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尚玄、沖縄の新しい映画祭「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」に期待すること

2023年11月15日 10:00

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「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」アンバサダーの尚玄
「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」アンバサダーの尚玄

環太平洋地域にフォーカスした新しい国際映画祭、第1回「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が、11月23日から11月29日の7日間、沖縄県・那覇市の会場を中心に開催される。このほど、沖縄出身の俳優で映画祭アンバサダーを務める尚玄に話を聞いた。

「Cinema at Sea」は、優れた映画の発掘と発信を通じて、各国の文化や民族、個々人の相互理解を深め、将来的に沖縄が環太平洋地域において新たな国際文化交流の場となることを目指し始動した映画祭。環太平洋の各国・島々で製作された映画作品を対象にコンペティション形式による優秀作品の選考と上映を行うほか、製作者向けに国際共同制作を促進するプログラムやワークショップなども行い、沖縄を拠点に環太平洋地域の映画産業を盛り上げる長期的な施策を構想している。

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尚玄はモデルとしてキャリアをスタートし、2005年「ハブと拳骨」で俳優デビュー。米国と日本と海外を行き来しながら国内外の作品に参加、近年はフィリピンの名匠ブリランテ・メンドーサ監督による「義足のボクサー GENSAN PUNCH」(21)、中華系マレーシア人のリム・カーワイ監督作「すべて、至るところにある」(23)に出演など、アジア圏監督の作品でも強い存在感を発揮している。

アンバサダー就任のきっかけとなったのは、「Cinema at Sea」のエグゼクティブディレクター・黄インイク監督。出会いの場は、黄監督作「緑の牢獄」試写だったそう。

尚玄:僕自身、特にここ数年アジアの監督とご一緒させていただく機会が増え、海外の現場や映画祭でフィルムメーカーたちとの関わりも深まりました。そういう意味でも、沖縄で開催されるこの映画祭で僕がアンバサダーとしてできる役割があるのでは、と二つ返事でお受けしました。
――海外経験が豊富な尚玄さんが感じる、世界からの沖縄への視点について教えてください。
尚玄:バックパッカーとして世界中を旅している時から、僕は自己紹介する際にまず、沖縄出身だと言うんです。そうすると、一昔前よりも沖縄という地名を知っていて、認識してくださる人が増えてきた実感があります。まず、イメージとしてはきれいな海があること、そして基地のこと。それらのことを知っている方は多くいます。でも、東アジアの人を除いては沖縄を訪れたことがない、という人が多数です。観光地として人々を惹きつける魅力も、映画祭として大事なことだと思いますし、アジアの中継貿易地として栄えてきた、琉球時代からの文化的な背景や多様性も重要な要素だと思っています。
――沖縄で生まれ育った尚玄さんの映画体験を振り返ると、映画館は予期せぬ作品との出合いの場であったそうですね。
尚玄:僕が影響を受けたのは、世代的に「スタンド・バイ・ミー」や「グーニーズ」とか、自分と同世代の子どもたちがあることをきっかけに、ちょっと非日常の世界に誘われるような映画にワクワクしましたね。その映画を見ることで、そんな非日常の世界に連れていってもらえるような気分がしました。だから、いつか自分も映画の世界に入りたいな、と小さい頃から思っていたんです。当時は国際通り周辺にもたくさんの映画館があって、父親に連れていってもらった記憶が鮮明に残っています。ある時、「ホーム・アローン」と、2本立てか3本立てで「シザー・ハンズ」をやっていて、「ホーム・アローン」目当てで行ったのに、ジョニー・デップが演じるシザー・ハンズに衝撃を受けたんです。こんな映画があるんだ! と。それがティム・バートンと出会いでもあって。そして帰りにシェーキーズに行ったなあ……とか、しっかり覚えています。

近年シネコンが主流になったことで、上映されるのがどこでも同じような作品ばかりになり、映画館でミニシアター系の作品を見られる機会が減っています。これでは、映画の多様性は失われてしまうと思います。今回、映画祭のプログラミングチームが、環太平洋の国々から素晴らしいラインナップを取り揃え、特集上映以外は日本初公開という、本当にこの映画祭でしか見られない作品群が集まりました。いろんな方たちに体験をしてほしいです。

