エゴイスティックな愛に翻ろうされる、映画監督と美青年のパワーゲーム フランソワ・オゾン監督作「苦い涙」予告&ポスター

2023年3月16日 14:30


大島依提亜氏がデザインした日本版ポスタービジュアル
大島依提亜氏がデザインした日本版ポスタービジュアル

第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作としてオープニングを飾った、フランソワ・オゾン監督作「苦い涙」の予告編と、グラフィックデザイナーの大島依提亜氏がデザインした日本版ポスタービジュアル、新場面写真が一挙にお披露目。映像には、著名な映画監督と、彼を翻ろうする美青年の危うい駆け引きが映し出されている。

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世界三大映画祭の常連で、「Summer of 85」「すべてうまくいきますように」などで知られるオゾン監督。「苦い涙」は、ニュー・ジャーマン・シネマの伝説的な映画作家ライナー・ベルナー・ファスビンダーの名作「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」(1972)を現代風にアレンジした愛の物語だ。オゾン監督が、ファスビンダーの戯曲を映画化するのは、「焼け石に水」以来20年ぶり。1970年代、ドイツのアパルトマンを舞台にした室内劇という大枠はそのままに、ファスビンダーが描いた女性同士の恋愛関係を男性同士に置き換え、ファッションデザイナーだった主人公の職業を映画監督に変更した。さらに現代的な視点とオゾン監督特有の美意識に基づくアレンジが施され、風刺やユーモアをふんだんに織り交ぜている。

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映画監督ピーター・フォン・カントは、恋人と別れ、激しく落ち込んでいた。しかし、親友の大女優シドニーが連れてきた、俳優志望の美青年アミールに心を奪われる。ピーターは公私にわたりアミールをサポートするが、奔放な彼に翻ろうされる。オゾン監督は、恋愛にとどまらない人間関係や、芸術における支配と隷属のパワーバランスを鋭く考察し、「人を愛するということとは何なのか」という根源的な問いを投げかける。刺激的なビジュアル、60~70年代のヒットソングなど、見どころの尽きない濃密でエモーショナルなメロドラマを作り上げた。

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オゾン作品初登場にして強烈な存在感を放つ名優イザベル・アジャーニのほか、フランス映画界屈指の人気実力派ドゥニ・メノーシェ、長編映画初出演の新鋭ハリル・ガルビア、本作で2023年のセザール賞の有望若手新人賞にノミネートされたステファン・クレポンが共演。そしてファスビンダーのミューズであり、オリジナル版で準主役を演じたハンナ・シグラらも出演している。

予告編は、67年に日本でのみシングルカットされ大ヒットした、ウォーカー・ブラザーズの「孤独の太陽」のイントロが印象的。そして、映画監督、魅力的な青年、スター女優、助手といった、癖のあるキャラクターたちが次々と紹介されていく。エゴイスティックな愛に翻ろうされる映画監督と美青年のパワーゲームを軸にした、複雑な人間模様が切り取られている。オゾン監督ならではの美意識で統一された映像、初期作品を思い起こさせるようなビビッドなカラー、室内のインテリアや装飾へのこだわりが光る。

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日本版ポスターは、ゴールドを基調に、豪華キャストが勢ぞろいした、ゴージャスな仕上がり。劇中でシドニー(アジャーニ)が歌う、オスカー・ワイルドの詩を基にした歌から引用した「人は愛するものを殺す(でも誰も死なない)」という意味深なキャッチコピーが添えられている。

過去のオゾン監督作のデザインも手がけてきた大島氏は、「実はフランソワ・オゾンの作品の日本版デザインを担当するのもかれこれ5作目。最初に担当した初期の傑作『焼け石に水』と同じく、今回の『苦い涙』はファスビンダーの戯曲が原案と、さらに縁を感じますが、お洒落で(珠玉の70sインテリアや衣装の数々に悶絶!)妙に可笑しい作風も、どこか『焼け石に水』と共通して、一見すると原点回帰ともいえます」と述懐。「しかし! これまでの監督としての経験とキャリアだからこそのオゾンの成熟ぶりは――技術やテーマ性、全てにおいて――目を見張るばかりで、その辺も存分に堪能頂けるかと思います」と、コメントを寄せた。

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新場面写真には、アミールの写真が壁いっぱいに貼られた部屋のなかで、情熱的な恋に囚われるピーター(メノーシェ)、妖えんなシドニー、絵画のような美しさを湛えるアミール(ガルビア)を活写。「苦い涙」は6月2日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。

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