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映画「シャイロックの子供たち」の魅力は、人間ドラマ×コンゲーム 池井戸潤が原作からの改変ポイントも解説

2023年2月8日 15:00

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(左から)阿部サダヲ、原作者・池井戸潤、本木克英監督
(左から)阿部サダヲ、原作者・池井戸潤、本木克英監督
(C)2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

阿部サダヲが主演する「シャイロックの子供たち」から、原作者・池井戸潤氏のコメント、メイキング写真、場面写真を、映画.comが独占入手。池井戸氏が、原作を映画化する際の改変ポイントや、「人間ドラマ」と「コンゲーム」(騙し合い)というふたつの側面を持つ、映画ならではの魅力を明かした。

累計発行部数60万部を突破した原作小説(文春文庫刊)は、池井戸氏が「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と明言する原点のような存在。映画版には、同じく池井戸原作を映画化した「空飛ぶタイヤ」の本木克英監督をはじめ、メインスタッフが再集結している。阿部に加え、上戸彩玉森裕太柳葉敏郎杉本哲太佐藤隆太柄本明橋爪功佐々木蔵之介らが共演。池井戸氏が脚本に太鼓判を押したという、小説と展開が異なる完全オリジナルストーリーを紡ぐ。

物語の始まりは、東京第一銀行の長原支店で起きた現金紛失事件。ベテランお客様係の西木(阿部)は、同じ支店の愛理(上戸)と田端(玉森)とともに、事件の真相を探る。一見平和な支店には、クセ者銀行員が勢ぞろいしている。出世コースから外れた支店長・九条(柳葉)、パワハラ副支店長・古川(杉本)、エースだが過去の客にたかられている滝野(佐藤)、調査に訪れる嫌われ者の本店検査部・黒田(佐々木)。やがて西木はあるひとつの真実にたどり着くが、それはメガバンクにはびこる、とてつもない不祥事の始まりに過ぎなかった。

濃密なミステリー、心震える人間ドラマ、そして企業の不正を暴き権力に立ち向かうカタルシスなど、さまざまな要素が多くの視聴者を夢中にさせてきた池井戸作品。そんな池井戸氏が深い思い入れを見せる原作「シャイロックの子供たち」は、さまざまな登場人物の視点から描かれ、彼らが起こす事件の真相は明かされず、読み手の想像力が試される形式となっている。池井戸氏も、オムニバス形式で綴られる原作を2時間におさめ映画化するのは、「正直無理だと思った」と語っている。物語の生みの親が「映画化は難しい」と感じていた本作は、どのように作り上げられたのか――。

画像2(C)2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

まず大きな改変ポイントのひとつとして、主人公・西木は、原作では物語の途中で姿を消すが、映画では物語を引っ張る中心人物として最後まで登場する。続いて、原作には登場しない新キャラクターも起用。池井戸氏は、「原作の世界観をそのまま映像にしたら、いまの観客の期待に寄り添えないと僕は思いました。だから映画では、柄本明さんが演じた沢崎のようなキャラクターを新たに投入することで、起承転結のあるストーリーに落とし込んでいった。この改変は正解だったと思うんです」と振り返る。

長原支店の客・沢崎を演じた柄本も、オリジナルストーリーである脚本について、「出演者が自分の出ている作品を『面白い、面白い』と言いすぎるのも変な話だと思っているので、そういうことはあまり言わないようにしているのだけど(笑)、最初に読んだときに面白い脚本だと思いました」と話している。

こうして、原作とは違うアプローチが施された本作は、「人間ドラマ」と「コンゲーム」のふたつの側面を持つ作品へと昇華されていった。映画には、脚本協力として参加した池井戸氏は、「脚本では“コンゲーム”を意識したが、監督はこの物語を企業で働く人たちの“ヒューマンドラマ”としてとらえられて撮影している。いい意味で、そのズレが魅力的で、映画が不思議な光を放ち、見る角度によってまったく輝きが違う“玉虫色”のような作品」とアピール。本木監督も、「もしコンゲームだと思っていたら、その方向性で撮っていくことができたかもしれないけれど、それだと型通りの映画になったと思う」と述懐した。原作を、キャラクター設定から見直して改変し、作品の幅を狭めないためにあえて方向性を決めずに撮影することで、新しい物語が誕生した。

シャイロックの子供たち」は、2月17日に全国公開。

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