンテは実に4000枚!)。この取材の最中も、自らの手による絵コンテをスマホで見せながら「脚本を執筆している段階では、そこまでト書きやディティールを詳しく書き込んでいるわけではないんですが、絵コンテで一気に具体化するんです。絵コンテで描いているイメージは、観客が見る完成版にかなり近いものです。プリプロダクション(撮影前の準備)の段階で、デザイナーたちは脚本をベースにして作業し、いろんなアイディアを考えるものですが、僕はいつも『脚本ではなく絵コンテを見てデザインしてくれ』と伝えています」と制作のプロセスの一端についても明かしてくれた。
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2013年の「マン・オブ・スティール」以来、監督、原案、製作など様々な形で10年近くにわたってDC映画に携わり、ヒーローを描いてきた。もちろん、DCユニバースに関わる以上、クリエイティブに関して様々な制約がついて回ることになる。今回、ゼロから世界観を構築する“自由”を手に入れたことで、DCではできなかったどのようなクリエイティブが可能となったのだろうか?
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「もちろんDCでやる以上、カノン(=正史)から離れることはできませんが、今回はそれができました。例えばコラの人物像に関しても、少しダークで気難しい性格にしたかったんです。それはDCでは好まれるものではなかったでしょう。実際、劇中の彼女は新しい出会いに際しても『こんなことしないといけないの……?』というタイプのキャラクターになっています。パート2、そしてR指定バージョンでは彼女のそうした側面はさらに際立っています。それらも含めてぜひパート2を楽しみにしてもらえたらと思います。2年も待つことなく、4月には観ることができますし、その頃には(パート1を通して)キャラクターたちをみなさんに理解していただけていると思います」
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