女性監督初のパルム・ドール受賞作、ジェーン・カンピオン「ピアノ・レッスン」4Kデジタルリマスター版が3月22日公開
2023年12月22日 18:00
第66回アカデミー賞主演女優賞・助演女優賞・脚本賞、第46回カンヌ国際映画祭パルム・ドールなどの数々の映画賞を受賞したジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」(92)の4Kデジタルリマスター版が2024年3月22日から公開される。このほど予告編(https://youtu.be/fkyaiiyT5iI)、ポスタービジュアル、著名人からのコメントが披露された。
物語の舞台は19世紀半ば。 エイダ(ホリー・ハンター)はニュージーランド入植者のスチュアート(サム・ニール)に嫁ぐため、娘フロラ(アンナ・パキン)と1台のピアノとともに スコットランドからやって来る。「6歳で話すことをやめた」彼女にとって自分の感情を表現できるピアノは大切なものだったが、スチュアートは重いピアノを浜辺に置き去りにし、白人でありながらマオリ族の入れ墨を顔に入れた男・ベインズ(ハーベイ・カイテル)の土地と交換してしまう。エイダに興味を抱いたベインズは、自分に演奏を教えるならピアノを返すと彼女に提案。仕方なく受け入れるエイダだったが、レッスンを重ねるうちに彼女も思わぬ感情を抱き始める――。
「私」らしい生き方と幸せを探すヒロイン像の原点である本作は、第46回カンヌ国際映画祭でジェーン・カンピオン監督が女性監督初のパルム・ドールを受賞。また本作では第66回アカデミー賞脚本賞を受賞した後、2021年には「パワー・オブ・ザ・ドッグ」でアカデミー賞史上初となる2度の監督賞にノミネートされた女性監督として、見事受賞を果たした。世界的に注目される女性監督が少なかった時代から現在に至るまで第一線で活躍を続けるパイオニア的な存在として後進の女性監督に影響を与え続けている。
エイダを演じたホリー・ハンターは、言葉を発しない難役を見事に演じた上に自らピアノ演奏をこなし、カンヌ国際映画祭女優賞、アカデミー賞主演女優賞を獲得。また、娘フロラを演じた当時11歳だったアンナ・パキンも映画初出演ながらアカデミー賞助演女優賞を獲得するなど、数々の映画賞を受賞した。べインズを演じるのは「タクシードライバー」「レザボア・ドックス」、近年では「アイリッシュマン」などの名作に出演するハーベイ・カイテル。夫のいるエイダに惹かれていく様を見事に演じきった。
そのほか、「ジュラシック・パーク」の大ヒットで世界的スターに登りつめたサム・ニールがエイダの夫スチュアートを演じる。音楽を担当するのは、本作で世界的名声を決定的なものにしたマイケル・ナイマン。中でもメイン・テーマ曲「楽しみを希(こいねが)う心」は今なお根強い人気を誇っている。3月22日からTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開。
主人公エイダの心情と全体的にモノトーンな世界観に寄り添うマイケル・ナイマンの音楽。
とりわけ映画そのものを雄弁に語るピアノによる主題曲は、四半世紀以上経った今も色褪せない。
――― 服部隆之(作曲家)「隆」の字は、「生」の上に「一」アリの旧字体。
たったそれだけのアイデアから始まった、あまりにもエキセントリックな試み。
常識や理性を超えて、心の奥が見てみたいと願わずにはいられない。
女性ならではの感性だなんて言わせない、荒々しい波のような名作。
――― 小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)
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