枝葉のこと
劇場公開日 2018年5月12日
解説
「魅力の人間」で第34回ぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞した新鋭・二ノ宮隆太郎が監督・脚本・主演を務め、現代の家族像と郊外に生きる若者の日常を、自身の体験をもとにつづった私小説的作品。 横浜の自動車整備工場で働く無気力な男・隆太郎。関わること全てに諦念を抱き、誰にも心の内を語らない彼は、周囲から変わり者扱いされていた。そんな隆太郎のもとに、幼なじみの裕佑から電話が入る。肝臓がんで余命数日の裕佑の母・龍子が、隆太郎に会いたがっているのだという。6歳で母親を亡くした隆太郎は、幼少期に龍子に世話になっていた。7年前に龍子の病気を知って以来一度も会いに行っていなかった隆太郎は、ついに彼女のもとを訪れることを決心する。
2017年製作/114分/日本
配給:九輪家
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
2019年12月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
超面白いまではいかなかったものの、かなりグッとくるガーエーでした。ダルデンズばりのアンチポップな造りがかなり好みでした。
主人公・隆太郎は整備士として働くも、人生を諦めており、投げやりに生きる男です。思い詰めた表情で孤独に毎日を過ごしています。意外とモテますが、鬱憤をぶつけたりして関係性を大事にしようとする意志も見られません。実は以前、小説家志望で賞も取ったことあるのですが、今は断筆しています。自分を生きることを放棄した男、これが隆太郎です。
作中で語られないため、彼の諦めがどこからくるのかは推測するしかありません。トラウマのような傷つきがあった可能性は否定できませんが、個人的には違うと感じています。
この男、甘ったれているだけだと思います。自分を認めてくれる、理解してくれるヤツなんかこの世にいねぇと決めつけて勝手に不貞腐れているのでしょう。それで自分を諦め、自分を追い詰めているように見えました。才能あるから周囲がバカに見えている可能性も高く、余計この世に馴染みません。しかも、周囲の甘ったれをまるで鏡のように実感するものだからさらに苛立つ。
そして、父親がきっと同じ甘ったれタイプなんですよね〜。父親への激しい怒りの根源には、父親のようになりなくないと思って生きたのにも関わらず、父親のようになってしまった自己嫌悪もあるんでしょう。酒に溺れてセルフネグレクトな人生を送るのも宜なるかなです。
で、なぜ甘ったれるのかというと、彼は甘えられなかったからではないでしょうか。
隆太郎は幼年期に母を亡くしました。近所に住む友人のお母さん・龍子さんがどうも母代わりとなって彼を可愛がってくれたようです。作中で隆太郎が安からな表情を見せることができたのも龍子さんにだけ。
そんな龍子さんが病気になっても、隆太郎は7年間会いに行かなかった。しかし、ついに隆太郎は会いに行きます。これがポスターにも書かれているけじめなのでしょう。
隆太郎と龍子さんの再会は序盤に済まされます。しかし、隆太郎は足しげく通うのですね。それがまた良かった。龍子さんは隆太郎にとって、精神的には母なんですよ。甘えられる対象。だから、最後の日々を少しでも過ごせることは、隆太郎にとってかけがえのない体験だったと思います。
おそらく隆太郎はまだまだ甘ったれ人生を生きるでしょうが、龍子さんに会ったことで、わずかな変化が起きそうです。龍子さんに会わない人生を送ったのであれば、停滞した甘ったれのままでしょう。しかし、隆太郎は龍子さんに自ら会いに行った。けじめをつけた。これで隆太郎は自らの甘ったれに向き合える可能性が出ました。
ラストの父との対話も、正直甘ったれです。しかし、それは前に進むために必要な甘ったれにも感じました。逆に言えば、甘ったれることができない相手に甘ったれることができたように感じました。
本作は二ノ宮隆太郎にとっての、サイコマジックのはじめの一歩だったように思います。彼も50年くらい経てば、『エンドレス・ポエトリー』のようなラストを描くことができるかもしれません。
同じ甘ったれ野郎として、俺は二ノ宮監督を応援していきたいと思います。
2019年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
主役が実在の人物にしか見えず、凄い役者が出てきたなと思ったら監督自身だった。こういう私小説的な映画は退屈することが多いけど、この映画は最後まで面白く見た。彼が何をしでかすか分からない、何を言い出すか分からないことが緊張感の持続に繋がっているからだと思う。
2018年8月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
主人公は歩き、タバコを吸う。せかせかと歩く姿が印象的だ。発散するものは乏しく、負のエネルギーが蓄積されていく様を淡々と見続けることになる。
実に不穏だ。しかし、この鬱屈とした空気を表現するのも映画としての正しい在り方だろう。
隆太郎の、そして何かを蓄積し続ける我々の爆発を予感した。一触即発だ。
2018年6月15日
Androidアプリから投稿
誰かの日常をのぞき見しているような、それでいて自分の人生のような、不思議な感覚になりました。
無意味な言葉で間を埋めない隆太郎だから積もり積もったものがあるんだろうな。
主演の二ノ宮隆太郎監督のあの歩く姿が頭から離れません。
すべての映画レビューを見る(全12件)