「オキナワより愛をこめて」
「オキナワより愛をこめて」
(C)Hiroshi Sunairi
――いくつかの映画祭上映作品の見どころを教えてください。オープニング作品「オキナワより愛をこめて」(2022/砂入博史監督)は、戦後27年間続いた米軍統治が終わり、日本に復帰したばかりの沖縄を舞台に、米国黒人兵向けの娯楽施設で働きながら、写真を撮り続けた写真家の石川真生氏と作品、歴史的背景、そして愛を映し出すドキュメントですね。
尚玄:この映画は、石川さんが主に黒人兵と彼らと恋に落ちた女性たちを撮った写真集をテーマにした映画なのですが、キャッチフレーズになっている「そこには愛があった」、石川流の人間賛歌に溢れた素晴らしい作品です。今回、沖縄で上映されるということで、地元の人や県外の人はもちろんですが、基地の人たちもぜひ足を運んでもらいたいなと思っているんです。僕にも元米兵だった友人がいて、ポッドキャストなどを通して、米軍の方々にも、映画祭の情報をもっと知らせてほしいとお願いしたりしているところです。
「BEEの不思議なスペクトラムの世界」
「BEEの不思議なスペクトラムの世界」
(C)Fabien Laubry
――次は、コンペティション部門出品作で、南太平洋のフランス海外領土ニューカレドニアからの作品「BEEの不思議なスペクトラムの世界」(2022/ファビアン・ローブリー監督)。音楽が得意で、自閉スペクトラム症であるエレアが「BEE」というステージネームで、アルバムデビューする夢を映す作品です。
尚玄:自閉スペクトラム症の人たちは、他者と関わりを持ったり、コミュニケーションが苦手な方が多いそうなんです。この映画のエレアも、人と話すよりも歌うことが得意で。でも、彼女が自分の歌の才能を見出してもらって、デビューする。そのプロセスを追った素敵なドキュメンタリーです。今回監督とエレアさんが沖縄に来てミニライブを行う予定なので、映画と併せて楽しんでほしいです。
――特集上映として、沖縄にルーツを持つハワイ・ホノルル生まれのクリストファー・マコト・ヨギ監督の作品が日本初公開されます。
尚玄:ヨギ監督はハワイ出身の沖縄4世ですが、今回初めて沖縄を訪れるんです。僕はもう本当に彼の作品の世界観が好きで。(タイの映画監督)アピチャッポンの作品などが好きな方は、多分気に入っていただける作品群だと思います。今回、実際に初めて沖縄を訪れて、そこからヨギ監督の新しい作品が生まれるんじゃないか……そういう可能性も秘めていると思います。
「August at Akiko」
「August at Akiko」
(C)Christopher Makoto Yogi
――映画以外にも楽しめる沖縄ならではのアクティビティやイベントを教えてください。
尚玄:今回、南城市の“あざまサンサンビーチ”で野外上映を行います。そこは、手ぶらで行ってもキャンプやバーベキューができる場所で。ビーチほど近くから船で、久高島という神の島と呼ばれている島に渡ることもできます。また、南城市には世界文化遺産の斎場御嶽もあります。例えば、昼間に観光をして、夕方ぐらいからバーベキューをやって、夜は映画を観る。そんな風に1日友人同士や家族で楽しめるプランも可能ですね。

那覇では映画人と交流できるラウンジのようなカフェがあって、僕も会期中は顔を出す予定ですし、クリストファー・マコト・ヨギ監督や審査員長のアミール・ナデリ監督にも会えると思いますので、気軽に声をかけてほしいです。あと、地元沖縄で映画を撮っている岸本司監督と平 一紘監督と僕の3人で、沖縄での映画製作について語るトークイベントもあります。

特に地元の方には、映画祭は敷居が高いものとは思ってほしくなく、毎年開催を楽しみにしてくださるような映画祭にしていきたいんです。今年、イタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に初めて参加しました。アジア映画を紹介する映画祭で、観客の熱狂ぶりがすごかったです。25年こつこつと続けて地元に愛される映画祭になったんだなあって。地元のワイナリーの方たちが日替わりで
ワインテイスティング会をしてくれて、これ沖縄だったら泡盛でできないかな?と思ったり。

今回、台湾の黄ディレクターのおかげで、日本の力だけではできなかったことも実現しました。台湾は外交として、アートや映画に力を入れているし、国の予算も注がれています。日本より進んでいる台湾のVR作品の上映は個人的にもとても楽しみです。

都内で行われたラインナップ発表記者会見の模様
都内で行われたラインナップ発表記者会見の模様
――アジアの交差点のような場所ともいえる沖縄で、国内外の映画ファンや映画人が集う場になりそうですね。今後の尚玄さんの映画俳優としての展望をお聞かせください。
尚玄:どんどん新しいこと、新しい役に挑戦していきたいのはもちろんですが、この映画祭も僕の新しい挑戦のひとつです。俳優としてのキャリアを続けながら、自分でプロデュースしたくなるような作品に出合えるかもしれない期待があります。今回の映画祭では、企画ピッチングもあるので、そこで一緒にやりたいと思えるような作品に巡り合えればいいなと思っています。

沖縄の歴史をたどると、台湾からの移民の方々、米兵との間に生まれた方々もいますし、本当に多様性あふれる場所。個人的にはそんな物語を描いた映画や、予算はかかるでしょうが、沖縄の時代ものもやりたいですね。鎖国時代も与那国島では密貿易が盛んだったそうなので、そんな話も面白いですよね。離島もたくさんあって、それぞれの文化がありますから、やりたい題材はいっぱいあります。この映画祭を通して、沖縄の魅力も発信していけたらなと思っていますし、映画人の方々にもふらっと沖縄まで足を延ばして遊びに来てほしいです。

「第一回Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」(https://www.cinema-at-sea.com/)11月23日(木・祝)から11月29日(水)の計7日間で開催。那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場、那覇文化芸術劇場なはーとがメイン会場となる。

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