【興収100億円突破】「THE FIRST SLAM DUNK」の規格外な制作手法 企画成立まで5年、井上雄彦が触発された宮崎駿の言葉

2023年2月8日 15:00

2月1日から新たな入場者特典のポストカードが配布中(全国50万枚限定)
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昨年12月3日から公開中の「THE FIRST SLAM DUNK」が、公開から67日間(2月7日)で興行収入100億円を突破しました。同作は、キャストと主題歌以外の情報がほとんど明かされないまま公開されましたが、作品の素晴らしさが口コミで広がることで、原作漫画ファンはもちろん、それ以外の幅広い層に広がりつつあります。

バスケットボールの臨場感あふれる圧巻の映像は、どのようにつくられていったのでしょうか。公式サイトに掲載されているスタッフのインタビュー、書籍「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」(以下「re:SOURCE」と略)を参照しながら、ストーリー部分には触れずに同作のどこがすごかったのかを紹介します。

■企画成立まで5年、4本制作されたパイロットフィルム

THE FIRST SLAM DUNK」の企画を立ちあげたのは、松井俊之プロデューサー。2003年7月に発売されたテレビアニメ「SLAM DUNK」DVDボックスの反響を見て、同年秋に初めて映画化のオファーを原作事務所にもちかけるが、答えはノー。その後、09年に東映アニメーション内に正式にプロジェクトチームができて映像のかたちで企画書がつくられ、原作事務所経由で原作者の井上雄彦氏にアニメ映画化の具体的な提案が何度も行われました。

4本ものパイロットフィルムが制作され、プロジェクト化から5年が経った14年12月、正式に映画化のOKが井上氏から出て、翌15年1月、脚本の構想を練るところから制作がスタートしました。同作には制作開始から約9年、パイロットフィルム制作から数えると14年もの歳月がかかっています。

何度も送られてくるパイロットフィルムを見るうちに、「『SLAM DUNK』が映画になったら読者が喜んでくれるのでは」と思うようになったという井上氏は、「パイロット版を作ったスタッフの情熱が、僕の心の中にあった気持ちを後押ししてくれた。だからできた映画なんです」と「re:SOURCE」のインタビューで振り返っています。

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■“リアルなバスケの動き”を表現するための試行錯誤

脚本・ネーム制作を経て、本作の具体的なアニメ制作がはじまったのは18年夏の終わりから。井上氏は制作当初から、「リアルなバスケの動きを表現する。これは希望ではなく義務」だと考えていたことを「re:SOURCE」のインタビューで明かしています。

公式サイトのスタッフインタビューでも、監督の井上氏から、「バスケットを丁寧にリアルに描きたい」「あんまり誇張しすぎた表現をしない」という方針が告げられていたことが話題に挙がっています。

リアルさを追求するため、実際のバスケットボールゲームの様子をモーションキャプチャ(※動きをデジタル的に記録する技術)され、3DCGに落としこまれましたが、そのままではリアルさも迫力も感じられないと、すべての動きがミリ単位、コマ単位で何度も調整され、最終的なアニメーションにつながっています。

■テレビで見た宮崎駿監督の言葉に触発 井上雄彦氏が大量に描いた“最新の絵”

基本的に個人作業の漫画執筆と、大勢のスタッフが携わるアニメーション制作。原作漫画の作者であり、本作で脚本・監督を務めた井上氏は、スタッフに絵を描いてもらう際、自分が直感的に描いていた絵の意図を言語化しなければいけなかったことがストレスだったそうです。

ただ、公式サイトのインタビューでは、多くのスタッフが井上氏には監督として明確な指針があってジャッジが速いことを称賛し、制作現場では井上氏がスタッフを「(アニメの)先生」とリスペクトしながら仕事が進められていたことが語られています。

また井上氏は監督として、これまで漫画でつちかってきた「描くこと」に力を注いでいいのか確信がもてなかったとき、スタジオジブリのドキュメンタリーで、宮崎駿監督が米林宏昌監督にあてたメモ「マロ(※米林監督の愛称)描け!!」を見たそうです。「これほどの人たちでも描くんだ」と大いに触発され、井上氏自身が描くことが映画をよくすることにつながる確信がもてたそうです。

実際「re:SOURCE」では、井上氏が描いた膨大な“最新の絵”を見ることができます。アイデアスケッチ、ネーム、絵コンテなどのプリプロ段階だけでなく、作画の調整や修正、新規に描きおろしたイラストなど、井上氏自身がアニメ制作の実作業に深く関わっているからこそ、同作の素晴らしい映像が実現していることが分かります。

映画制作を終えた井上氏は、説得力のある絵を描いてスタッフに伝えるアニメ制作作業をとおして「絵が上手くなった」ことがうれしいと「re:SOURCE」のインタビューで語っています。

※上記の内容は、書籍「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」(集英社刊)、公式サイトのインタビュー集「COURT SIDE」(https://www.slamdunk-movie-courtside.jp/)を参考に執筆しています。

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