唯一無二の“安藤サクラワールド”とは? 作品に生命力・説得力を与える魅力
2023年9月8日 18:00
原田眞人監督最新作「BAD LANDS バッド・ランズ」の新たな場面写真が披露された。主演を務める安藤サクラの姿をとらえている。
本作は、直木賞作家・黒川博行氏による小説「勁草」(読み方:けいそう)を原田眞人監督が映画化。特殊詐欺を生業とする姉弟、ネリ(安藤)とジョー(山田涼介)はある夜、思いがけず3億円もの大金を手にしたことから、さまざまな巨悪から狙われることとなる。
場面写真は、社会の最底辺で生きようとするネリの叫びをとらえている。前田航基演じる残間に対し、容赦なくナイフを突きつける狂気をはらんだ場面、困難な状況のなか生きる術を模索するかのような、思いを巡らせるシーンなど、いずれもどん底からもがき生きようとするネリの気迫が伝わるワンシーンを切り取っている。
安藤のキャスティングにあたり、本作の柳迫プロデューサーは「実写化するにあたって誰が動いたら一番かっこよく見えるか、この物語に最もフィットするか。そこでひらめいたのが安藤さんでした」と語っている。裏社会に生きるネリをフィクショナルなヒロイン像ではなく、より現実に寄り添ったリアルなキャラクターとして思い描いたときに、真っ先に名前が挙がったのが安藤だったのだ。
カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「万引き家族」(18)で、審査員長のケイト・ブランシェットもその芝居を絶賛した母親役。日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した「ある男」(22)では、亡き夫の身元調査を依頼する妻。さらに、今年のカンヌで話題をさらった「怪物」(23)では、一人息子に愛情を注ぐシングルマザー。近年、家族を描いたヒット作品で、映画に説得力を与えてきた安藤が本作で演じたのは、社会の最底辺の疑似家族。血のつながらない弟であるジョーと「ふれあい荘」で身を寄せ合う人々、それを束ねる祖父のような存在の曼荼羅(宇崎竜童)と、特殊な背景の家族像も力強い生命力と説得力をもって演じている。
大阪が舞台となる本作では、関西弁のセリフ回しが要だったが、NHK連続テレビ小説「まんぷく」で大阪生まれのヒロインを演じた経験のある東京出身の安藤は「方言だと自由に演じられる気がする」と楽しんでおり、出身地や年齢・男女によって異なる関西弁の発音やイントネーションを吟味しながら、ネリ独特の口調を作り上げ、共演の生瀬勝久や天童よしみなど関西弁話者を相手に生き生きとセリフの応酬を繰り広げている。
先日行われた完成披露試写会の舞台挨拶で、共演の山田が「変に飾ることなく、ご自身のペースがあって、おおらかな空気が流れる”安藤さんワールド”がある」と語ったように、安藤は撮影現場でキャストや監督、スタッフたちもその自由さで魅了した。本番前に独自の発声で喉をほぐす安藤の様子を目にした原田監督は、実際にその発声を劇中でのネリの言動として採用。ネリを襲ったヤクザの構成員を拷問するシーンでは、どう演じたらいいかわからないと戸惑う安藤の代わりに、ジョーがスピリタスを飲ませることに。ところが本番でその時間がやってくると、ネリがジョーの手をもってスピリタスをヤクザの口に押し込めるというアドリブを入れ、見守る監督・スタッフ陣からも笑いがこぼれていたというエピソードからも、安藤の現場での大胆さや魅力あふれる様子がうかがえる。
「BAD LANDS バッド・ランズ」は、9月29日から全国公開。
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