映画音楽の巨匠の偉業と素顔を映す「モリコーネ 映画が恋した音楽家」ジュゼッペ・トルナトーレ監督インタビュー
2023年1月14日 07:00
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「ニュー・シネマ・パラダイス」「荒野の用心棒」「アンタッチャブル」などで知られ、1961年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけたエンニオ・モリコーネさん。2020年7月に惜しまれながらこの世を去った映画音楽の巨匠の偉業を、「ニュー・シネマ・パラダイス」以来、公私に渡り親交を深めたジュゼッペ・トルナトーレ監督が解き明かすドキュメンタリー「モリコーネ 映画が恋した音楽家」が公開された。
モリコーネさん自身が語るキャリア、映画作品の名場面、共に仕事をした監督陣のコメントやコンサートの模様など、様々な角度から音楽家の人生に光を当てる本作は、映画、音楽ファン必見の1作だ。このほど、トルナトーレ監督が日本向けのインタビューに応じ、生前のモリコーネさんとの仕事や思い出を語った。
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全く困難はなく、長いインタビューをまさに友人同士の会話のような形で実現できました。我々の友情があったからこそ、彼はこの企画を引き受けてくださったと思います。私たちの関係はとても長いものですし、私との友情と信頼関係があるからこそ臆することなく、告白のように自分の物語を自由に話せるような気持ちになったのではないかと思うのです。
初めてお会いした時には、ただただ良い仕事がしたいという1点で、この関係性が友情に変わっていくとは全く思っていませんでした。個人的に仲良くしようという気持ちや、友情関係を築こうという気はなかったのですが、自然にそういう関係が生まれました。とにかく仕事に対する彼の姿勢が素晴らしく、マエストロ(モリコーネ)も私の自分の仕事に対する情熱を評価してくださったのだと思います。それがきっかけで仕事外でも会うようになり、お互いを知り合うようになったのです。
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音楽家としてだけではなく、彼の人間像を語ってみたかったのです。彼の姿をまるで3Dのように立体的に、人間として描きたいという思いがまずありました。彼自身が、自分に対するアイロニーがあったり、長い人生を通じて、どんな冒険をしてきたかということを年代順に追っていきたかったのです。子どもの頃から音楽で成功し、成功はしたけれども苦しんだ経験もある、そんな彼の人生の出来事を音楽劇、オペラのように語ってみました。
人生に対する見方や、彼の周りにある世界に対してとてもシンプルな形で生きている人でした。しかし、彼の音楽に対する情熱があまりにも強く深いが故に、自分の仕事に対して厳格になるところがありました。彼の表現方法、彼の言語というのはやはり音楽で、彼はシンプルですが、同時に複雑な特徴を持ち、エッジが立ったような人間性もありました。だからこそ魅力的で、彼をもっと深く知りたいという好奇心を誘発するような人物でした。
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がっかりさせてしまうかもしれませんが、この映画の長い長い会話の中で彼が話してくれたことについて、私は実は全部知っていたんです。そういった意味で、新たな驚きはありませんでしたが、彼の語り口、物語を語る彼の様子にとても驚きました。というのも、すごく純粋な形で自分自身の物語を、時には自分自身感動しながら語ってくれたのです。彼が自分の物語をあれほどの感動を持って語れるということに驚きました。エピソード自体は何度も聞いていたことですが、この映画のインタビューで語ってくれたほど深く、エンパシーを持って語ってくれたことはなかったので、それが私にとっての発見でした。
もちろんです。マエストロに会うたびに私が質問攻めにしていましたね。仕事現場であったり、食事を交わしながら何度もお会いし、そのたびに音楽と映画に関して経験したことを伺って、マエストロもほかの監督のエピソードを何度も話してくれました。それらの話題は映画のインタビューに出てきますが、内面を吐露してくれているような雰囲気が観客にも伝わると思います。
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彼は同業の作曲家にも寛大な誉め言葉を惜しまない人でした。今、なかなか特定の名は思い出せないですが、映画音楽にはもちろん詳しいです。また、いわゆる応用音楽だけではなく絶対音楽にも詳しく、様々なコンサートによく行っていました。
キャストや、映画の技術的な面に関してコメントをしたり、映画監督の領域に関わるようなことに意見を言うことは一切ありませんでした。ただ物語や脚本について、会話を交わすことをとても重要視していて、登場人物についてその人物の感情的な面に関しては意見を交わしました。彼は、映像では見せられない人物の物語を音楽が語るべきだという考えを持っていました。ですから、サブテキストというか、言外にあることについて知りたがり、理解を深めたがっていましたね。
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