ティモシー・シャラメは“新たな希望”? 主演作「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」で念願の確変は起こるのか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

2023年12月8日 07:00


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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


ウォンカとチョコレート工場のはじまり」は、当初2023年12月15日の日米同時公開を予定していましたが、日本では特別に12月8日(金)から先行公開されることになった作品です。

“チョコレート工場”といえば、2005年に公開されたティム・バートン監督×ジョニー・デップ主演「チャーリーとチョコレート工場」が有名です(日本では興行収入53.5億円の大ヒット)。そもそも1971年には「夢のチョコレート工場」が製作されていますが、この2作品は、1964年にロアルド・ダールが発表した児童小説「チョコレート工場の秘密」を映画化したものなのです。

そして、ティモシー・シャラメが主演を務める「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」は、「チャーリーとチョコレート工場」に登場した工場長ウィリー・ウォンカの始まりの物語を描く――という位置づけになっています。

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本作の出来ですが、お世辞等は一切抜きで(そもそもこのコラムは忖度抜きなので、たまにお叱りも食らいますが、笑)非常に良く出来ていて面白かったです!

それは、制作陣に秘密があると考えています。

宣伝時のキャッチコピーでは、「『ハリー・ポッター』シリーズのプロデューサーが贈る」となっています。

これは、一般に広く間口を広げるのであれば「正解」だと思いますが、映画をよく知っている人たちには、名作「パディントン」シリーズの脚本・監督を務めるポール・キングによる作品、といった方が良さが伝わるでしょう。

「パディントン」
「パディントン」

パディントン」シリーズといえば、2016年公開の第1弾「パディントン」は、辛口で有名な映画批評サイトRotten Tomatoesにおいて、現時点でも批評家票が驚異の97%をマークしています。

さらに、2018年公開の「パディントン2」にいたっては、いまだに99%をマークし続けているのです!

私は「パディントン2」の試写を見た時には、全くダメ出しをするような要素がなく、「物凄く良質な作品を見た」と驚きました。

この作品は、世界の映画業界内でも物凄く評価が高く、例えば今年公開された「ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!」などライバルとなる他社の作品でも、「パディントン2」の出来の良さを称賛するようなセリフが出たりもしています。

本作は、まさにそんな超有能な「パディントン」シリーズのクリエイターらが手掛けた作品なので、クオリティーが担保されていたわけです。

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キャストも「パディントン」シリーズと同様に、イギリス関連の名俳優陣が多く出演しています。

主人公の母親役には、「パディントン」シリーズにも登場し、アカデミー賞作品賞受賞作「シェイプ・オブ・ウォーター」で主演女優賞にノミネートされたサリー・ホーキンス。「女王陛下のお気に入り」でアカデミー賞主演女優賞に輝いたオリヴィア・コールマン、「パディントン2」にも出演したヒュー・グラント、「Mr.ビーン」シリーズで有名なローワン・アトキンソンなども参加しています。

本作における展開の構成は「パディントン」シリーズの良さが継承されていて面白いのは当然として、特筆すべきは「ミュージカルシーンの素晴らしさ」です。

分かりやすくいうと、楽曲が素晴らしく、どの歌も非常に魅力的なのです!

この映画は、見て損がない作品だと思います。

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では、どのくらいヒットするのかというと、正直なところ非常に読みにくい面があります。

まず、「チャーリーとチョコレート工場」の記憶は比較的新しいので、その関連でいうと「本作も興行収入53.5億円の大ヒット!もあり得る」という流れが理想です。

ただ、「チャーリーとチョコレート工場」について、当時は「え、この聞き慣れない作品がいきなりこんな大ヒットするの?」と驚いた記憶があります。

これは、ティム・バートン監督×主演ジョニー・デップというコンビの絶頂期で、このような確変的な結果を生み出したものと考えています。

では視点を変えて、「パディントン」シリーズで考えてみましょう。日本での「パディントン」の興行収入は7.5億円、「パディントン2」は6.3億円。あまりパッとはしない成績です。

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本作の興行収入を考えるにあたって最も重要になるのは、初来日を果たした主演のティモシー・シャラメの注目度でしょう。

近年のハリウッド映画が邦画に押されている大きな原因の1つに、いわゆる「新たなハリウッドスター」の不在というのがあります。

今の日本で「ハリウッドスター」として広く認知されているのは、トム・クルーズブラッド・ピットレオナルド・ディカプリオなどの40~60代といった感じで、多くの一般の人々が注目するような「新しいハリウッドスター」が生まれていないのです。

もちろん日本の映画会社も手をこまねいていたわけではありません。スターになり得るポテンシャルを持つ俳優の来日プロモーションを頑張ったりしていました。

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このような流れを踏まえると、ティモシー・シャラメは「最大級にポテンシャルを持っている希望」とも言えるような逸材。果たしてティモシー・シャラメは日本で多くの人に認知される「ハリウッドスター」になれるのでしょうか?

そういった意味でも、まさに今後のハリウッド映画の日本興行の未来が本作の結果に表れるような重要作品でもあるのです!

本作の興行収入は、「チャーリーとチョコレート工場」の半分程度の25億円くらいが目処だと思われますが、良い意味で想定を大きく裏切るような大ヒットを期待したいところです。

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