ラストシーンに背筋が凍る…! イランの娼婦連続殺人事件描く「聖地には蜘蛛が巣を張る」二村ヒトシ&映画.com編集部がトーク
2023年5月16日 14:00

TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。今回は「ボーダー 二つの世界」の鬼才アリ・アッバシ監督が、イランに実在した殺人鬼による娼婦連続殺人事件に着想を得て撮りあげたクライムサスペンス「聖地には蜘蛛が巣を張る」(公開中)の感想や見どころを語り合った。
2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が発生した。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は「街を浄化する」という声明のもと犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々はそんな犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。そして遂に犯人の正体にたどりついた彼女は、家族と暮らす平凡な男の心に潜んだ狂気を目の当たりにする。
「イスラム社会の中で起きた殺人で、女性ジャーナリストが活躍する話だと思っていたら、本当に恐ろしいのは犯人が捕まってからだった…」と二村。これまでプロファイリングものを数多く見ているというエビタニも、「切り裂きジャック」などの事件や作品と類似しているのかと思いきや「捕まった後にウァーっと…」と想像を超える展開に驚いたという。
物語の大筋について「イスラム社会とか、保守思想の怖さというよりは、人間の恐ろしさは人間が人間から生まれる以上、受け継がれる話なのでは」と、「日本でもセックスワーカーの人は被害に遭っていることがある。それは(仕事を)見下されていることでもある」と日本での事象を交えて感想を語る二村。エビタニも「政治家への襲撃にも通じる話だったともと思う。テロなど犯罪のヒーロー化は昔からあること」「最近のネットでの私刑にも似ている」と世界共通の人間社会の恐ろしさを描きながらも、「このループは形を変えて一生終わらないんだな。ラストは背筋に冷たいものを感じた」とこの物語の本質は社会背景やイデオロギーとは別のところだと二人の意見が一致していた。
ジャーナリストのラヒミを熱演したザーラ・アミール・エブラヒミが、2022年・第75回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞している。元々エブラヒミはキャスティングディレクターで、監督はイラン人女優を探していたが、ヨルダンで撮影しなくてはならない、ヒジャブを外さなくてはいけない、髪が短くなくてはいけない。という条件をのめなかった女優に、プロ意識がないと激高したエブラヒミの姿を見て、ラヒミを演じることになったという逸話をエビタニが紹介した。
そして、登場人物たちの行動の根底に“怒り”という共通点があるという話題に。エビタニは、「犯人は国のために兵士として戦ったのに、その後の生活も良いものではなく、そして守った聖地に娼婦がいる事実が許せなかった」と分析する。また、保守的な国で女性ジャーナリストとして活躍するラヒミも、彼女の立場で社会に対しての怒りを抱えていた。しかし、「男女の対立だけではなく、殺人鬼の妻や、殺された被害者の親の反応も描いており、さまざま対立を描いていた」(エビタニ)、「この監督は一筋縄ではいかない撮り方をする」(二村)と、さまざまな問題を幾重にも重なるドラマに仕立てた監督の手腕を讃える。
二村が、日本のアダルトビデオ業界での例も挙げながら、「男だから、女だから、保守だから……など単純化(してジャッジ)することはよくない」と持論を述べると、エビタニも「何事も原因は一つではない、起こった事象を冷静に見なくてはいけない」と、人間社会の複雑さを描いた作品を味わう醍醐味をしみじみと語った。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回はショーン・ベイカー監督「レッド・ロケット」とジョージア映画「BEGINNING ビギニング」を取り上げる。
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