【第76回カンヌ国際映画祭】男優賞&脚本賞と日本勢が躍進! 最高賞は仏ジュスティーヌ・トリエ監督作、女性監督として史上3人目
2023年5月28日 13:00
第76回カンヌ国際映画祭が現地時間の5月27日に終了し、男優賞をビム・ベンダース監督が日本で撮影した「PERFECT DAYS」(原題)で評価の高かった役所広司が受賞した。授賞式の舞台に上がった役所は、「わたしは賞が大好きです。でも、華やかなカンヌ国際映画祭の場でスピーチをするのは好きじゃないです(笑)」と始め、関係者に感謝を述べた後、「もうちょっと喋っていいですか」と続けて、「撮影現場ではベンダース監督と撮影監督がわたしを平山というキャラクターに導いてくれました。本当に感謝しています」と語った。客席に居たベンダース監督は、役所のスピーチを聞きながら涙目になっていた。
受賞後、日本のマスコミを迎えた役所は、「ベンダース監督からしょっちゅう大丈夫だと言われていたのと、各国の取材を受けるなかで良かったと励まされたりして、(賞を)期待しちゃいけないなと思う部分と、乗せられた自分がいた。これでやっと柳楽優弥くんに追いついたかなという気持ちです(笑)」と感激をあわらにした。
脚本賞には是枝裕和監督作「怪物」の脚本家、坂元裕二が輝いた。東京に戻った坂元に代わり賞を受け取った是枝監督は、記者会見で、「この作品にふさわしい賞で、とても喜んでいます」と喜びをかみしめた。また坂元から急いでコメントを用意してもらったことを明かし、「本作が評価されたことはチームのひとりとしてとても嬉しく、感無量です。感謝します。この脚本は、たったひとりの孤独な人のために書きました」と、それを代弁した。
パルムドールにはジュスティーヌ・トリエ監督のフランス映画「Anatomie d'une chute」(原題)が輝いた。一昨年の「TITANE チタン」のジュリア・デュクルノーに続き、再びフランスの女性監督が最高賞を受賞。女性監督としては史上3人目となった。
一方、パルムドールの呼び声が高かったジョナサン・グレイザーの意欲作、「The Zone of Interest」は審査員グランプリに収まり、監督賞には、トラン・アン・ユンがジュリエット・ビノシュ扮する女性の料理人を描いた「The Pot-Au-Feu」が、またこちらも人気の高かったアキ・カウリスマキの「Fallen Leaves」は審査員賞に収まった。
女優賞は下馬評の高かった「Anatomie d'une chute」のサンドラ・フラーを尻目に、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン作「About Dry Grasses」のヒロイン、メルベ・ディズダルが受賞。フラーは今回、グレイザーの「The Zone of Interest」にも主演し、存在感を放っていた。
セレモニー後の記者会見で審査員長のリューベン・オストルンドは、「とても強烈でエモーショナルな体験だった。みんなで深いディスカッションを重ねて今回の結果にたどり着いた。今年はとても強力なラインナップだったと思う」と選定の難しさを語った。
結果的に今回は総じて、下馬評の高い作品が受賞した、サプライズの少ない年だったと言える。またコンペティション外であった北野武の「首」も含めて日本映画が注目を浴びた、邦画界にとっては嬉しい年となった。(佐藤久理子)
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。