ギャスパー・ノエ監督が約4年ぶりに来日、友人の塚本晋也監督と新作「VORTEX ヴォルテックス」トーク
2023年11月15日 16:00

ギャスパー・ノエ監督の最新作「VORTEX ヴォルテックス」先行プレミア上映が11月14日、ヒューマントラストシネマ渋谷であり、来日したノエ監督が、友人の塚本晋也監督とトークを行った。
「VORTEX ヴォルテックス」は、「病」と「死」をテーマに、ホラー映画の帝王ダリオ・アルジェントと「ママと娼婦」のフランソワーズ・ルブランが演じる老夫婦の晩年と死を、家族や夫婦という関係の不確かさとともに淡々と映し出す異色作。
フランス映画祭2022横浜で来日予定だったが、ドクター・ストップによってキャンセルしたノエ監督は、「久々に来日が叶って本当に嬉しい。日本のみんなにこうして出会えて、そして映画まで上映してもらえて…。今回の映画は今までのようにセックス&バイオレンスはテーマにしていなくて、センチメンタルな映画だよ。これを観て全員に泣いてもらいたいね」と挨拶した。
本作は、2021年のコロナ禍で撮影された。「当時はコロナ禍で誰も自分が感染したくないと怖がってとても緊張感のある独特な撮影だった。ダリオからは『俺はセリフなんて覚えられないぞ』と言われたけれど、役者全員にはシークエンスのみ教えて会話はすべてアドリブだった。それゆえに、ある種ドキュメンタリーに近い形に見えると思う」と紹介した。

1992年に「鉄男II BODY HAMMER」で訪れたアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でノエ監督と初めて出会ったという塚本監督。「映画祭に到着して最初に会ったのがギャスパーで、その映画祭で観た『カルネ』があまりにも素晴らしくて度肝を抜かれた。それから映画祭に行くたびに彼と再会して親睦を深めた」と交流歴を回想。新作「VORTEX ヴォルテックス」については、「本当に絶句するというか…。自分の両親を亡くした時の感情が生々しく蘇ってきたハードな映画でした。ギャスパーのこれまでの映画とは違い暴力もセックスもないけれど、歯ぎしりするような恐ろしさと深い愛を感じる作品だった」と感想を述べた。
11月25日に公開される塚本監督の新作「ほかげ」を鑑賞しているノエ監督は「塚本監督作の中で最も真面目で怖い映画だと思う。趣里さんをはじめ、俳優陣が信じられないくらい素晴らしい。晋也のスタイルはとても印象深くて、日本の戦後という厳しい時代を描いていて強烈な印象を受けた。『ほかげ』も『VORTEX ヴォルテックス』もお互いの監督作の中で最も真面目であり、心理的ホラーの要素があるね」と共通点を挙げながら絶賛した。
またノエ監督はアルジェントを俳優として起用した理由について「彼はとてもフレンドリーで優しくて面白く、カメラにも慣れている。カリスマ性があり、そして私の父同様に喋るときに身振り手振りが激しい男だ。そこに僕は親近感を覚えた。だから今回の役は彼以外頭に思い浮かばなくて、間を取り持ってくれたダリオの娘さんには『暴力もセックスシーンもないから安心してね!』と伝えてもらった」と明かす。

アルジェント監督作「シャドー」が「鉄男」に強い影響を与えたという塚本監督は「あの当時のアルジェントは怖い顔というイメージがあったけれど、『VORTEX ヴォルテックス』では親しみ深いおじいちゃんになっていてビックリ。そして演技があまりにも素晴らしい。妻を演じたフランソワーズ・ルブランも本当に病気を患っている人を出演させたのか?と思うくらいにリアルだった」と舌を巻いていた。
塚本監督は映画監督のみならず俳優としても活躍していることにノエ監督は「僕はマーティン・スコセッシ監督の『沈黙 サイレンス』が大好きで、中でも晋也はスコセッシ映画で十字架に縛り付けられた俳優としては最高の演技を見せていた」と評し「将来的に日本で映画を作る機会があったら、是非とも晋也に出てほしい」とラブコール。これに親友・塚本監督も「その時はぜひお願いします!」と満面の笑みで、会場を盛り上げていた。

最後にノエ監督は「映画が終わった時に、全員が泣いてくれることを期待しているよ。もし泣かない人がいたら、それは失敗作だということになるので…是非とも泣いてください!」とユーモアを交えて「VORTEX ヴォルテックス」日本公開をアピールした。
「VORTEX ヴォルテックス」は、12月8日からヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
(C)2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - WILD BUNCH INTERNATIONAL - LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM ARTEMIS PRODUCTIONS - SRAB FILMS - LES FILMS VELVET - KALLOUCHE CINÉMA Visa d’exploitation N° 155 193
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