光石研×二ノ宮隆太郎監督「逃げきれた夢」予告公開 人生のターニングポイント…リアルでさえない、でも切ない
2023年3月28日 07:00

「枝葉のこと」「お嬢ちゃん」の二ノ宮隆太郎が監督を務め、光石研が12年ぶりの映画単独主演を飾る「逃げきれた夢」の予告編とポスタービジュアルが、このほど披露された。
本作は映画デビューから45年、日本の映画・ドラマ界を支える名優の光石が、「あぜ道のダンディ」以来12年ぶりの映画単独主演を飾った作品。自身の地元でもある北九州を舞台に、人生のターニングポイントを迎えた中年男・末永周平を演じている。物語のカギを握る周平の元教え子・平賀南役は、総勢800人のオーディションを勝ち抜き、光石と同じ北九州出身の吉本実憂が演じるほか坂井真紀、工藤遥、松重豊も出演している。
監督・脚本は、俳優としても活躍の場を広げる新鋭・二ノ宮。映画監督・瀬々敬久が審査員を務めた2019年フィルメックス新人監督賞のグランプリ受賞作である脚本を基に、二ノ宮監督自ら映画化することで興業映画デビューの切符を手に入れた。
北九州で定時制高校の教頭を務める末永周平(光石)。ある日、元教え子の南(吉本)が働く定食屋で、周平は支払いをせず無言で立ち去ってしまう。記憶が薄れていく症状によって、これまでのように生きられなくなってしまったようだ。待てよ、「これまで」って、そんなに素晴らしい日々だったか? 妻の彰子(坂井)との仲は冷え切り、一人娘の由真(工藤)は、父親よりスマホ相手の方が楽しそうだ。旧友の石田(松重)との時間も、ちっとも大切にしていない。周平は「これから」のために、「これまで」を見つめ直していく。
予告編は、周平が家族とコミュニケーションを取ろうと試みるも上手くいかず、なんだか情けなく見える姿から始まる。一大決心として「学校辞めるわ、俺」と告げるも妻も娘も無関心。空回る日々を過ごす周平はある日、元教え子・南の働く定食屋でお会計をせず立ち去ってしまう。「俺、病気なんよ、忘れるんよ」周平は最低ではないが最高とも言い難い、冴えない自分の人生を見直し始めるが、認知症により息子の顔を見ても反応のない父親に「どうしようかねぇ、これから」と将来の不安を漏らしてしまったり、旧知の仲である石田と会話を弾ませるも「なんか問題あるんだったら言え、どうせ言わんのやけど」と胸の内を見透かされてしまったりと、テキトーにしていた人間関係の精算は難しい。
さらに、かつての教え子たちに掛けられる「逃げんでね、先生」「やけん、なんか言ってよ」という言葉は周平をどこへ導くのか。いまさらジタバタ右往左往するほど若くもないが、最期を迎えるまでじっと待つにはまだ早い。そんな中年男が選ぶ新たな一歩が可笑しくも切ない物語を紡いでゆく。
最後には瀬々監督が本作に寄せた「描かれている世界は小さいけれど 大きなものが伝わってくる。言葉にならない感動というものがあるとしたら この映画に違いない」というコメントが挿入されている。
「逃げきれた夢」は、6月9日から新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国公開。
(C)2022「逃げきれた夢」フィルムパートナーズ
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